プロローグ 外伝-2 二度と飛べない飛行士 新たな戦場
初めて未来戦記物でブックマーク受けましたありがとうございます。
日露戦争~太平洋戦争期を書こうとしている 「改史 大戦」もよろしくお願いいたします。
「親父。」
入院した次の日には家族がやってくる。私は単身赴任している。沖縄にやってくるために飛行機を使ってわざわざ来てくれたのだろう。
「英作、毘作、師作、大作すまない。私は二度と空を飛べない。」
彼らは息子たちだ。英作は大学をすでに出て政治家の秘書をしている。毘作は防衛大学に通い、師作は電子システム工学科の学生。大作はまだ高校生だ。毘作が学費のかからない防衛大学に行ってくれたが、費用面でもかなりの負担になる。さらに毘作につては影響が出るに違いない。妻は病死しているし、私が金を稼がなければならないのに。
「金を稼ぐ手段なら空以外にもある。それに貯金と恩給とかで大学費用は何とかなる。いざとなれば俺らが貸す。卒業すれば独り立ち。親父は老後を考えればいい。俺らは十分だ。」
「そうだ。地上勤務という手段も本来あった。だがその道は閉ざされた。事実上の退役勧告だ。私は家族のお荷物になる。」
「ならこっちが支える番になるだけだ。」
頼もしい一言を英作は吐く。
「政治家におんぶに抱っこの不安定職の秘書職をやっているお前に支えてもらうほどの状況じゃないよ」
「政治家か…」
その発言に普段無口な師作が小さなつぶやきを上げる。
「しゃべったCが!!Cがしゃべった」
驚かれる。しかし冷静になる英作は一つのひらめきを得る。
「一発かませばやりようはあるかもしれない。」
英作は声を上げた
平沢栄一郎2等空佐は次の日退役を申請。結果的に病院を追い出された。
東京 岩場邸
「という事態なのです。岩場先生。」
「なるほど。」
現状、河部政権は中国との融和路線に走っている。その中起きたこの事故(事件ではなく!?) に対しても融和的な動きをしている。この件に関してあまりに弱腰という状況を非難する論調も情報統制で失われてきている。
「強気に出るのもいいかもしれん。韓国の押さえにもなる。」
「国防に関する国民の意識改革も必要です。中国経済が失速中の現在、中国の暴発も注意しなければなりません。その時、自衛隊が不足していた場合、目も当てられません。」
「とりあえず上に知らせておく。」
「ありがとうございます。」
総理官邸
「なるほど確かにそうだな。」
河部首相は岩場の訪問を受ける。
「確かに拡張にかじを切るチャンスではあるな。圧力をかけさせよう。」
しばらくして平沢のもとに報道番組の出演依頼が舞い込むことになる。
報道番組
「あなたのせいで中国の関係が悪化しました。どうしてくれるのですか。」
女性政治評論家がきつい口調で平沢を糾弾する。
報道番組は初めから彼をせめる形で始まった。平沢は事故の負傷から回復しきっていないため、息子の師作に車いすを押してもらっての出演になっている。
「日本政府も日本政府です。島一つごときにどうして国の利益を損なう行動をするのですか!!」
喚き散らす女性。
「あなたも何か言ったらどうですか?」
まるで公開裁判のような状況で話を振られる。が平沢は口を開こうとしない。
「ならばあなたは話している最中に話に割って入らないようにしてください。あなたや政治家の方々見てると子供の喧嘩を見ているみたいでみっともないですから。」
女性は口をパクパク開けている。
「国民の皆様。お騒がせして申し訳ありません。先の空戦に敗北し、のこのこと生き恥をさらしている平沢英作というただの人間です。」
「空戦!!」
女性が騒ぎ始めるが、平沢は睨み付け、黙らせる。
「そうです。空戦です。私は中国軍機に空戦を仕掛けられました。たまたま双方1機が損失しました。があれから交戦が発展していれば中国と日本の戦争になっていた可能性もゼロではありません。」
また口を開こうとする女性にガンを飛ばし黙らせる。
「日本は平和主義国です。戦争はしたくもありません。戦争は嫌いです。私を含めてです。」
そういうと女性はようやく冷静になる。
「戦争は嫌い。だからこそ戦争を見なければなりません。そうでなければ…」
そこで一度話が途切れる。一時の沈黙が流れる。
「我々大人は子供たちに顔向けができない。」
言葉はよく聞こえた。そしてその声はさらに大きくはっきりとした物言いに変化する。
「私たちは子供たちに嫌いなものから逃げるなという。嫌いな食べ物でも勉強でもそうだ。
しかし、我々大人はどうだ!!戦争は誰もが嫌いだ。私も嫌いだ。しかし、大人は戦争に目を向けようとしない。戦争かを見ることから逃げている。平和憲法を守っていれば平和は続くと思っている。だが現実は違う。かつて中立を宣言した国々も戦火に蹂躙され、中立を守るために血を流した。我々は戦争を見なくてはならない。戦争に食われないためにそして何より子供たちに顔向けできる大人であるために嫌いなものに目を向けるべきではありませんか。そうでなくては私をはじめとする命がけで戦っている人間は報われません。」
平沢はそこで一拍を置く。
「いいや報われない方がいい。報われるのは国民が子供たちが戦争や災害で苦しんでいるときなのだから。」
しばらくの沈黙。その後、番組内で彼を非難するものはいなかった。
外伝ひとつ終わりました。本編行きます。春休み中につきどんどん更新してゆきます。(1話毎は短めです。)
なお『改史大戦』のほうが書きやすいです。こちらも頑張って書いてゆきます。