目目連とエルフと古空穂
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今回の話には気分を損なう話が含まれており、もしそれが苦手という方がいらっしゃいましたら、ブラウザバックをお勧めします。
そうで無い方は、何分若輩者である為、ストーリー展開の粗や誤字なども多数見受けられると思いますが、これからも暖かい目で読んでいただきます様お願い致します。
エルフの少女をおとなしくさせてから暫くして日が暮れる。
俺とこのエルフ。名前をニーナと言うそうだ。の二人は召喚したゴブリンの案内の元、エルフの村を襲ったゴブリンのアジトについた。
見た目は普通の洞窟だが、恐らく見張りがいるだろう。
「ちょい、ニーナ。君とか魔法とか使ってあいつらの居場所とかわかったりしません?」
「あんた、エルフをなんだと思ってるの。そんな都合のいい魔法なんてないわよ」
ちぃ、なんだ。無いのか。この世界初の魔法を見たかったんだが。
ならしょうがない。
俺はカバンから妖怪辞典をだす。
「顕現せよ。目目連」
そう唱えると近くの木に無数の目が現れた。
目目連。
この様に無数の目のみ妖怪。
障子などに現れ、人を見つめる妖怪だ。
「ひぃっ!?な、なによ!それ!」
ニーナが物凄く後ずさる。
「おいおい。あまりうるさくするとゴブリンに居場所がバレるだろ?さっきのお前が暴れた時も危なかったのに」
「ううっ…だ、だって〜」
まぁ確かに慣れない人にこの無数の目は怖いかもしれない。
けど放っておこう。
俺は目目連に指示をだす。
「よしっ、目目連。あいつらのアジトに潜入して情報を集めてくれ。まず入口付近に隠れて見張っているゴブリンの確認。次に捕まってるこいつの仲間のエルフの捕らえられている場所と安否の確認。あとは中のゴブリンの数と場所の確認だ。見つからない様、気をつけて」
そう指示すると目目連はすーっと消えて言った。
「ニーナ、先に確認したいがお前ってなにが使えるんだ?」
「え?風魔法とあと弓が得意ね」
うん。ゲームやファンタジー系の本のエルフそのまんまか。
しかし、ニーナは弓も矢も持っていない。
あ、そういえば弓と矢のセットの妖怪がいたな。
「顕現せよ。古空穂」
現れたのは矢を入れ背負っておくケースの妖怪。
古空穂。
年月をかけ物が妖怪化した物、付喪神の一種でかつては大妖怪九尾の狐を射止めた武士が背負っていた靭であるとされている。
一応辞典の方にも弓と矢もセットに描いていた。
『主君。お呼びにあずかり、只今馳せ参じました』
「矢筒が喋った!?」
「古空穂。今からお前をこのニーナに預ける。彼女ならお前の力をフルに活かせるはずだ」
「え!?私が使うの!?」
このままだと武器も持たずに敵陣に入る自殺志願者になってしまうからな。
「何か問題があるのか?」
「いや、だって」
そういや、こう言う妖怪って西洋系の方ではあまり聞いたことがない。ガーゴイルとか石像が動くと言うのはあるが、あくまで人や生き物の形をした物が動くパターンが殆どだっけか。
「安心しろ。ただ動いて、喋ってるだけだ。しかもこの古空穂は昔の偉い戦士が使っていた由緒正しき靭。とてもいい物なんだぞ?」
「そ、そうなの?」
『左様。某にかかれば、あの様な輩。射止める的にしては容易過ぎるモノ。其方に仲間の恨みはらす機会を与えようぞ』
「っ!そうだったわね。あいつらは私の仲間に、家族にあんな酷いことをしたんだ!!古空穂って言ったわね?」
『うむ』
「私からお願いするわ。私に貴方を使わせて!」
『承知!』
よしっ。これで戦力はアップした訳だ。
『主人さま。目目連が戻ってまいりました』
スネコスリがそう言うと確かにさっきの木に一個の目が現れていた。
『ふむふむ、主人さま。見張りのゴブリンは入口の上にある岩場、あそことあそこの二箇所、二人づつで隠れているそうです』
口を持たない目目連の代わりに通訳してくれるスネコスリ。
なるほど…あそこと…あそこか。
『次に囚われたエルフですが、入口を入って暫くした所にゴブリンの溜まってる広い場所があり、そこからさらに地下に続く階段があるそうです。その地下にエルフたちはいると…』
今の情報のお陰でゴブリンたちが何処にいるかも分かった。後は…。
『それとエルフたちの安否…なのですが』
スネコスリはニーナを見た。
ニーナはその反応を見て察した様に顔を青ざめさせた。
流石の俺もこれには気を使う。
「…ニーナ。あの、」
「……どうなってるの?みんなは」
辛いことを告げられるのはわかっている。
けど知らなければならない。さもなければこの後見るであろう光景に彼女は耐えられないだろう。
それをわかって彼女は聞いたんだ。
『…囚われているのは男女合わせて十数人。しかし、その中で生き残っているのは殆どが女性だけとのことです』
「「!?」」
「どう言うことだ?」
『はい。ゴブリンは捕らえたエルフたちを自分たちの慰み物として捕らえたのでしょう。殆どが女のエルフでしたが、その殆どが嬲られ、辱められ、そして』
スネコスリの視線の方を見るとニーナが下唇を血が出るほど噛み締め、涙を流していた。
「いいわ。つづけて…!」
『…捕らえた時に逆らう女性がいたのでしょう。男はその為に連れてこられたのです。目の前で見せしめに殺す為に…。男たちは既に無残な姿の死体となっていたそうです』
「…そうか。目目連…ご苦労様。お前にも辛いものを見せたね。全ての目を戻していい。後は俺たちでやる」
そう言うと目目連は静かに姿を消した。
「許せない。殺してやる…!あいつら全員根絶やしにしてやる!!」
彼女の口からはその言葉が何度も発せられた。
そして俺も前の世界で普通に平和に暮らしていれば、一生感じることの無いであろう、この感情。これが本気の殺意。
「ニーナ」
「…なに?カズマ」
「その怒り。あいつらに思う存分ぶつけてやれ!」
「…ええ!!」