第二話 役目と魔導書
私の名前は白音、魔王の後継者として転生させられた人間。
今はベンチでディルに魔王の役目を聞いている。
「そういえばお前の名前を聞いていなかったな。」
「白音です。」
「シロネか。それじゃあ...。」
ディルはにっと笑った。
「第一回、魔王授業の開始だ!」
魔王のつかみにくいテンションの高さに私は冷たい目を向けていた。
「まず、魔王の役目について説明する。」
「魔王の役割は主に三つ。それは、国の守護、国境付近の警備及び陣営配置、そして、暇つぶしという名の見回りだ!」
やはり魔王はテンションが高かった。
「最後のは何ですか?」
「魔王とは長生きするだけの暇な存在なのだよ。つまり、暇!ということだ。」
話を聞くと魔王とは、前任の魔王に魔王の称号を授かると不死の効果が付与されるらしい。効果の期限は魔王引退までだそうだ。
「確かに何百年も生きていると暇でしょうね。」
「我以外の魔族は人間に見つかるとすぐに駆除されてしまうからな。仲良くなった魔族も、次の週には死んでいる。」
そういったディルの顔は少し寂しそうだった。
「そんな生活を淡々と送っていると疲れるものだ。」
「だからシロネには、人間との関係改善だけのために後継者にしようと転生させたわけではない。」
「我の話し相手になってほしかったのだ。」
「それでは話を戻そう。」
表情が明るくなったディルはマントの中をあさりだした。
「魔王とはすべての魔族を守る義務がある。そして、皆を守るためには力が必要だ。」
「まずはこれを渡そう。」
マントから足を直してもらった時に見たのと同じような黒い表紙の分厚い本を取り出した。
「これは何ですか。」
「魔導書だ。この本にお前の血を注ぐと契約完了だ。」
「ちっ、血!?」
「安心しろ少しだけでよいのだ。」
そういったディルの右手には待ち針が握られていた。
「優しくしてくださいね。」
「善処する。」
ちくっ。
目に涙をこらえて魔導書の表紙に数滴の血を垂らした。
「これで契約完了だ。」
黒い表紙にすっと文字が浮かび上がる。
「カーストか。」
「かーす?いったい何ですか?」
「魔導書とは契約者の能力や成長度を数値化して表記してくれるアイテムのことだ。そして魔導書には種類がある。主に五種類。」
シースラー:援護系の魔術に特化し、支援系の薬品や付与道具に関する知識に精通する。
ドーラ:自己防御系のまほうや戦闘技術に特化している。
ガルナーク:近接攻撃に適した魔法や状態異常を得意とし、俊敏性が大きく向上する。
デイン:術者自身が使える魔法は少ないが、守護する魔神を召喚し成長させる。
「シロネのはカーストと言ってほかの四種の魔導書の効果をすべて持っていて、それぞれの上達度に比例して効果が飛躍的に上がるというものだ。」
「一番強い魔導書じゃないですか!」
「そうでもない、カーストの書には裏表紙がある。」
「裏表紙?」
「魔導書は千ページと決まっている。魔法適性や経験値、様々な情報が自身の成長に合わせて記載されるがその記載が背表紙まで到達すると...。」
背表紙まで行くとどうなるのか気になって聞いてみた。
「するとどうなるんですか?」
「契約者は死ぬ。」
「死ぬんですか。」
「あまり驚かないんだな。」
一度死のうとしたのだ、今更死について特に思うこともない。
「まぁ、安心しろ、千年近く生きている我ですらいまだに半分も行っておらん。」
「なら安心ですね。」
そういった私の表情は、自分でもわかるくらい無表情だった。
どうも、小説家になろうで投稿させていただいています。初心者ライターのかぼちゃパイです!
時間を見つけて少しずつ書いていますが、皆様に忘れられないようできるだけ早い投稿を目標にしているので、見直しはしているのですがおかしな部分があったらごめんなさい。今後の参考に、ご指摘いただけると嬉しいです。
今後も頑張って投稿していきますのでよろしくお願いします!