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異次元戦争  作者: 島崎 海成
第三章 日常生活(仮)
9/11

進級試験・前編

  「うーーん。」


 誠は部屋で一人、考えていた。


『地獄のハイウェイ』の訓練メニューを始めてから2年がたっていた。あれからキースと誠はずっと同じ生活を続けている。まあ、月に何回か健一、ヤス、キースと手合わせをしたり、筋トレの強度を替えたりはしているのだが大きく他には何も変わっていない。よくいえば誠はあの訓練メニューにはなれたのだが、悪く言えば誠はだんだん飽きてきていた。


 今日はそんな『地獄のハイウェイ』に決められた少ない休日の内の一日である。しかし、誠にとって今日は休日ではない。なぜなら明日は誠の「進級試験」の実施日で、今日誠はそのための対策を練る必要があるからだ。


 「進級試験」とはいっても、誠の世界の「定期テスト」のように、紙に書かれた難解な問題を解く、というものではなく、キースが『フライ』の地方支部から誠と同年齢の戦士と戦う、という内容で、こちらの世界でいう体育などの実技試験のようなものだ。


 今回戦う相手は2人いるので、誠は個人ではなく、キースが組んだチームで戦うよう指示された。チームは誠のほかに、マクロス、健一の2人がいる。ちなみに、誠とマクロスは誠と同い年である。


 ここ二年で、誠はいろんなことを学び、成長もし発見もしてきた。マクロスの年齢を知ったのも、つい先日、キースからのチームメンバー発表の時に聞いて初めて知ったことだ。


 それ以外にもいろんなことがあった。


 まず、体力が付き、ジョギングを何時間しようが息が切れることもなくなった。体も全体的に筋肉が多くなりいらないものが減ったので、かなり身軽になった。


 誠はさらに戦場での状況判断、敵の行動予測、敵の分析、以上3つができるようになった。これはキースではなく、クアトロが誠に与えたもので、ついでに言うと、異常なほどの動体視力も誠はいただいた。おかげで、キースとの手合わせの際、彼が撃つ銃弾の弾をすべて見切り、かわせるようになったぐらいである。まあ、その代償として、誠は半日体をクアトロに貸したのだが。


 あと成長した点を上げるとすれば、銃火器や戦術について異様に詳しくなったこと、マクロスのおはようのアッパーカットのかわしかたを覚えたこと、それから、能力による技をいくつか使えるようになったことだ。


 


 と、まあ誠はとにかく成長し、今度連れてくる相手に勝つ自信は誠には十分なほどあったのだが、誠は少し気になることがあった。


 __連携がうまく取れるかだな。


 そう、誠は健一たちと連携が取れるか心配しているのである。


 ずっと部屋で考えていたのもこれで、特に誠が心配なのはマクロスだ。健一は、誠とセカンズに転移する前から仲が良かったし、毎朝会って技の自慢をしあっている。ちなみに、健一はヤ、サポート能力『パージ』の使い手である。先日も帰ってから作戦会議をしたぐらいだから、連携に関しては大丈夫だろうが、マクロスとは一度も話したことがないので、戦い方や使える技もわからない。ならば、誠がやることはただ一つ。


 話しておかなきゃ。


 なんだかんだ言って、朝から起こしてくれるし、実は毎朝みんなのために料理を作っているのはマクロスだったりする(彼女は秘密にしているがホープがみんなに言いふらしまくってるので、皆しっている)ので、意外と優しい彼女なら誠も話してくれるのを信じて、誠は部屋を出た。


 

 誠たちはマクロスの部屋の前で足を止め、ドアをノックした。


 「誰だい?」


 マクロスはドアを開けると、誠たちをみるなり笑顔になった。


 「あれ、誠に健一じゃないか。進級試験のことだね?とりあえず部屋に入りな。」


 察しが早いなこの人。誠はそう思いながらも、遠慮なく部屋に入った。部屋に行く途中拾った健一も入ってきている。


 部屋の中は汚いという言葉はおそらく謙遜なのだろうとサルにだってわかるであろうというほど奇麗だった。壁にぶら下げられているものすごい数の銃器や剣、刀などを見るまではこの人が普通の美人な女性だといわれても誰も疑わないだろう。


 口は悪いが、実はマクロスはかなりの美人で、腕も立つ。そうなると、自然と男女共々人気が出ていて、実際『フライ』の中では彼女のファンクラブがあったのだが、なぜかヤスによって消されたそうだ。


 まあ、ファンクラブもできるわな、そう誠は思わずにはいれなかった。背が高く、スタイルも抜群だ。おまけに高い鼻に大きい目。口さえひらなければ、誠も健一も2人そろって完全に恋に落ちていただろうが、あの口の悪さと朝からキースにアッパーカットをくらわせる彼女を見て、そこまではいかなかった。


 「なにジロジロ見てんのさ。」


 誠が見ていると、マクロスが怒った。


 「あ、ごめんなさい」


 「まあいいよ、でさ、明日どうする?」


 誠はそれぞれの得意な戦闘スタイルと、能力の特性を確認し、作戦を話した。全員が作戦を理解したのと同時に、誠たちはそれぞれの部屋へと帰り、床に就いた。





 __翌朝。

 

 少し早く起きた誠は、朝の作業を済ませたあと、クラフトを体内にためていた。


 ノックをたたく音がする。誰だろうかと思いながら、誠がドアを開けると、そこに立っていたのはキース…ではなくマクロスだった。いつもは髪を解いているが、今日は後ろで一つに結んでいて、一本長い前髪をおろしている。腰には刀が二本ぶら下がってるし、まるで侍である。


 「お待たせ。今日は派手にやるよ?」


 そういうと、マクロスはニヤリとほほ笑んだ。


 しばらく健一の到着を待って居ようということでマクロスと誠が世間話をしていると、コンコンという音共に、ドアが開く。そこからのぞいた顔は、健一である。


 「よッ、ってあれ。早めに来たのに、2人とも早いなあ。」


 この男は魂の影響を受けないのか、二年たっても昔のままである。ヤスによれば、少々のことでは文句を言わなくなったそうだが、力の成長以外で健一は何一つ変わっていないように誠には思われた。

 

 まあいい。ともかくもこれにて全員集合だな。


 誠はホープに先日渡されたルールブックをとる。


 ルールと言っても別段何かがあるわけではなく、どちらかが『参った』というか、戦闘不能とホープが判断すれば試合終了。勝てれば何でもいいようので、禁じられた技(何かしらの理由で使用禁止になっている技のことである)の使用も許可、装備も何でもよし。なかなか適当だが、ホープが作ったものだといえばみな納得するだろう。ホープはそれぐらい気ままで、適当な男なのだ。場所はいつもの訓練所ではなく、外にある『コロシアム』である。制限時間も特にない。


 三人でルール確認をし、一応使える技も見せ合った。


 誠の使える技は4つあり、すべてクアトロ直伝である。ちなみに誠は投げナイフとナイフを使った近距離戦闘が得意である。


 一つ目が人差し指にクラフトをため、相手に向けて見えない高威力の衝撃波を放つ技『ポイント』。難点は攻撃範囲が狭いことで、近距離でしか攻撃できない点だが、ナイフを使った近距離戦が得意な誠には問題はない。なので、誠が一番多く使う技はこれである。


 2つ目が別空間に自分の肉体を移動させ、瞬間移動、もしくは攻撃回避に使う技、(誠が転移する際に使った技である)『デヴァイブ』。難点はクラフトと体力の消費が多いことだが、日々の訓練で凄まじい体力を身に着けた誠には問題ない。

 

 3つ目が、両手を地面について発動でき、周りのものを破壊する能力『ブレイク』。これの難点は発動に少しだけ時間がかかり、尚且つ攻撃範囲も狭いので、スキができ多用することができない点である。

 

 そして最後が、右手にクラフトを充填し、相手にかざして発動する技で、強力な波動を放つ。技名は『ゼロ』。『デヴァイブ』と同じく難点はクラフトと体力の消費が多いことで、クアトロでも1回の戦闘で10回位が限界で、誠が使おうと思うと一回の戦闘に二回が限界。しかし高威力で尚且つ『ポイント』と同じく弾も見えないし、かなりの高威力なので、誠の必殺技である。


 そしてマクロスだが、能力をあまり使いたがらないので、能力を伴った技は3つほどだ。得意な戦闘スタイルはショットガンやピストルなどと能力制限型スモークグレネード『霧雨』を駆使した中距離での奇襲戦法である。


 そして技の方だが、まず一つ目が『爆煙』。自分の体を煙にして周りに煙を誘発する技で、かなりの広範囲に影響を与える。この煙の影響を受けるのは敵だけで、見方は有利に戦いを進められる。難点は特になく、マクロスがかなり愛用している技である。


 2つ目の『機雷』。片手にクラフトをためて相手にミサイルを放つ技で、連射できない代わりに広範囲で尚且つかなりの高威力の技である。マクロス曰く結構クラフトを消費するので狙いの定まるタイミングでしか撃たないそうだ。


 そして3つ目の『バレット』。これはマクロスの専属教師である光(誠の奪還作戦の際にいた老人で、誠は後で知ったがかなりの実力者で、ヤスやキースを育てた人である。)に叩き込まれたもので、クラフトを使って任意の銃器を呼び出す技である。


 続いて健一だが、彼の能力『パージ』はサポート能力で、尚且つ頭が良く、しかも得意な戦闘スタイルはスナイパーライフルを駆使しての遠距離戦ということだったので、彼は司令官として後方支援をすることとなった。

 

 さて、技の方だが、まず『ソナー』。相手の場所を探るもので、まあいってみればこちらの世界でいうレーダのようなものだが、見方にも情報を送れる上、相手がどんな速さで動こうがその姿をとらえることができるし、その上特定の敵をロックオンする機能があるので、下手すればレーダーよりはるかに便利かもしれない。


 そして次に『ルック』。対象に手をかざすことで発動する技で、対象に異常があった場合、その異常の原因を突き止め、直すことのできる技だ。難点は、動きながらの発動が不可能なので、スキができてしまうところだ。


 最後は『バレット』。マクロスと同様である。



 誠たちが作戦の確認をしていると、ドアがノックされた。


 「行くぞー、今日は進級試験だ。」


 いつものやる気のない声がドアの向こうから聞こえる。声の主はもちろんキースだ。起こしに来なかったということは、誠たちがいるのは知っていたようだ。


 

 その後、誠たちは装備をそろえ、『コロシアム』に入った。


 『コロシアム』の見た目はこちらの世界の野球場そのもので広く楕円状に戦場が広がっていて、それに沿って少し高い位置に客席が置かれている。戦場の両端には2つ、戦士が入るための扉がある。


 客席は満席で、右には誠を、左には相手を応援するものが座っていた。その境目には、キース、光、ヤス、ホープの四人が座っている。


 誠は扉を開け、少し歩いて立ち止まった。両隣には、愛用のショットガン『へル』を構えたマクロスと同じく愛用のスナイパーライフル『ドラグノフ』を構えた健一が立っている。


 しばらく誠が立ち止まっていると、前にある扉がゆっくりと開いた。

 

 

 


 


 

 

 

 


 

 


 



 


 

いかがだったでしょうか。ほんとはこの話で進級試験についての話を終わらせる予定だったのですが、思いのほか字数がおおくなってしまったので、前編、後編の二つに分けさせてもらいました。


 少しだけ次回予告をしておくと、次の話では誠たちが進級試験の対戦相手と乱闘を繰り広げます。


 次の話は投稿日が遅れそうです。誠に申し訳ありません。

 

 ではまた次の話で。

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