片思い
突然ですが私、小柳 智里17歳は初恋をしています。
通勤・通学ラッシュ時のバスの中
私の目の前で吊革に掴まり
ただ窓の景色をぼぉ~っと眺めている
たぶん私と同じくらいの歳の彼です。
出会いは1年とちょっと前。
受験で受かった実家からは少し遠い距離にある高校
『三月学園高』に通うため
初めてバスに乗った時
まさに今と同じ状況で彼に会ったのです。
一目惚れでした。
ドキドキを通学の度に感じながら
それをず~っと今まで続けているというわけです。
こんな私を見た人はこう言うかもしれません
「だったら声かけなよ。」って
でも恋などしたこともない私にとってそれはかなりのハードルの高さです。
なにより、さらにハードルを上げる要因は
彼は、彼は…
超絶『イケメン』で高身長、という高スペックの持ち主だったからです。
完全に私なんかが声を掛けれるような人ではありません。
何度かこのバスの中で
彼に告白をしてきた女性もたくさん目撃したこともあります。
ただ、その度に断っている姿も見てきたので
余計に私の片思いだけでいいという気持ちは強くなっていったのです。
「はぁ~」
私は高校前のバス停でいつものようにため息。
「私ってホント、どうしようもない…」
発車したバスをちらっと見てみると
私がついさっきまで座っていた所に彼が座っていた。
「はぁ~」
彼をただ見ただけでこれなのだから、恋の病というのは恐ろしい。
そう思いながら今日も学校へと歩んでいると
背中を軽く叩かれた後、大きな声が聞こえた。
「ため息つくたびに幸せが逃げちゃうぞ♪」
「うわっ! もう、驚かさないでよ那美。」
彼女は五十嵐 那美。
この高校で一番の仲良しの女友達だ。
彼女はとても天真爛漫で、周りを常に明るくするとても魅力的な性格をしている。
ちなみに、悔しいことに彼氏持ちだ。
「はは~ん。 また、あの『イケメンくん』のこと考えてたんでしょ?
で、どうだったの? 今度こそ告白したの?」
「そ、そんなの出来るわけないじゃん! 私は、い、今のままでも十分なの!」
何度か彼の話題を那美と一緒にしたことがあるが、
このやりとりはいつもの事だ。
「はぁ~、智里じゃないけどこっちがため息ついちゃう。
ねぇ智里。 その『イケメンくん』とずっとず~っと本当に
ただバスの中で会った他人さんでいたいと思ってんの?」
「そ、それは…」
「私だったら耐えられない。 だから告白する。
もし失敗したら親友である智里に慰めてもらう。
まぁ、もっとも私は失敗しなかったけどねぇ~。
ちょっとは私を見習いなさい。」
「うっ、那美に言われると何も言えないよ。」
というのも、那美は実際に告白して成功させている。
私のように恋をし続けた結果、急に
『もう耐えきれない。 告白してくる。
失敗したら智里、慰めてね。』
なんて言って急にいなくなった事を思い出す。
その後の詳しいことはよくわからないけど、
今もその彼とラブラブぷりを聞くと告白もいいなとは思う。
「よし、決めた。 私、智里のために心を鬼にする!
もし、智里がその『イケメンくん』に告白をしなかったら
智里と絶交する。 もう二度と話ししない!
でもまぁ、智里だから猶予をあげる。
1週間。 1週間たってもダメだったら本当だからね。」
「ええええええっ!!!!」
こうして私は大の親友との友情をかけて
彼に告白することになったのです。