親子の絆
次に2人が訪れたのはとある安アパートの前だった。
駐車場に車を停めたザキルはいつにも増して気迫を帯びていた。
ザキルが目的の部屋のドアを激しく叩くと、中からは無精ヒゲを生やした清潔感の無い男が出て来た。
「うるせぇ!何度も叩くんじゃねぇ!何か用かよ?」
「選定所の者だが」
「あぁ!?」
無精ヒゲの男は引きつった表情になった。
「タケシってガキを出せ」
「…!」
無精ヒゲの男はみるみるその顔に脂汗を滲ませていく。
「い、いやぁ。今留守なんだ」
すると男の背後からおよそ5、6歳の子供が姿を現した。
男の息子と思しきその子供はどこか暗い表情を見せている。
「ば、馬鹿!出て来んな!」
「ササガワだな?テメェこのガキへの虐待容疑が掛かってる」
男は更に慌しさを増した。
「なっ!し、してない!!何の事だよ?」
「ほぉ…そうか?」
するとザキルは突然子供の手を取り引き寄せるとTシャツをたくし上げ腹部を見せ付けた。
「はぁ!!」
悲痛な表情を見せるカレン。
その子供の胴体には無数の青あざや火傷の様な痕が刻まれていた。
「こいつぁどう見ても根性焼きだろ?この年頃のガキがダチ同士でタバコ持ち寄って根性比べでもしてたってのか?あぁ?」
「うぅぅ…。ち、違う。虐待なんかじゃない!躾だよ!これがウチのやり方なんだ!」
「躾だ?コラ…」
ザキルの額に無数の青筋が走り始める。
その拳は握り締められ強く震え出し、石の様に固くなったそれが今にも男の顔に飛んで行きそうな勢いだった。
しかしザキルは1歩手前で自身を抑え再び男に追求を始める。
「このガキの傷と同じだけの数テメェの顔面を殴ってやりてぇところだが、まぁいい。いいかよく聞け。俺達選定所はサツじゃねぇ。ここでテメェを連行する事は出来ねぇが、もし今この場でこのガキを施設に引き渡すってならその反省度合いを点数に考慮させる」
「え!?」
「もし拒否りやがるならテメェをこの制度始まって以来の0点にしてやるぞコラ!!」
「ぜ、ぜ、0点!?嘘だろ?嫌だ、頼む、勘弁してくれぇぇ!」
「どうなんだ?引き渡すのか?」
「あぁ頼むよ!コイツには手を焼てたんだ。連れて行ってくれるならせいせいするよ」
「…」
男は言い逃れのため自身の息子を突き放す発言を発した。
タケシという名の子供はとても悲しそうな表情を浮かべている。
察したザキルはタケシに声を掛ける。
「ボウズ。どうする?」
「……行く」
「…よし。カレン連れて行け」
「は、はい。タケシ君、おいで」
タケシという子供は複雑な表情を浮かべながら小さく返事を呟いた。
ザキルも少し辛辣な表情を見せカレンに指示を出す。
去り際、ザキルはタケシの頭に手を置き問い質す。
「また親父と暮らしてぇか?」
「…うん」
「そうか。安心しろ、テメェの親父はちと病院で心の治療をする。少ししたらまた一緒に暮らせる。それまでは施設でのんびりやれや。沢山ダチが出来るぜ」
「…うん」
こうしてカレンはタケシを車に乗せた。
その様子を見届けたザキルは親である男の部屋に入りドアを閉めた。
そして溜め込んでいたものを爆発指せるかの様に渾身の力を込めた右ストレートを男の画面に叩き込む。
「ぐっはぁぁあ!!」
悲鳴を上げながら倒れ込む男。
痛み悶える様子をものともせず胸倉を掴み上げ至近距離にまで顔面を近付けるザキル。
「クソ野郎が!!!テメェのガキを虐待するたぁ生物の風上にも置けねぇクズ野郎だテメェは!!終いにゃテメェ可愛さに切り捨てやがって、ぶっ殺されてぇかクソ野郎がっ!!!」
「ひっひっひぃぃぃ」
密室で2人、口から血を流しながら今にも殺されかねないといった恐怖に怯える男。
「今すぐテメェの腹を捌いてやりてぇところだが、あのガキはまたテメェと暮らしてぇらしい。それに免じて今日だけは見逃してやる!だがいいか?これから更正してあのガキを引き取る努力を見せねぇ様ならマジで0点にしてやる!テメェにこれまでどんな人生があったかなんて関係ねぇ、ウチはそんなこと一切考慮なんてしてやらねぇからな!分かったかぁぁコラァァ!!!」
「ひぃぃぃぃぃ!!!」
鼓膜を破らんばかりの怒声を耳元に叩き付けるザキル。
男は身を縮めただただ怯えていた。そんな様子に唾を吐きかける様にしてザキルは部屋を後にしたのだった。




