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How two 恋愛宣言  作者: 幸永 芽愛
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第六話 先生として、お兄ちゃんとして

弟と生徒の恋路を応援するのは先生の義務

 後部座席で気まずそうに目も合わせない二人。いつもはもっと仲良く話しているし、さっきも普段通りに話していたのに車に乗った途端にこれだ。もしかして車って密室空間が気まずさを作り出しているのか?


「その、今日はお誘い頂いてありがとうございます!」


「おう。そこまで緊張しなくて良いぞ」


 普段の立花はどこに行ったんだ? こんなに緊張している立花を見るのは初めてかも知れない。もしかして俺の運転に不安を感じているのか? 俺からすればカッコいいけど立花からすれば怖いかも知れない。いやいやいや、だったら夏海が気まずそうにしている理由が分からん。


「夏海先輩とドライブとかよく行くんですか?」


 夏海先輩って言った? 青原先輩じゃなくて夏海先輩って言ったよな。なるほどそう言うことか。いや、早とちりは良くない。しっかりと見極めないと。


「いや、月に一回行くか行かないかくらいだ」


「そうなんですね」


 立花が窓の外を眺めて居ると、急に顔が真っ赤になって来て恥ずかしそうに両手で顔を覆っている。多分人前じゃ呼び方を変えてるんだろう。なるほど。そっかそっか、夏海にも春が来たか。兄ちゃんは嬉しいぞ。


「桜、小説の設定なんだけどさ」


「はい」


 数秒の微妙な間があった後に、二人同時に顔が真っ赤になって湯気が上がっていた。そこまで気にすることではないとは思うけど。これも二人の考えだから俺は何も言わない。


「立花さんはどういうシチュエーションが好きとかある?」


 言い直した。これは一筋縄じゃ行かないみたいだ。兄ちゃんとして弟の恋路を見守る義務があるし、先生として立花を応援してやらなきゃいけない義務もある。



「そうですね。すごく明るい笑顔で手とか繋がれるとキュンキュンしますね……あっ」


 手は繋いだのか。ナイスだぞ夏海。ゆーちゃんと手を繋いだのって中学生の頃から未更新のままだ。俺も手を繋ぎたいのにゆーちゃんが恥ずかしがるから。


「青原先輩はどういうのが好きなんですか?」


「う~ん……デート中に友だちと出逢って話が盛り上がってる時に、デート中ですよって嫉妬してくれる可愛い彼女の仕草とかが……あっ」


いや、それはダメだろ。夏海の性格的にそう言うところは鈍感だから。その辺も気を付けるように言っておかないと。


「でも、下の名前で呼び合うようになるのって恋愛小説で読むと心を掴まれるんですよね」


「そうそう! 他の人が居る時には呼び方変えたり………」


「…………」


「………」


 顔を真っ赤にして気まずそうに目も合わせようとしない。理想の恋愛が出来てるようで何よりです。先生として、お兄ちゃんとして、とても嬉しいです。


「ちょっとゆーちゃん呼んでくる」


 車から降りてゆーちゃんの家のインターホンを鳴らす。こうしてゆーちゃんの家に来るのは随分と久しぶりな気がする。今日は連絡を先にしてるから大丈夫だとは思うけど、もしお父さんが出てきたら厄介なことになる。それで何回か災難な目に遭ってるから嫌な記憶だ。


「おう。久しぶりやな」


「げっ……お父さん……」


 ゆーちゃんのお父さんは過保護すぎるくらい過保護だから、出来る限り家に来るのを避けてたのに、今日は少し油断してしまった。この人すぐ襲い掛かって来るから怖いんだよな。やけに弱いし。


「この前の借り返したろやないかっ!!」


「ふんっ」


 ゆーちゃんには悪いけどお父さんの顔に拳を叩き込んだ。結構吹っ飛んで頭をドアにぶつけてた。


「やるじゃねえか……お前にならうちの可愛い可愛い結愛を預けてやっても――」


 話の途中で失神してしまった。ここで失神してるとゆーちゃんが足を引っかけて転んでしまうかも知れないから庭の端に投げ捨てた。


「お待たせっ!」


「待ってないよ! 行こっか」


「うん!」


 今日はダブルデートって言った感じか。別に俺たちは付き合ってる訳じゃないし、立花たちも付き合ってる訳じゃないのだろう。別にそんなことはお構いなしだ。ゆーちゃんと休日にどこかに出掛けるのは凄く久しぶりな気がする。今、この瞬間が嬉しすぎて何とも言えなくなってる。俺にもっと語彙力があれば良いんだけど、今言えるなら『幸せ過ぎてヤバイ』って事だけだ。


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