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異次元戦争  作者: 島崎 海成
第2章 伝説の幕開け
7/11

入隊

 「『タップ』!」


 ホープがそう言うと同時にクアトロの頭に激痛が走る。


 「貴様ァ!私に何をしたァ!」


 クアトロは、頭の痛みをこらえながら椅子から立ち上がり、渾身の力を込めてホープの方へとパンチを決めた。が、ホープはギリギリのところでかわす。


 「くそったれェ!貴様などに殺されてたまるかァ!」


 そう叫んで、クアトロはホープの頭に蹴りを決める。今度は右の脇腹に当たったが、ホープはちっとも痛がらない。


 __くそっ!誠弱すぎかァア!


 前述したように、通常、魂の『合成』を行った場合、魂が持つ、身体能力等は後継者に受け継がれるため、後継者はその魂が持つ戦闘能力で戦える。しかし今のクアトロは昔よりはるかに弱い。誠の身体能力が低すぎて、クアトロの能力を押さえつけているのだ。


 「落ち着いて!殺すんじゃなくて僕の技で君の中に入り込んでるだけだよ!」


 「そんなこと言われて落ち着けるかァァア!」


 痛みに苦しみながら暴れまわっていたクアトロだったが、やがて気絶し、おとなしくなった。




 「はっ!?」


 気づくと、クアトロは外にいた。昨日誠がジャロに案内してもらった街並みが見える。


 「くそッ!どこだァ、ホープ!」


 空に向かってクアトロは叫んだ。しかし、返事は一切帰ってこない。


 一体どうしろというのだ。クアトロは困惑したが、少し考えた。


 ホープは、真実を見せるといっていたな。さっきの感覚からして、おそらく能力を使ったとみて、間違いはないだろう。そうすると、おそらくだがこれは奴が作り出した幻影か何か_。と、いうことは何か私にこれを通して見せるつもりだな。


 一体何を見せるのか、見物だな、ええ?私はそう簡単には騙されんぞ、ホープ。



 一方_


 よし、入り込めたな。クアトロのことだ、よほどこちらの力がないとすぐに打ち破られそうだったけど、合成したのが誠君だったから簡単だったな。


 『タップ』__、リベルタス一族は必ず持っている能力『インターベント』の技の一つで、相手の脳内に入り込み、幻影などを見せることができる技である。また、使用者は『サイコ』を使うことによって技を適用した相手の感情をコントロールすることができる。ただし相手の感情をコントロールするには、相手よりもクラフト(能力の強さをあらすものである)を上回っていなければならない。


 クアトロとホープでは、能力値の差は歴然だろう。もちろんクアトロの方が上なのだが、今のクアトロならどうだろうか。


 やってみるか__。ホープは試してみることにした。


 意識を集中させて、クアトロの中の様子をうかがう。どうやら、歩き回っているようだ。


 そしてここからがホープの見せ場である。いろんな技を組み合わせ、クアトロに『リベルタ』の恐ろしさを見せつけなければ。


 ホープはさらに意識を集中させ、『タップ』によって作られた映像を別のものに移し替える。帝国軍に占拠された村々だ。ここでクアトロには『サイコ』で恐怖と同情を抱かせる。問題は、うまくいくかどうかのみ__。


 その頃、クアトロはなんとか幻を終わらせようと過去の記憶をよみがえらせていた。技を使おうとしているのだ。


  なんとかせねば。クアトロが昨日得た少しの本の知識と、たどった記憶からいくつか技を思い出した時、クアトロは周りの光景が変わっているのに気付いた。周りは一面炎で燃えており、女や子供の泣き叫ぶ声が聞こえる。そこでクアトロはホープが幻影を見せているのに気付いた。


 おそらく奴は『インターベント』の能力の使い手だろう。ならばやることはただ一つ。


 そう思い、クアトロは手を胸の前で合わせ技の準備をする。すると、1人の女の声が聞こえた。


 ただの声ならば何も気にしなかったのだが、その声がなんとなくどこかで聞いたことのあるような気がして、クアトロは声の方へと歩いて行った。


 見ると、昼に誠をリベルタ本部に案内した兵士と同じ格好をした男数十名が、複数の女子供を囲んで、銃を向けていた。そしてその兵士たちに向かって聞き覚えのある声の主は撃たないでくれと懇願している。


 あの顔、どこかで__?


 クアトロがそう思った時、心の中で誠が叫んだ。


 母さん!


 そう、声の主は誠の母、高村春だった。


 しかし、そんなことはいざ知らず、兵士たちは自分に抗う女を撃ち殺そうとしている。それも誠の目の前で。


 クアトロさん!どうにかしてあの人たち止めて!


 無理だ。


 なんで!


 何度もクアトロに頼み込む誠だったが、クアトロが無理だという理由はなんとなく分かっていた。


 この世界はただの映像で、本当の世界ではない。彼らに攻撃を仕掛けたところで失敗に終わる。


 そんなこと言わないでよ!どうにかして!


 どうしようか…自分はともかく、誠は完全にホープの手の中だ。


 どうしようもない。とりあえずここから出る。


 誠に声をかけ、半分以上強制的に封印したあと、クアトロはもう一度胸の前で手を合わせた。


 奥では、春を含める人たちが銃で殺されていた。彼らの断末魔を聞きながら、クラフトを手に集中させる。


 「『ブレイク』」


 クアトロがそう言った瞬間、周りの空間に亀裂が入り、砕け散った。気づけば元の部屋にホープと向かい合って座っていた。


 「さて、どうだった誠君。」


 ホープが平然とクアトロに話しかける。抜け出されるのは想定内だったようだ。


 「私は誠ではない、それに彼はおそらくリベルタの恐ろしさは分かったことだろう。なにせ、自分の愛する親が殺されたのを目前で見たのだからな。だが、これだけ見せて、ハイ入隊というわけにはいかん。彼女が殺害された現場をわざわざ見せたのには理由があるはずだ。」


 「ほう、君、勘がいいね。そうさ、その通り。」


 「ではその理由を答えてもらおうか。」


 「誠君に成長してほしかったのと、もう一つ。」


 ホープは指を立て、笑顔を作った。クアトロの中にいる誠を安心させるためだろうが、見せられているクアトロにとっては気持ち悪いだけだ。


 「すべて話せ。焦らすな。」


 「わ、わかったよ。実は『フライ』を作ったのには理由があってね、春がそれに大きくかかわってる。」


 クアトロはうなずく。


 「ま、ちょっと長くなるからかいつまんでいうと、彼女は昔帝国兵だったんだけど、他の帝国兵がAIを差別したり、さっきみたいに占拠した村々なんかで残虐行為を繰り返すもんだから、正しいことをしたいってよく言ってたんだ。」


 「ほう、それで?」


 「それで彼女は帝国本部を抜け出して、地元へと帰った。それでまあ『フライ』を作ろうとしたんだけど、志半ばであんな事になっちゃって。」


 「で、お前がその意志を継いで、『フライ』を創設、今に至るわけか。」


 「そゆこと」

 

 「入隊したいか、誠に聞いてみる。」


 クアトロは一連のことを聞いた後、また誠に話しかけた。


 おい、誠よ、聞いているか。


 はい。


 泣いているのをクアトロに悟られないよう必死に隠しているが、明らかに涙声だ。まあ無理もない。あんなものを見せられた後だ。クアトロは少しかわいそうになった。


 いろいろ聞きたいことがあるが、それはもういい。お前は母の意志を受け継ぎ、『フライ』に入隊したいのか?


 はい。


 わかった。では。


 「入隊したいそうだ。」


 「やった!でもクアトロはいいの?」


 「構わん。」


 「じゃ、交渉成立だね。ようこそ、『フライ』へ。」


 

 

なかなかグダグダしておりますが、あと2話ぐらいで戦闘シーンも出てきます。気長にお付き合いのほどよろしくお願いします。

 活動報告も出しましたので、よろしければそちらもご覧ください。

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