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妖怪辞典の異世界召喚師  作者: 丸蛇ラーメン
6/6

九尾の玉藻

更新が遅れて、大変申し訳ございません。

こんな日が経ったにも関わらず、未だにブックマークを取らないでいてくださった方々、本当にありがとうございます。

これからも不定期にはなるかもしれませんが、よろしくお願い致します。

洞窟内で俺とニーナは誘い出したゴブリンを撃退。

しかし、誘う為にわざと奴らに自分たちがいますよと教えてしまった為、次の手を考えることにした。


ニーナに魔法で洞窟内での暗闇がみるようになった。


「…あれが、ゴブリンの親玉 バーサーカーか」


確かにでかいな。狒々くらいはあるな。ばっちり警戒してるし。

そして残ったゴブリンどもが…十数体。


「さて、どうするか…?ニーナ」

「…っ…」


彼女は目の前の惨状をみて、唇を噛み締めていた。

暗闇の中でも目が見える彼女にとって今、囚われているエルフの状況が細かく見える。

俺はスネコスリより情報得た。

男たちは無残に殺され、女たちはゴブリンたちの慰みもの…。そんなのが見えているんだ。今この場で待てるのが不思議なぐらいだ。


「ニーナ…」

「カズマ…教えて…どうしたらいい?あいつらを殺すにはどうすればいいの!?」


早く策を練らないと彼女は今にも飛び出してしまいそうだ。

俺とニーナで小さなゴブリンを倒しつつ、狒々でバーサーカーを倒す。だめだ。狭い洞窟の中で二体が暴れたらこんな洞窟、簡単に崩れるし、囚われてるエルフたちが下敷きになる。

かまいたちの刃で一掃…しようものなら、これまたエルフたちも巻き添え。

せめて奴らをおびきだせれば…罠を作動させるのはもうしたから使えないし。


『奴らは若く綺麗な女性を好む習性があるようですね?』

「あ、ああ。ゴブリンはその説とイメージからそういう風になってるが、実際そんなんだな」


美しい女性か…


「そうだ…あいつなら」

『主人さま?』


俺はカバンから辞典を出す。

呼び出すは国すら騙す絶世の美女。日本から中国まで名の通る有名大妖怪!


「顕現せよ!九尾の妖狐」


すると鬼火が現れ、鬼火が狐の形を、さらに人の形…に?


「お初にお目にかかります。主様ぬしさま

「き、君が九尾?」

「はい。あたしが九尾の狐 玉藻どすえ。主様におかれましたご機嫌麗しゅうに…どうかなさいましたか?」


う、ううん?玉藻前って絶世の美女だったよな?


俺の今目の前には狐耳と尻尾をつけた小学生ぐらいの女の子なのだが…。金髪美少女と言ったところか?


「ああ、この姿どすか?恐れながらこれは主様がまだまだ未熟だからなのですえ」

「え?俺?」

「はい。狒々やカマイタチならいざ知らず、あたしは九尾の妖狐 玉藻どす。主様の力で完璧な形で還元するにはまだまだ力が足りないのです」


そうか。なるほどな。この力どんだけイージーなのかと思ったが、大妖怪とかレベルの高いものとなると条件があるわけだ。

これは研究が必要だな。


「そやけど、呼ばれたからには応えるのがあたしと主様の絆。この通りあたしも未熟な身なれど、九つの尾は伊達や酔狂ではありませんのえ」

「…でもな」


俺が彼女を呼んだのはかつては中国の国を陥れかけた元は妲己と呼ばれる絶世の美女 玉藻前を呼んで奴らのオトリをお願いしたかったんだよな。

まぁ、オトリとしては些か大物すぎるが。


「安心しておくれやす。言うたですやろ?あたしは九尾の狐。惑わす拐かすは本業。しかし、あのような下賎な種族を懲らしめるに、あたしの魅了はちと刺激が強すぎますよって…せやから…コン」


玉藻は手を影絵のキツネの形に変え、そう言った。

すると、バーサーカーやゴブリンたちのいる所に青白い炎が燃え上がった。


「狐火か…しかし、この威力は」

「ちょっと!?私の仲間もあそこにいるんだけど!?」

「安心を。本来の狐火は焼く力は見た目より弱いどす。けど、あたしとあの下衆どもの力の差があれば…このように簡単に焼き落とされるのどす。ほれみてみ?現にあんさんの仲間は少し熱いやろうけど、無事やえ?」


ん?おお、確かにゴブリンたちは焼かれているけど囚われていたエルフにはあまり影響がないらしい。


「あれま?下衆な輩はよう燃えるなぁ。ほなら…っ!?」


玉藻が何かしようとしたが、こちらに気づいたバーサーカーが拳を叩きつけてきた。


『ブルアッ!』


「…なんや。あのずんぐりには効果はあまりなかったようやね。たかがと侮ったあたしの失態やわ」

『それに火を見ても、何も躊躇いがないとは…ん?主人さま!奴の肩をみてください!』

「!」


スネコスリの言われてバーサーカーの肩を見ると、何やら普通のゴブリンよりも装備が整った特別性のゴブリンが肩に乗っていた。そして何やら指示を出している。


『これ、まやかしの火。強き者、あわてることない』


喋った!?人語を話すのか!?


「まさか、キング」


とニーナがつぶやく。


「キング?」

「キングはゴブリンをまとめ上げ、統括する者。普通のゴブリンよりも知恵があり、力もあり、人の言葉を使い、巧みに惑わす恐ろしいやつよ。……あいつがいたから普段村を襲いに来ないゴブリンが襲ってきたんだ。あいつのせいで…っ!」


彼女の握る拳から血が滲み出していた。

それほど憎く、恨めしく、そして殺してやりたいと。


「ニーナ。君は奴をやれ」

「!」

「俺と玉藻でバーサーカーを倒す。残ったキングは君に任せる!君ならできるはずだ」

「…わかった。ありがとう。カズマ」


ニーナは今の場所より高いところに登る。キングをより早く倒せるように。


「ええな。主様。かっこよすな〜」

「揶揄うなよ。それよりあいつを俺たちでやる。できるな?」

「…主様、堪忍しておくれやす…。誰に言うとりますのん?」


そういうも玉藻は狐火を火柱に変え撃ち抜いた。


『うぎゃあっ!』


顔を焼かれ、慌てるバーサーカー。


「いくら度胸があっても顔焼かれて、平然としている奴やなんておらんのえ?」


『ぐううっ!静まれ、強き者!我の声を聞け!グヌァ』


顔に近い肩にいるキングにも火の手は迫るが、王の名は伊達ではないようだ。

だが、この隙を逃しはしない。


「そや、主様にはこれあげるえ」

「っと?ん?」


突っ込もうとする俺に玉藻が布の包みに入った長いものを手渡す。

それを開くと中には入っていたのは刀だった。


「妖刀 玉梓たまずさあたしの一本の尾から作ったかなりの業物です。あたしやと思って大事につこうてくださいな。主様」


…そんな設定、辞典に書いたかな?まさか、キャラの一人歩き?小説とかではよくある話だけど…。


「けど今はありがたく使わせてもらうよ!」


エモノがないからどうしようかと思ってたところだ。

俺は刀を鞘から抜く。

そして、神様よりもらった身体能力で高くジャンプした。


「はあっ!!」


そしてそのまま一閃。刀は慌てふためくバーサーカーの頭に目掛けて振り下ろした。


「…」

『…が、ガァ』


バーサーカーの頭は見事に真っ二つになった。

って!


「……ハゥアッ!?えっ!?あれ?えええっ!?」


俺は今起きた出来事に戸惑いを感じずにはいられなかった。

なんだ!?この切れ味は。手ごたえがあるが、軽すぎて切ったとすら思えなかった。少なくとも並大抵の剣ではかすり傷にもならなそうな硬い奴の頭にこっちの刀は全く刃こぼれすらしていないで真っ二つ。


「玉藻!?どうなってんのこれ?」


俺が呼びかけると、玉藻はヒョコっと顔を出して言う。


「言うたですやろ?業物やて。それにあんなモンにおいそれと時間なんてかける価値もありません。一斬必殺が丁度ええと思います」


あはは。これ、絶対咄嗟の時だけの特別な物にしよう。世界バランスすら崩しそう。さすがは大妖怪の剣ってことか?


「あ、それよりキングは?」

「あれでしたら、頭真っ二つになったそれ見て、逃げ出しましたわ。黒いカサカサしたあれの逃げる様のようで滑稽でしたえ?それを追ってニーナさんも行きましたえ。スネコスリも一緒に」



私、スネコスリとニーナさまは逃げ出したゴブリンのキングを追いかけております。

私がなぜ、付いてきたかと言うと、待ち伏せやトラップあった場合彼女に教えるためです。


「…ねぇ、あんたのご主人って何者なの。父たち、強いエルフの戦士が手も足も出なかったバーサーカーをあんな簡単に倒してしまうなんて…」

『えっとそれは主人さまから追々語られるかと…思いますよ。多分…きっと』

「そう。…ありがとう」

『え?』

「あなた達が私に力を貸してくれて本当助かった。あなた達がいなかったら今頃、私も」


『ニーナさま…』

「っ!…見えた!」


私たちの目の前に走るゴブリンの王の姿が。

それを目視すると、ニーナさまはゆっくりと弓を取る。

ふぅーと息を整え、彼女は弓の弦を引く。


「…」


そしてヒュッと矢が放たれた。

矢は一直線にキングの足に目掛けて飛び、見事射抜かれた。


『!?』


一瞬キングは射抜かれたことに気づかず、ただ倒れ、自分の足を見る。


『…が、ギアアグアア』


改めて足の痛みを感じるのだった。


「耳が腐るくらいのひどい断末魔ね」


彼女はゆっくりとゴブリンに歩み寄る。


『ぐ…ギギ…』

「…こんな奴に…私の家族が…」


ゴブリンを見下ろす。

その目はまるで汚物を見るような目だった。


『けて…』

「?」


『ダズケテ…コロサナイデ』

「…」


『シニダクナイ…イギタイ』


王と呼ぶには、なんとも浅ましい姿か。お前が今まで辱め、殺したエルフの方々や人たちも同じことを言っただろうに。


「そう。いきたいのね、あんたは」


そう言ってニーナさまはキングに背中を向ける。

そして、それを見た瞬間、キングがニタァと笑い、チャンスと言わんばかりに腰のナイフを抜いてニーナさまに襲いかかった。

けど、私にはわかっていた。彼女の殺意が全く収まっていないことに。


「なら、逝かせてあげる」


ニーナさまはナイフを軽く避け、それを奪うとキングの首を切り裂いた。


『ごぶっ!』

「あんたにこれ以上の矢は必要ない。そして、あんたの声は聞くに耐えない。そのまま声も出せず、苦しんで死ね」

『が…がが』


そのままキングは首から血を流し倒れた。


「…父上、みんな。仇はとったよ」

『ニーナさま』


するとコツコツと後ろから足音が聞こえた。

その音の主は我が主人 カズマ様だった。


「おつかれ。ニーナ」

「カズマ…っ」


そして、そのままニーナさまは、地面に倒れてしまったのだった。


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