プロローグ 暗闇と始まり
私の名前は白音、日本に住む16歳の女子。両親が事故で死に一人孤独になった。
お父さんもお母さんも、やさしくて平和な日々を三人で送っていた。だけど、家族で旅行に出かけた帰りにそれは起きた。
先日まで降っていた雨の影響で崖が崩れ、ちょうど通りかかった私たちの車は岩の下敷きになってしまった。
幸い近くに小さな町があり、見回りに来た人たちに助けられ、病院に運ばれた。
生き残ったのは私だけだった。
それからはただひたすら孤独だった。誰もお見舞いになんて来ない病室。命の代わりに失った足の自由。そんな私を厄介に思ったのか、親戚は退院後の受け入れを拒否した。
最終的には、最も近い存在の叔母さんが受け入れを拒否する代わりに18歳まで自動養護施設に入るお金を出すということで話は終わった。
その結果だけを見回りの看護師さんから伝言として聞いた。
退院の前日、生きる気力を完全になくした私は病院の屋上から不自由な足を引きずり、飛び降りた。
「生まれてきたのが間違いだったのかな...。」
走馬灯のようによみがえる家族との楽しい記憶。そして、お父さんとお母さんが死んでから親戚に見捨てられたこと。
そんなことが頭の中でスローモーションのように流れていく。そして視界は徐々に闇に包まれていった。
「そんなことはない。」
暗くなる視界、その中で確かに聞こえた声。
「お前が生まれてきたことに意味がなかっただと。」
「な、に...。」
視界が完全に闇に変わる瞬間、最後の一声が聞こえた。
「自分の人生に不満があるならやり直せばよい。我がお前の人生に意味を作ってやろう。」
そして私は死んだ。
・・・
そう、私は確かに死んだ、死んだはず。なのに...。
「どうしてまだ生きてるの。」
そこはレンガでつくられた壁が薄暗く光るロウソクによって照らされる地下のような場所。
滞留するよどんだ空気の中で、私は目覚めた。
「ここは...。」
こんな状況になったら誰だってそう思う。当たり前の質問を独り言のように口にすると。
「ここはレイン。魔族が住まう国だ。」
返事が返ってきた。
少しずつ闇に慣れてきた目で見えたのはマントを被った二メートル近い大男の姿だった。
「どうやら成功したようだ。」
「あなたは。」
大きなマントを翻し、その男は言った。
「我は魔王、魔王ディル・ヴァールだ。」
「ここは、私は、確かに死んだのに...。」
混乱した私は質問をした。
「まぁ、落ち着け。色々見せたほうが早い、歩きながら話そう。」
そう言って魔王は歩き出した。おいて行かれることに不安を感じた私はとっさに立ち上がろうとした。
「いた!」
足の自由な私は案の定その場で倒れこんでしまった。
「すまない、足が不自由だったのを忘れていた、気にかけてやれなくて済まない。」
そういうと魔王はマントの中から黒い表紙の大きな本を取り出した。
「水の巫女・風の妖精・癒しの風を束ね・下の道に再生の光を照らせ」
魔王の持っていた本が風に吹かれ、ページが捲れていく。そして、ページが止まり、本の隙間から光があふれだした。
「ディープ・リカバリー」
あふれだした光が私の周りを囲み、まぶしい光と一緒に体に衝撃が走った。
光が収まると足に感覚が戻っているのを感じた。私はのどを鳴らし、足に力を入れて立ち上がった。
久しぶりの感覚だった。地面を踏んでいるという感覚が足から脳に伝わり、また足に帰っていく。そんな感じがして、心地よかった。
「それじゃあ行こうか。」
「待ってください!」
再び歩き出そうとした魔王を呼び止めて聞いた。
「なんで私を、死んだ私を生き返らせたり、足を直してくれたり...。」
魔王はにこっと笑って答えた。
「我がお前の人生に意味を作ってやる。お前を、私の後継、つまり、魔王の後継者とするために転生させたのだ!」
...。
「えっ、えぇー!?」
こうして私の魔王の後継者としての過酷な、そして楽しい魔王との生活が始まった。
初めまして。今回から小説家になろうで初投稿させていただきます。かぼちゃパイと申します。
まだ小説を書き始めたばかりの初心者で、目の肥えた皆様には、文体などにお見苦しい部分をたたお見掛けすることとなりますが、どうか最後まで読んでいってやってください。
このような図々しいあいさつですが、少しでも有名になりたいという気持ちで、できるだけ早く、定期的な更新を目標に頑張ってゆきたいと思いますのでどうぞよろしくお願いいたします!