明暗
あの新聞公開から1週間がたった。そして無事コンクールは終わり整列して帰ろうかというところで、新聞部は号外を配りだした。皆が新聞を目にしたころ、みんなの視線はユウヤ君に集まっていた。私は何も知らず、早く帰ろうよ、と話すとつい最近聞いたような呆れた声で「真緒ー、あんた何やってるの」
私はただ帰ろうとしているだけだ。そんな何も把握せずポカンとしている私にアイラは言う。
「この前、言ってたよね。私の仕事は全部嘘でできてたから結局記事にはならなかったんだって。でも結局記事になってんじゃん。よかったね初仕事がみんなに公開されて。でも嘘じゃなかったの?」
私は自分でも何が起こっているのか分からず、血の気が引く。私はそんなことなかった、と言ったはずなのに流れている情報はあたかもほんとであるかのように書かれている。調査した人間も私になっていて私が話したことのない全く知らない情報がたくさん書かれている。ユキは会場の外へ私の手を引き、右手には私の手首、新聞記事を持っている片方の手は心なしか震えていた。
そして私に見せたのは一面ではなく、その次のページだった。私が目にしたのは合唱のことについての記事だった。そんなものを見て何故慌てているのか。それよりも一面のほうが大事ではないか。
「まだみんなは一面に食いついてるからよかった。次は真緒もやられるよ、ユウヤ君みたいに」
「この記事見てないの。これ、私はこっちのほうが気になったけど」
そう言ってユキは私に記事を見せる。それには『政治活動、黒幕出現か』そして私の写真が載っている。調査しているときの私とその向こうに一緒にユウヤ君が写されている。
私はこの日から学校を休むようになった。ユキ達はそんな私をいつも迎えに来てくれた。でも私は部屋を出ることができなかった。そして外から待ってるからね、学校でと叫んでから楽しそうに学校へ向かっている。私も本当は学校に行きたかった。でもどうしてもユキの言葉が引っ掛かって学校に行こうと思えない。というより怖くなってしまう。「次は」ってことはまだこれだけで済むか分からないということだ。そんな恐怖を味わいながら生活するのは嫌だ。
私は日課のようにパソコンを開く。そして学校名を調べると、私は息をのんだ。
『男子生徒、飛び降り自殺。大きないじめの影』
そしてその次に書かれていることが私には信じられない。
男子生徒は1週間前からいじめにあっており助けるものはおらず、学校の3階教室より飛び降りたとして見られている。3階教室にはいくつかの遺書が残されており、それをもとに聴取すると警察は示している。
生徒に話を聞くと、1週間前の生徒新聞の記事が原因ではないかという声が多くありそこから流れた噂がいじめの発端であるとみている。亡くなったのは東ユウヤ。市議会議員の東達朗の長男である。
学校ではいくつかの噂があり、不確かな情報を記事にされ、真実であることを書いた生徒がいた。と新聞発行を行う新聞部生徒は話している。