プロローグ 外伝-1 二度と飛べない飛行士 失われた翼
ここで外伝をはさみます おそらく外伝は2部構成になると思います。その2部が終わり次第本編スタートです。
2019年8月25日PM7;50 日本国営テレビ局 報道番組
「我々大人は子供たちに顔向けができない。私たちは子供たちに嫌いなものから逃げるなという。嫌いな食べ物でも勉強でもそうだ。
しかし、我々大人はどうだ!!戦争は誰もが嫌いだ。私も嫌いだ。しかし、大人は戦争に目を向けようとしない。戦争かを見ることから逃げている。平和憲法を守っていれば平和は続くと思っている。だが現実は違う。かつて中立を宣言した国々も戦火に蹂躙され、中立を守るために血を流した。我々は戦争を見なくてはならない。戦争に食われないためにそして何より子供たちに顔向けできる大人であるために嫌いなものに目を向けるべきではありませんか。そうでなくては私をはじめとする命がけで戦っている人間は報われません。
いいや報われない方がいい。報われるのは国民が子供たちが戦争や災害で苦しんでいるときなのだから。」
2019年6月25日 AM3:00 那覇基地 空自区画
けたたましいサイレンが鳴る
「ルーキー走れ!!」
ベテランの空自パイロット平沢英一郎2等空佐は走る。後ろには風戸 隼2等空尉。平沢は今年中に戦闘機パイロットから教導部隊飛行教官として転属が決まっているベテランである。戦闘機パイロットが戦闘機から降ろされる節目は40歳。平均してそのころには体の衰えが原因で第一線パイロットから降ろされる。それが戦闘機パイロットである。
その中で戦闘機から降ろされても飛べるパイロットは少ない。優秀なパイロットである。それは彼の気質に影響されるものである。空を飛ぶことが好きで好きでたまらない。出世すら拒んで現場にとりつかれた男である。
空自は飛べる戦闘機パイロットが常に不足している状態だ。そのためかスクランブル任務に就いている。しかも、新人パイロットを連れて。
スクランブルは防空識別圏に所属不明機が侵入した場合に発進命令が出て5分以内に2機を離陸させる。防衛行動の一つである。
しかし、この那覇基地は条件が最も悪い基地の一つであった。民間との共用の空港で、民間機の利用が極端に多い。それもそうだ。那覇基地と共同運用する空港は沖縄県有数の国際空港。利用客も多い。そのうえ滑走路が一本しかなく、第2滑走路が建設途中であるというキャパシティーのなさが基地としての問題であった。
「まったく政府は上申書を見る気はあるのか!!南西航空方面隊には戦闘機の空中哨戒が必要不可欠だというのに。」
平沢は叫びながら走る。
「隊長はただ飛びたいだけでしょ!!」
「半分はそうだ。」
整備兵が笑いをこらえながら発進支援をする。
空中哨戒は常時戦闘機を飛ばしている状態で、スクランブル発進の際に必要な5分すら必要がない。特に民間機との兼ね合いで発進の遅れがち那覇基地では必要不可欠と彼は主張している。
ただし、常に飛行させているため燃料代とパイロットの負担がばかにならない上に戦闘機の寿命を減らすという大きな弱点がある。
「滑走路はまだ空きません。少しお待ちください。」
民間機との共用のため滑走路はすぐにあかない。
「早くしてくれ!!」
また遅れる。那覇の緊急発進はいつものことだ。
「レーダー反射から見て戦闘機2機の編隊。定期便だ。データーは送った。いつもの通りお見送りして差し上げろ。」
ノリがいいな。今日の管制官は。
だがその乗りの良さはパイロットたちの緊張を緩和させる。
「滑走路が開いた。離陸を許可する。」
「ホワイトイーグル01発進する。」
「同じく18発進します。」
2機のF15戦闘機はエンジンをふかし、上空に舞い上がった。
尖閣上空
「アンノウンを確認。中国人民解放空軍所属スホーイ…27だな。」
平沢は機体を確認。無線で基地に報告する。
「18は後方から援護。俺が接近する。もしも空戦に突入しても参加するなよ。」
平沢は警戒を呼び掛ける。2016年に中国軍機は日本のスクランブル戦闘機に対し
戦闘行為とも取れる行為をしてきたことがある。つまり格闘戦を仕掛けてきたのだ。
これは冷戦時にもなかったことである。これ以降空自はさらに警戒を強めている。
中国は確実にその覇権主義をむき出しにしている。現場の人間は常に危機感を持っている。
「中国機に通達す。日本の領空に侵入しつつある。直ちに退去せよ。」
録音された音源で中国語、英語、日本語で警告を発する。
「機首を変針する様子はなさそうだな。」
いつもは引き上げる。しばらく警戒してそのタイミングでも進路を変更する様子はない。
「そろそろ限界かな。」
彼は無線で警告射撃要請を出す。長いパイロット人生で初めてだ。同時にスピードを上げ、
機体を前に出す。こうすることで警告射撃を見せることができ、攻撃の意図がないことを示す
ことができる。その結果機体の位置が変わる。
(画面を大きくしてください。分かりずらいかもしれません。)
進行方向左
1、
← 自衛隊機
←中国機
←中国機 ←自衛隊機
それが
2、
←← 自衛隊機
←中国機
←中国機 ←自衛隊機
3、
← 自衛隊機
←中国機
←中国機 ←自衛隊機
直後、中国人民解放空軍の2番機が動く。
4、
← 自衛隊機
←中国機 ↑
←中国機 ←自衛隊機
5、
← 自衛隊機 ←中国機
←中国機
←自衛隊機
「後ろにつかれた!!ブレイク!!」
平沢機は動いてきた2番機に対応するために機首をひるがえす。
「ルーキーは参加するな!!もう一機を監視しろ!!」
(糞!!奴の尻につこうものなら外交問題になる!!かといって後ろにつかれると舐められる。)
「那覇管制!!増援を上げてくれ!!中国軍機と事実上の交戦状態に突入。」
平沢は報告する。
「中国機一番機ブレイク!!」
「ルーキー!!」
機首を変針する。
「離脱しろ!!ルーキーじゃまだ!!」
平沢は機首を下げて、下からループで機首を上に向ける。
一方中国の1番機は上にループ軌道を通り、機首を下に向ける。
(最悪だ。この角度でのヘッドオンをかますしかないとは!!)
中国軍機は上。平沢は下から機首を重ねる。双方機銃は打たない。撃てば戦争だ。
「糞、増援はまだか!!」
「増援到着まで残り600!!」
「飯が食えるわ!!はよしろ!!」
「民間とのと調整に時間が」
「もういい。」
無線を切り、空戦を続ける。
(乗るな。乗るな。挑発に乗るな乗れば戦争になる。)
平沢は心に刻みながら機体を滑らせる。双方銃もミサイルも使わない空戦。近代的武器を使わない空戦は前近代的なものと比べ似て非なるものだ。
だがその終焉は唐突に訪れた。
中国機と自衛隊機が空中衝突。互いの羽が引き裂かれる。
「隊長!!」
双方の機体は翼を失い。失速する。双方のパイロットは瞬時に緊急脱出を決めた。
後日談
生き残った中国機は増援の到着と同時に味方を捨て逃走した。航空自衛隊は沖縄の那覇航空基地に集まる全戦闘機戦力を使用し、上空援護をしながらパイロットを捜索。日中双方のパイロットは日本に収容された。しかし中国機パイロットは死亡が確認された。
当然、外交問題に発展。特に沖縄は燃え上がった。
「平沢二等空佐。医者として断言する。あなたは二度と空を飛べません。」
平沢は救助されてからすぐに入院した。戦闘機の緊急脱出はかなり危険で、脱出したパイロットのうちおよそ半数が二度と空を飛べなくなる。彼は偉い方と医者の方面を受け、事情の説明と今後について話す。
「貴方の場合、脊髄と脊柱に軽い損傷があります。日常生活での異常はありませんが、戦闘機パイロットなると不適。パイロット適正で失格になるでしょう。」
さらに二度と飛べないうちのおよそ半数が死亡したためであり、パイロットとしての生き地獄である二度と飛べないパイロットは4人に一人である。しかし、この数値は比較的安全な…機体トラブルや滑走路のトラブルで機体を放棄しないといけない比較的安全な脱出を含んだ数字であり、戦闘での損傷時の脱出のような危険な状態での脱出はもっと復帰率が低くなるのは自明の理であろう。ある意味、死んでなくてよかったともいえる状態かもしれない。
「戦闘機乗りからの転科という手もありますがあなたの歳では難しいです。さらに政府としましては責任問題に発展させ、つるし上げの対象にする恐れがあります。あなたの平穏な生活のため、自主退役をお勧めします。」
ああ。事実上の首宣告だ。
どちらにしても二度と空を飛ぶことができない。だが後輩たちはどうだ。再び空に舞い上がるとき、どうだろうか。日本政府は弱腰。強く出るチャンスがない以上、今度はもっと不自由な空を飛ぶしかないだろう。
(俺はどうすればいい。)
結果的に私は返答を保留した。どちらにしても数日その判断が遅れても変化はないだろう。しかし、結果的に次の日には決断を下すことになる。
中国人民解放空軍機の領空侵犯に関してはあまり多くの報道がされません。事実上の報道統制が敷かれているように私は感じます。空自の戦闘機が中国機にミサイルロックをされたという情報すら有ます。(ボタン一つでミサイルが放たれる状態)
このような事件が起こらないことを祈ります。
ちなみに韓国の駆逐艦の事件に関してははよ国交断絶望む政治思想です。あの国にかかわりたくない。新日鉄の件もあるのだし。