第一話 魔王と後継者
私の名前は白音、日本に住む16歳の女子。両親が事故で死に一人孤独になった。
そんな人生に疲れ自殺しようとした私は、魔王ディル・ヴァールによって転生させられた。
「我がお前の人生に意味を作ってやる。お前を、私の後継、つまり、魔王の後継者とするために転生させたのだ!」
・・・
「それでは行くぞ。」
そう言って魔王は部屋の扉を開け歩き出した。
最初に目覚めた地下のような場所から階段でしばらく上ると外の明かりが見えた。
階段の出口からまぶしい光が広がった。
「ようこそ、ここがレインだ。」
そこはまるで、アニメなんかに出てくる異世界そのものだった。
「すごい...。」
空は薄い紫のグラデーションに光を帯びた花、空飛ぶドラゴン。
石畳の道を抜けると少し開けたベンチのあるスペースに出た。
「座って。話をしよう。」
「は、はい。」
そう言って座ると魔王は私の反対側に座った。
さっきは暗くて見えなかったけど、よく見ると20代位のさわやかなお兄さんだった。
「それじゃあ始めようか。」
「我は魔王ディル・ヴァール。皆はディルと呼ぶ。こう見えて998歳だ。」
「きゅっ!?」
驚きを隠せず思わず驚いてしまった。
その姿を見てディルは少し笑った。
「我はこの国、レインの国王、そして魔王だ。」
「魔王ってあの悪役のですか。」
恐る恐る聞いた。
「ああ、君たちからしたらそうだな。」
「だが、魔王の後継者として今後修行してもらうにあたって真実を言おう。」
魔王と名乗った男には似合わない優しい笑顔が暗い表情に変わった。
「実は魔族とは、本当は悪者などではないのだよ。」
「昔、人間は姿かたちが違う異質な存在の我らを拒絶し差別しだした。」
そう言ってディルは何かを思い出すように眉間にしわを寄せた。
「最初は近づきたくないなどの思考から距離を置く程度だったが、しばらくすると彼らは我々を攻撃するようになった。」
「そんな...。」
自分の知らない魔物などのイメージとはかけ離れた話に私は驚いた。
「最初は差別されるだけだった。だが、我々をじゃまに思った人間は、自分たちの子供にありもしない嘘を吹き込み、我々を悪役として伝えた。」
「そうして育った子ども達がまた自分たちの子どもたちに教えるのだ。奴らは危険だと!」
感情を抑えきれないディルは声を上げて叫んだ。
「すまない、大声を出して。」
「びっくりしました。」
「話を戻そう。」
ディルの表情が戻った。
「そんな生活を続けてはや1000年目前、私もそろそろ引退の時期だと考えてな。」
いきなりの急展開にびっくりした。
「私の堅い頭では彼らと上手くやっていく考えが浮かばなくてな、そこで差別意識のない異世界の人間をこの世界に転生させ魔王として育てようと思ったのだ。」
「いきなり急展開ですね!」
話が突然方向転換したので思わず突っ込んでしまった。
「それがな、一時期は最も知能の高い魔族に魔王の座を渡そうとも考えたのだが。強い幹部達は皆国境付近の警備ですぐに命を落としてしまってな。」
「実を言うと魔族は生まれながらに強い弱いがすぐにわかる。そういった者たちを少しでも活躍できるよう国を守るために各地に送るんのだが、すぐに死んでしまってな。」
「魔族の平均寿命は一週間だ。」
「セミですか!」
衝撃の事実に再び突っ込んでしまった。
「それも考慮して、お前を転生させた。」
「そう、ですか。」
前の人生に疲れ切っていた自分は、自分でも驚くほどあっさり、新しい人生を受け入れた。
それどころか楽しもうとすらする勢いだった。
どうも、小説家になろうで投稿させていただいています。初心者ライターのかぼちゃパイです!
今回は前回の続きの第一話です。いよいよ魔王後継者人生スタートです!これからどんどん話が進んでいくのでどうぞ読んでやってください!