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異次元戦争  作者: 島崎 海成
第2章 伝説の幕開け
6/11

復活

 俺、生きてるよな。


 「フライ」本部のヘリポートで、取り残された誠は一人、『フライ』の基地の中で自分の生存確認をした。五体満足だ。うん、体もすり抜けない。


 誠がこんなことをしたのには理由がある。まあ、非現実の世界でずっと過ごしてきたからなのが、他にも出来事があったからだ。


  さかのぼること30分前。


 

 

 「待てコラァァア!」



 そんな大声と共に、誠たちが乗ったヘリに追手の兵士たちが走ってきていた。中にはテネーブルと真由美もいる。兵士の数ば数千人。ものすごい数の顔が誠たちの方へ向かってきている。その光景を見た誠は鳥肌が立った。


 「へっへっへ!こりゃまた、ずいぶんと大勢だなぁ。」


 コックピットから声が聞こえる。声の主はパイロットの斎藤実だ。髪はオールバックで、サングラスをかけている。明るい性格で、しゃべり方といい何と言い、彼は誠に竜を思い出させた。


  「のんきなこと言ってないで早く離陸しないか!八つ裂きにされちまうよ!」


 マクロスが声を荒げる。


 「へいへいわかったわかった。誠君、シートベルトつけてるな?」


 「あ、はい。大丈夫です。」


 「よっしゃあ!それじゃあテイクオフと行きますかねぇ!」


 実の声と共にヘリは高度を上げた。


 「へっへーん、あいつら何にもしてこねえな、楽勝楽勝!ガハハハハハ!」


 「いや、そうでもなさそうじゃぞ。」


 笑う実に、後部座席に座っていた老人が言った。


 「後ろから戦闘用のPHが来とる。」


 「なにッ!?敵は何機だ!」

 

 ヤスが、今まで聞いたことのないような声を上げた。ヤスの焦りようから推測するに、PHは相当恐ろしい兵器なのだ。


 老人は、再び後ろを振り向く。


 「1機じゃ。対空砲もなし、冷静になれば何とかなるわい。」


 老人は、ヤスと対照的で、いたって冷静だ。


 『お前たち、直ちに高度を下げ、降伏しろ!さもなくばそのヘリごと貴様らを吹き飛ばすぞ!』


 後ろから兵士が拡声器を使って誠たちに警告している。


 「はっはっは!敵のパイロットさんがお怒りだぜ!」


 実は楽しそうに声を上げる。


誠はふと後ろを見た。あれだけ大きいものがなんで音もなく飛べるというのはおそらく、PHが完全に宙に浮いているということだろう。どんな原理で浮いてるのかは、わからないが。

 

 「ケッ。降伏なんか死んでもしないよ!おい、ヤス!ドラグノフある?」


 マクロスはPHに向かって、吐き捨てた後、ヤスに聞いた。


 「ホラよ。外すなよ?その弾、滅多に売ってないんだから。」


 ヤスは大きなスナイパーライフルをマクロスに渡した。


 「あんたなんかに言われなくても、わかってるよ!」


 マクロスはそう吐き捨てたかと思うと、ヤスに渡された『ドラグノフ』に弾を詰め、誠にドアを開けさせ、銃を構えた。


 「誠、これをあたしにつけな!じゃなきゃあたしが死んじまう!」


 誠はうなずいた後、マクロスに渡されたフック付きのワイヤーをマクロスが座っていた椅子の頭の部分に引っ掛けた。


 しばらくすると、PHのパイロットがまた話しかけてきた。


 『おい、聞こえているのか?これが最後の警告だ。ヘリの高度をさげ、降伏しろ!さもなくば…』


 「うるさい!」


 パイロットが言い終わらないうちに、マクロスは引き金を引いた。声が途切れたことから考えて、弾はパイロットに当たったのだろう。PHは高度を下げはじめ、やがて墜落した。


 「お見事。」


 ヤスはマクロスからドラグノフを受け取りながら言った。


 「ふん。嫌いなんだよ、あいつら。あと誠、よくやったね。あんたのおかげで死ななくてすんだよ。」


 マクロスは誠に着けてもらったワイヤーを外した後、腕組みをし、椅子にもたれかかった。


 その後、何度か追手の追撃をかいくぐり、誠たちは『フライ』本部に到着した、というわけだ。


 



 __なんで俺生きてられるんだろう。



 誠は自分でも不思議だった。銃弾こそくらっていないものの、ありえないことばかりが身の周りで起きているというのに、心も体もピンピンしている。普通なら自分の置かれている状況に混乱し、発狂したりしてしまいそうなものだが、それどころか誠は時々懐かしみを感じたりしている。まあ、そうさせているのはおそらく誠の中に魂として存在している『クアトロ・クリーク』なのだろうが。


 「はあぁ、もう…。」


 「おーい!」


 誠がため息をついた時、聞いたことのない声が聞こえた。


 「やあ、誠君。初めまして。『フライ』司令官の、ホープ・リベルタスです。」


 そういって男は誠に右手を差し出した。頭は金髪、短い髪を生やし、白い軍服を身にまとっている。青い目と高い鼻が特徴的だ。


 普通なら握手するところだが、かなり冷静になって誠は考えた。


 大事なこと忘れてたけど、こいつらテロ集団だぞ。しかもこいつの上の名前…リベルタスって、フロイドさんと同じじゃないか。ということは、こいつはリベルタス家の裏切り者。何かありそうだけど、『無理です』なんて言ったらマクロスに吹っ飛ばされるのはいやだし、第一、こいつらは俺のことを頼りにしてる。殺される心配もないし、握手しとくか。


 _やっぱ怖い。


 恐怖を抑えて誠は顔に無理やり笑顔を作り、ホープと握手を交わした。


 「よろしく。仲良くしよう。」


 ホープは微笑みながら誠に言った。一応誠も笑顔を返しておいたが、油断大敵。なんせ相手はテロリストの司令官だ。


 「あれ?君、何か勘違いしてない?」


 ホープは誠に聞いたが、答えは返ってこない。


 「ま、いいや。君は寝不足気味のようだから、睡眠をとるといい。本部の中に余ってるベッドがあるからそこまで案内しよう。」


 そういって、ホープは自分についてくるよう誠に指で合図した。誠は支持通りホープの後ろをついていく。

 

 ホープは一番近くにあった扉を開け、『フライ』本部へと入った。


 ホープが空のベッドを探している間、誠は本部内を観察していた。


 テロ集団というぐらいだから、周りからは圧迫を受けたり、ひんしゅくを買ったりするはず。そうなると自然と施設や集団そのものの規模は小さくなるのが普通だが、『フライ』は違った。施設は誠の学校のサイズを優に超えるし、人も結構いる。これだけ大きいものなら『リベルタ』に破壊されてもおかしくないとは思ったが、誠は気にしないことにした。


 しばらくすると、ホープは『124』と書かれた部屋の前で足を止めた。


 「ここで、いいかな?しばらく眠っといてくれ。」


 誠は扉を開けた。部屋の中は真っ白で、ベッド、机、青い椅子、本がたくさん置かれた本棚、黒くて大きいタンスなどが中に置かれている。クーラーもあるし、ここなら生活には困らなさそうだ。


 「じゃ、また明日に起こしに来るから。なんにか用があったら電話で呼んでくれ。」


 そういって、ホープは扉を閉め、どこかへ去った。電話なんかないぞ?誠はそう思って、部屋を見渡す。よく見るとベッドの横に置いてあった小さなテーブルの上に固定電話が置いてあった。0から9までちゃんと数字も書かれているし、電源コードもコンセントに刺さっている。別段問題はなさそうだ。


 誠は本棚を何か面白いものはないか、物色する。 


 おかれている本の名前を上から目で追っていくと、下から2段目のところで誠の目は釘付けになった。


 『能力の基本』?なんだこれ__?


 誠は本を手に取り、ベッドに寝転んだ。


 ページは全部で345ページ。誠は、黙読し始めた。周りには誰も誠の読書を邪魔するものがいない。誠は一心に読み続けた。


 本を読んでいると、誠にもいろんなことが分かった。どうやら能力者が自分の持つ能力を使うのには、『能力解放』が必要であるらしく、この本には能力者の『能力の解放』のやり方、能力の使い方とそれぞれの特性が書いてあった。


 まず、『能力解放』については、こう記されている。


 「『能力解放』は魂の後継者が意識して行うものであり、無意識にできるものではない。『能力解放』は魂の後継者が己の魂の特性を知り、真の『合成』を果たすことでできる。」


 つまり、誠が殺されたときに能力を使ったのは、『能力解放』を行ったちゃんとした能力ではないということだ。では真の『合成』はどのようにしてできるのか。


 真の『合成』のやり方については、こう記されている。


 「目を閉じ心を落ち着かせ、魂に話しかけ、合意を図る。以上。」


 えっ、それだけ_?


 じゃなかった。下に注意書きがある。


 「魂の説得が失敗すると、よほど自分が強くない限り、自分が乗っ取られる。そのためリスクは高い。」


 リスクは高い、か。でも俺のは強力みたいだし、能力使えたら面白そうだし、やってみるか。


 誠はそう思い、ベッドの上で胡坐をかいて、目を閉じた。心を落ち着かせて、ひたすら『クアトロ』の名前を心の中で叫び続ける。


 『クアトロさーーん!クアトロさーーん!』



 何度も繰り返して呼ぶが返事がない。眠たくなってきているのもあり、誠は焦った。


 これでいいよな?誠がそう思った時だ。


 『すまんすまん。遅れてしまって。』


 突然、頭の中で声が響く。誠が抱いた感覚はまさしく、「こいつ、脳内に直接…」のアレだ。


 『ふおお!?なんですかあなた!?』


 『え?いやクアトロですけど…。』


『一体、どこにいるんですか!姿を見せてください!』


 『無理だよ。俺はもうお前の中だ。』


 『あ、なるほど、でかい声出してすいませんでした。』


 『構わん、むしろそれが普通だ。』


 クアトロはそう言って誠の脳内で笑っている。セカンズに来てから、非現実的なことばかりなので、誠ももう驚かない。誠は少し間をおいて、本題を切り出した。


 『あの、クアトロさん、いきなりでなんですけど、お願いがあるんですが…』


 『なんだ?』


 『魂の真の合成をしてほしいんです。』


 『ああ、やっぱりそれか。いいだろう。』

 

 意外とあっさりしている。 

 

 声や話し方は信之そっくりだが、性格までは似ていないようだ。信之ならもう少し粘る。


 『ちょっと待ってろ』


 そういうと、クアトロはしゃべらなくなった。ずっとクアトロが帰って来るのを待っていた誠だったが、そろそろ耐え切れなくなっていた。


 『クアトロさん、まだですか?』


 『短気か!まあいい、言い忘れていたことを言うぞ。』


 『言い忘れてたこと?』


 『ああ、そうだ。自分でいうのも何だが、俺は魂となる前、最強だった。お前よりはるかに全てにおいて上だろう。』


 誠は心の中でうなずく。なん『総統』が認めるほどだ。否定はできない。


 『それでだ、大事なのはここからで、魂の真の合成は後継者と魂の力が不釣り合いで、なおかつ魂の方が強かった場合、後継者の中にある性格、思考、口調、運動能力、記憶、この5つが魂の強い影響を受ける。まあもう後の祭りだが、これだけは教えておこう。』


 『え、じゃあもう俺は俺でなくなるんですか?』


 『まあそこまでじゃない。お前の思考も少しは残る。だがな、お前が私をコントロールできるようになるまで、体を完全に貸してもらうことになる。それは構わんか?』


 『ええ、それは構いません。無茶しないなら。』

 

 『よし、では借りるとしよう。』


 クアトロは目を開いた。


 おお、これだ、戻ってきたぞ!


 その後、クアトロは誠の体を使えることを確認し、床に就いた。



 翌朝。


 「起きて誠君。話がある。」


 クアトロが目を開けると青い目がすぐ近くにあった。ホープだ。


 クアトロはそう起き上がり、ホープを分析しながらついていった。


 しばらくすると、ホープは『新米歓迎室』と書かれた部屋の前で立ち止まった。


 「おい、待て。」


 クアトロはホープに話しかけた。ホープは誠の変わりように驚きながらも誠を振り返った。


 「何をするつもりだ。」


 「君に、真実を伝えて入隊させる。」


 「ふざけるのもほどほどにしろ。誰がテロリストなんかに入隊するか。」


 「真実を聞けば、入隊する気になるはずだ。」


 「真実とほざいて嘘偽りを私に吹き込む気だろう。私はそんな戯言、聞くつもりもない。」


 「どうしても聞かないなら、今ここで君を無力化し、牢に入れてでも聞かせる。」


 「ほう?私が誰だかわかってのセリフか?」


 「もちろんわかってる。でもクアトロ、今の君に能力は使えない。それに、ここには僕以外にも仲間がいる。僕が言いたいこと、わかるよね?」


 「ふん、抗うのをやめて話を聞けと…、そういうことか。ずいぶんと自信があるようだが、もしそれを聞いても断ればどうする気だ。」


 「その時はその時で考えてある。とりあえず入ってくれ。」


 そういって、ホープはドアを開けた。クアトロも後に続く。


 部屋は、誠の部屋の二倍ほどの広さだった。真ん中に机があり、そこに椅子が2つずつ、お互いに向かい合うように並べられている。ホープは一番近かった席に座り、誠はその前に置かれている席に座った。


 ホープはゆっくりと口を開いた。


 「フロイドから、この世界についてどんな風に話を聞いた?」


 クアトロはフロイドから聞いたことを一切の誇張もなしに伝えた。


 「ふーん、そりゃまた困ったことするなあ、あいつも。」


 「お前は、フロイドの言っていることは嘘だといいたいようだな。」


 「あ、わかるかい?その通りだよ。」


 「見ていれば分かる。しかし証拠はあるのか?」


 「ああ、もちろんだとも」


 そういうと、ホープはクアトロ、もとい誠の額に手を当てた。


 


 


 

 


 


 

 


 

 

 

 

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