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殺人鬼異世界転生!?  作者: 多勢翔太
異世界ファンタジー
7/13

第8殺人『最初の試練』






レグリス王都、正門前にて数名の冒険者が集合。 


聳え立つ巨大な門の前には、大量の積み荷が積まれた馬車が3~5台用意されていた。やはりこの世界での文明レベルでは車等のエンジン仕様は存在しないらしい。もしかしたら魔法の車なんかあるのではないかと期待したが、その淡い期待も虚しく裏切られた。馬車という時代を感じさせる乗り物に青年はがっかりもしたが、同時に初めて乗車することに対する密かな憧れも少なからず在った。


「依頼って結構人数多いんですね」


今ここにいるのは名も知らない冒険者7人と青年とアリス、計9人だ。ロールプレイングゲーム等は幼少期に何度か友人の家で触らせてもらったことはあったが、ほとんど記憶にない。


僅かに覚えているのは、冒険に出る場合は少数精鋭の四人構成で挑むものだったはず。しかも自分、プレイヤーも含めての四人。ゲームに詳しいわけではないが、あれはたぶん大人数だと敵やモンスターに発見される危険性、移動の際の隠密性、食料問題の全てのリスクを考慮したうえでの構成なのだと子供ながらに理解していた。


この世界がゲームのまんまの世界観だとは思わない。しかし青年のいた世界での想像の産物と酷似した異世界がこうして存在しているのもまた事実。


この人数にもきっと意味があるのだろう。


「おーい、皆ちょっといいかー?」


褐色坊主の男が皆を集め出した。

各々ばらけていた冒険者たちは彼の呼び掛けにより次第に同じ場所へと集合していく。


「今回この合同任務で【班長】を任されることになった、トニー・ディーンだ。君達のことは団長から事前に知らされていたからある程度の情報は把握しているが、今回は新人も交えての任務だ。軽く挨拶も兼ねて自己紹介といかないか?」

「それもそうだな」

 

体育会系と思いきや意外としっかりとしたことを言う人だ。

確かに彼らは互いのことを知っているかもしれないが、我ら新人に至っては同期も含めほとんどが初見だ。名前もわからないと何かと不便だろうし、一緒に仕事をするのなら多少は打ち解けておきたい。


「私はビビアナ・ブラウン。魔法ならこの中でも一番を張れる自信があるわ」




《オークの真珠》を乗せた馬車を引っ張るハズの馬が興奮して言うことを聞かなくなっている。

班長のトニーが宥めるように接しても暴れ馬は聞く耳を持たない。

鼻息は荒く、目は血走っている。今にも周りの人を蹴り飛ばしそうな勢いだ。



「わーお。スッゴい暴れっぷりだねぇ♪」                

「ったく……おとなしくしろよ!」

「……?」 



今回の依頼の班長を任されているトニー・ディーン。

黒めの褐色肌をちらつかせながら、馬の対応に困ったように頭を抱え込む。

その大変そうな様子に見兼ねたアリスは何とかしようと自ら馬に近づいていく。

だがその浅はかな考えが少女に身の危険をもたらした。



「ーーーーーーアリスちゃん!危ないッ!」

「へ?」



暴れが一層激しくなり、勢いよく蹴り上げられた馬の前足が少女の頭上に落ちてくる。

遅れてやっくる同じ班員のアデリーナの声も、少女の硬直した身体を再起動させるほどの影響力をもたらさなかった。荷物を積んでいた他の班員も異変に気づき、アリスの元へ走り出していった。


だがそのその差し伸ばされた手は少女には届かず、馬の強靭な脚力がアリスの頭蓋骨を砕く様が想像させられるようにーーーーーーーーー、


「よっ」


もう駄目かと、そう確信し全員が目を瞑った突如の出来事だ。

馬鹿にしたような掛け声と共に、馬の前に立ちはだかるその人影。

男は難なく馬の前足を右腕で受け止め、顔色一つ変えず馬の足を払った。



「は………お前……!?」

「…………!!」



その姿にには見覚えのある者は多いことだろう。

彼は先日の『太陽の獅子』入団試験で未だかつて誰も見たことのないような偉業を披露した新人冒険者。

あの試験以降、ラネリアでは彼の話題で持ちきりだ。

そしてその噂は、レグリス全土にまで広まりつつある。



ーーーーーーアケチミズキ。

Lv1冒険者にして、『太陽の獅子』入団試験を歴代最速でクリアした超ルーキー。

彼のベストタイミングな登場により、周囲は目を見開く。


「アリスッ!!」


固まったまま立ち尽くす少女に駆け寄って行くビビアナ。

魂が抜け落ちたような表情の少女を心配してか、ビビアナは頬をペチペチと叩く。


「はうっ」


アホ丸出しの声を上げ、少女は現実に引き戻された。


「アリスちゃん大丈夫~?(笑)」

「だいっ……じょーぶ……」


震える足で立とうと奮闘するアリスの姿が可愛らしく、つい吹き出してしまう青年。

周りも一安心したようにそっと胸を撫で下ろすが、一人の冒険者は険しい顔つきで青年を睨み付けたままだ。



「おいテメェアケチ!今の今までどこいってたんだ!?ゴラ!」

「トイレだよ~そんな怒んなくたってい~じゃん♪」



青年の軽薄な態度に嫌気が差したようにそっぽを向く。その二人の無駄なやり取りが行われている余所に、トニーは未だに暴れている馬を宥めるために奮闘していた。



「おい!大人しくしろ!」

「ブルルゥゥゥゥウン!」



手綱を引っ張るも、トニーだけの力ではびくともしない。

途中で班員のアデリーナも加勢に入るが、馬の興奮は一向に収まる気配がない。



「ったくよぉ…コイツ馬刺にしてやろうか?………うッ!」


       

言葉を理解していたのか、馬は自分に向かって暴言を吐いたマルコ・バンビーナの顔面に唾を吐き捨てた。そんな馬の態度に怒り狂いったかのようにマルコは小刀を抜き、馬に向かってぶんぶんと振り回した。

       

「くさっ!くせぇ!この馬野郎がぁぁあ!!」

               

暴れるマルコを班員が抑えつけるも、赤鬼(マルコ)の怒りは

全く収まる気配がない。見かねた青年は赤鬼に歩み寄り赤鬼の頭をグーで殴った。

だが青年の絶妙な力加減により、脳に負荷が募らない程度に脳震盪を起こした。

意識が揺れ、その場にぐったりと倒れ込むマルコを見て「積み荷と一緒に積んでぇ~」

と軽い態度で班員に指示をする青年。周囲の人間は少しきょとんとした顔で眺めていた。

青年の言われた通り、マルコを積み荷の上に放り投げた。


「しかし………馬がこのままじゃ荷物を運べない。」


話題を戻し、暴れている馬の対処について再びトニー・ディーンは頭を抱える。

このままでは、団長直々の依頼を破棄しなけばならない。 

その最悪の事態だけは絶対に避けたい。  

       

「僕にまかせて~♪」 

     

そんな陽気な声が、トニーの耳に入ってきた。

鼻歌混じりに綺麗な足音を立てながら歩み寄ってくる。

綺麗な黒髪を揺らし、首筋からは白い肌をチラつかせ、班員達は頬を染めた。    

そしてトニーはこの青年に見覚えがある。

                

「アケチ・ミズキだよ♪よろよろ~♪」 

「アケチ・ミズキ……君が?」

               

アケチミズキ…………その名を青年の口から直接聞かされた班員たちは少し驚いた風な反応を見せたが、青年はあまり気にしない様子で歩みを再開させる。



「ふんふんふ~ん♪♪♪」  


    

鼻歌を止めず、青年は暴れ馬との距離を徐々に縮めていく。

馬もそれに気づいたのか、より一層暴れまくる。



「おい!やめておけ!別の馬を手配させれば済む話だ!!」             

「………ケッ」

「ちょっとミズキ!!危ないって!!」 

     

アリスも班員は暴れ馬に歩み寄る青年を止めようと呼び掛けるが、青年にはその歩みを止める気が全く無いように見える。

馬は少しずつ近づいてくる青年を視界に捉え、鋭い敵意を剥き出しにした。

その高く挙げられた前足が、馬がどれだけ興奮しているのか表している。

恐らくちょっとやそっとでは静まらーーーーーーーー、



「ブルゥゥゥ……」

「!?」

「……………は?」



さっきまで騒ぎ立てていた班員の顔つきは、何が起こったのか理解出来ない、といった表情だ。

馬が撒き散らした砂ぼこりも落ちていき、地面は馬が強く踏んだせいか足跡でデコボコだ。

だが彼らにはそのような些細なことは気にも止めない。


瞬きをすることも忘れ、見開いたままの眼球は段々と渇いていく。


なぜ彼らは黙り、その光景から目を離さずにいるのか。

それは馬の前足が降り下ろされる光景から、信じられない光景に反転していたからだ。

その場の全員がその異様な光景を凝視し、同時に全身が凍りついている。



「………どうなってんだ!?」



マルコが渇いた声を漏らすと、体が硬直していた班員も自然と緊張が解け、再び声を発し始める。



「………」



さっきまで暴れ、誰も手がつけられなかった馬を、一瞬にして宥められたことに。

だがその中で、一人だけ………少女は満面の笑みを浮かべていた。



「ミズキ!」



飛びっきりの笑顔で、少女は青年の名を叫んだ。

そう、この場で、このメンバーで、少女だけが知っている。


彼の《技術》を。


「もしかして…………例のアレ!?」

「うん、例のアレだよ♪」


青年もニコニコ笑いながら答える。

二人の会話に着いていけず、班員達はきょとんとした顔で立ち尽くしている。

班員は頼むから説明をしてほしいと彼らに視線で訴えるが、二人は自分たちだけの世界に入ってしまい聞こえていない様だ。


「な…なあ…アレって何のことなんだ…?」

「馬が大人しくなったことに関係あるの?」


トニーとLv1の魔法使い ビビアナ・ブランコはミズキとアリスに質問した。

            

「まぁ、関係あると言えば……ない。でもあると言えばある方かな♪」

「結局どっちなんだよ!」


軽く遊びを加えつつ説明を始めんとする青年は機嫌が良さそうに馬車の荷台へぴょんと跳ねた。

普通、成人男性が木製の荷台に飛び乗れば嫌でも軋む音が漏れるはずだが、驚くほど静かに荷台に着地した青年は、後ろを振り向きにやりと笑った。



「続きは……向かいながらにしようか♪」



◆    ◆    ◆    ◆    ◆    ◆  





ーーーーーーーーーガタンゴトン。


クグラ村へと続く広い道。

無秩序に散らばる小岩に車輪が乗ると、同時に無秩序なリズムが荷台を揺らす。

馬を導く手綱を握る手を強く締めながら、地面に擦れそうな足をぷらぷらと揺らして遊んでいる。

少しでも足が着けば地面に引きずり込まれるということを知っていて尚、青年はそのスリルを楽しんでいる。



「おい、危ないからやめとけよ。」



ーーーーーーあぁ、悲しきかな怒られてしまったなり。


背後で腰を下ろし、剣を丁寧に磨いているトニー・ディーンに辛めに釘を刺された。

馬の手綱を握っている青年は、少し残念そうに足をゆっくり引いた。

後ろに積まれている"オークの真珠"はマルコとビビアナとアーノルドが見張りを担当し、前の荷台にはアデリーナ、アリス、トニーが居座り、馬の手綱を任されているのはアケチミズキだ。



馬車は2つの荷台に別れており、一番後ろの荷台には巨大なオークの真珠を閉まっている箱とそれらを隠すために積まれている荷物の山々だ。

そして二つ目の荷物は少し毛布などが置かれているだけで、特に目立ったものはない。

トニーやアリスが座れるスペースは十分にあるほど広めだ。



「とまぁ、まず軽く自己紹介といこうじゃねぇか!」



快活に喋り出す仮面の男は、初対面の青年に対して馴れ馴れしく、もといフレンドリーに絡んでくる。

首に手を回し、高校生の悪ふざけのように軽いスキンシップだ。

少し息苦しく感じるが、青年が喋るよりも早く、仮面の男は自身について語り出す。


「俺の名前はアーノルド・ボートン!生まれはカンドラの里!Lv2に成り立てだがぁ腕には相応の自信がある!!一応、由緒ある戦闘部族の生まれでよぉ!けっこう有名なんだぜ!?」


逞しく鍛え上げられた肉体には、関心の声も上がった。

動物の毛皮をそのまま着込んだような獣臭い、盗賊のような衣装に、顔を覆い隠す白い仮面。

一見、本当に盗賊のような風貌だが、話してみれば、ただのワイルドな若者だ。

煩いのを除けていれば、いい友達になれた可能性も捨てきれないが如しであった。



だが彼が話す戦闘部族という単語には好奇心を上手い具合にくすぐられた。

青年は耳元で大声で話す班員の言葉にそっと耳を傾けた。



「ガルノ族っつー、結構野蛮な民族でよぉ。言葉は通じねぇ気性は荒いでレグルスから問題視されてんだ!!そんな一族を変えるために、俺は冒険者になった!里のみんなには反対されたけど、俺はやる!まずはすげぇ実績残して!偉い人と話しつけて!ちゃんと今後のガルノ族との共存について深く話し合いてぇ!!だから俺は!この任務を成功させて、もっともっと強くなる!」


威勢の良い主張も度が過ぎると周りから引かれるものだ。

それは彼が元居た世界でも、この異世界でも同じことのはず。

そう思っていたはずなのだが、青年の予想とは大きく外れる形となった。



「相変わらずだな、アーノルドは。」

「おうよ!俺ぁ相変わらずだぜ!?」

「たまに何言ってるのかわからなくなるわよね。」



ーーーー意外な反応だな。

青年の考えていた展開とはまた違う。おかしな会話だ。

まるで双方共顔見知りのようだが、青年からしてみれば大して興味の引かない会話である。


「ありゃりゃ?君たちって顔見知り?」

「まぁな。ここにいる全員、お前以外は見知ってる顔だ。」


まさか自分以外全員が顔見知りだなんて、軽く疎外感を感じてしまう。

青年は少し膨れた態度をとるが、トニーは気にせず会話に戻る。


「…………さっきから気になってたんだけど、もしかしてあなたと私たち、今日が初めて会ったと思ってる?」

「え?今日が初対面じゃないの?」

「入団試験!あの日、俺らお前の試合を担当したんだぞ!?」


トニーとビビアナの鶴の一声で、なんとなく思い出してきた。

入団試験の開催日、確かに試験官のような立ち位置の冒険者と戦ったような気もする。

だが、終わった戦いなど、青年には興味もなければ関心もない。


「あー、そうだっけ?僕、過去は振り返らない男だから……」

「過去って………昨日だぞ?」


昨日のことすら覚えていない青年に、呆れる面々。


「仕方ないよ、だってミズキだもん」

「そのひと言で済ませちまうお前が怖いよ」


アリスのこの性格にすっかり慣れてしまったアリスにとって、この程度は気にするほどでもない。

その順応性と割りきりの良さにトニーは少しばかり怖いようだ。


「まぁ、俺も一応自己紹介させてもらう。トニー・ディーン。以上だ」

「ちょっと短すぎじゃない?」

「普通だろ」


褐色の肌に坊主頭。整えられた装備からは古い傷がうっすらと刻まれている。

そこからは彼がまずまずの戦いを行ってきたことが物語っている。


「……アデリーナ、よろしく」


ーーーーー弱々しぃ男だ。

図体はでかく、鎧越しでもわかる鍛え上げられた固太りな肉体。

だがその弱々しい姿勢、猫背、挙動不審な態度のせいで、全く強そうには見えない。

もっと堂々としていればいいものを、非常にもったいない男だ。



「じゃあ僕も、アケチ・ミズキだよ♪一応、天才でぇーす♪」

「……天才?」

「ずいぶん自分に自信があるようだな………」



青年は軽く自己紹介をした。


「なぁなぁ!!お前のアケチスキルってどうやって覚えたんだよ」

  

アーノルドは興味津々な目で聞いてきた……目は見えないが……

             

「うーん、昔やってた仕事の影響かなー……」

「ミズキがやってた仕事ってなんなの?」


途中で話しに割り込んできた銀髪の美少女アリス 

   

                    「えーとね……」


                 

      

                     ・・・・・・・

 

      

                 気付けばみんなの視線が集まっていた

                  

                 後ろにいるマルコもさりげなく見てる

 

             アーノルドとビビアナとアデリーナも食い付くように見ている


               トニーは馬車を引きながらチラチラと見ている


            

                一方、アリスは………てか近っ!!!!!!

                 ほとんど身体が密着しているありさまだ

                身体の至るところに柔らかいモノが当たっている


                   「うーん………ナイショ♡」

  

                 「声可愛いっっっっ!!!!!!!!!!」


             アリスとビビアナが天に向かって叫んだ


               「すげぇな……声を変えられんのか…!!」


                   アーノルドは素直に感心した

  

                     「おい……もうすぐ森だぞ…!!!」

             

                トニー・ディーンが緊迫した様子で言葉を放った

                  

                  「おいおいトニー?そんな緊張すんなよ」


                  「相手はたかがLv1魔獣のオークだぜ?……」

                     アーノルドは軽くあしらう

               

                   「Lv1魔獣……?」

                 明智水樹は知らない単語に首を傾ける

     

               「魔獣にはね!ギルド協会が定めたLvがあるの!!!」


                   アリスは青年に解説を始めた 

                      

          「オークは一番低いLv1!!まぁLv1の中でも強めの部類だけどね」


             「Lv1の魔獣はLv1の冒険者と戦えるレベル」

   

              「Lv2の魔獣はLv2の冒険者と戦えるレベル」

  

                「まぁこんな感じかな!!!!!」

             説明を終えると満足気に胸を張る

         

              「森に入る!!!!みんな!!武器を構えろ!!!」

           その場の全員が、即座に武器をとる

             

                 マルコは腰の小刀2本を

    

                 アーノルドは大きめのナイフを

  

                 ビビアナは魔法杖を

  

                 アデリーナは盾と剣を

 

                 トニーは魔法剣を


                 アリスは青年の背後に隠れる


               「アリスちゃん戦わないの?」

              「うん!!!!!!!!!!」

                なんていい返事!!!


       ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

           ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

            ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

             ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

              ーーーーーーーーーーーーーーーーー

               ーーーーーーーーーーーーーーー

                ーーーーーーーーーーーーー   

                 ーーーーーーーーーーー

                  ーーーーーーーーー

                   ーーーーーーー

                    ーーーーー

                     ーーー

                      ー


「右方向!猿みてぇなのが来てッゾ!!」


マルコの荒く乱れた声が仲間の耳を伝い、情報と状況を伝達する。

言われた方向に首を曲げると、猿のような魔獣が木の枝から伝って此方に向かってやって来る。


「猿型の魔獣……たぶんLv1の『緑猿』だと思う!!」

「この距離はちとキツイな……」

「いや、僕の『妖精大砲』なら届くかも………」

「アホ!!あれは簡単に使えるようなもんじゃ……」


揺れる馬車の上で騒ぎ立てる班員たちに呆れたようにため息を吐く青年。

馬を引く手綱を手放さず、ぼーっとしていた青年だが、彼らの不甲斐なさを

見ていられず、戦闘に参戦することにした。


「はいは~い、この手綱持っててね~♪」

「は?いや、え……?」


青年は無理やり手綱をトニーに渡し、運転手を交代をする。

なにが何だかなからないながらもトニーは手綱を握り、馬車の前に座る。

全員が青年を見つめるなか、青年は右手をポケットに突っ込み

一本のナイフを取り出す。

その小さなナイフがマルコの視界に入ると、嫌な記憶が脳を過る。

マルコの右腕を切断し、全身に切り傷を刻み込まれたあの体験が、嫌でも忘れられない。

後ろで苦虫を潰したような顔をするマルコに気づくが、青年は声をかけることなく前に一歩踏み出す。



「|【殺人技術】アケチスキル 《蠍座の一閃》♪」

「ッッ!!」


青年は身を捩り、右腕を後ろに回す。

足を地に定着させ、腰回りに力を込める。


最後に右腕の筋肉をしならせ、木に伝いながら近づいてくる猿に向かって思い切り投げる。



「ーーーーーギギャァッ!?」


「うおっ!!あの距離で当てやがった……!」


投げられたナイフは猿の頭部に深く突き刺さり、標的は力なく木から落ちていった。

青年が今立っている馬車から猿が捕まっていた木との距離は300m以上はある。

この距離で標的の眉間に的確に当てるなど、常人なら考えられない集中力と繊細さだ。

それをこうも簡単に行える青年に、トニーは少しだが不信感を抱いていた。



「お前……す、凄いな。」

「ホント、驚いたわ。普通じゃないとは思ってたけど……」

「そーだよ!!ミズキはほんとーのほんと~~~ぉにスッゴいんだよーー!!」


じゃれてくるアリスの頭を撫でている青年に、トニーとマルコ以外は少しずつ心を開いていく。

トニーは青年の異常なまでの手数の多さに不信を抱き、マルコは青年から受けた屈辱からか

まだ受け入れきれない模様。そんな不安定な空気を保ったまま、馬車は荒い道のりを進んでいく。


「………ッ!!」


「ーーーーーうおぁっ!?」


急に止まり、道の真ん中で移動を停止する馬車。

体勢を崩し、荷台の荷物の上に倒れる青年の上に乗っかるアリス。

マルコ、ビビアナ、アーノルド、アデリーナも冒険者なだけあって受け身を取っており、怪我はしていないようだ。アリスのクッションになったのは幸いだったがこの急停止は何なのかと青年はトニーに文句を垂れる。


「ちょっとちょっと~、トニーくん?どういうこっちゃねんコレ(笑)」

「急に止まるなんて危ないじゃな………ッッ!!」


ビビアナは起き上がると、その瞳には異形とも言える光景が道を塞いでいた。


「アァァァァァ…………」

「アァァアァ?」


ーーーーー幾つもの【人外】が立ち並び、青年らが進む馬車の道を阻んでいる。その禍禍しくも人の形をある程度保ったその姿には、トニー達には見知った存在であり、別の世界から来た青年にすら、その怪物の正体がわかっていた。


顔色が悪く、酷く損失した肉体の箇所。

生きているとは思えない、生気の感じられない虚ろな表情。

ハリウッド映画の特殊メイク顔負けのグロテスクな見た目に青年は若干引きつつ、小さな声で怪物の名称を唱えた。






「………………【屍】(ゾンビ)。」




青年は静かにその名を呟くと、周りにいる仲間たちの反応を横目に伺った。


彼らから渦巻く張りつめたような空気には、恐怖、焦り、野心、など様々な感情が

入り交じっているようにも思えた。



ーーーーー恐怖を感じたビビアナは未熟にも、生々しく吼える怪物の姿に臆してしまった。彼女もまた女性。冒険者という『職』についても、やはり"女"という部類に属する者。異常な状況に立ち会ってしまえば、恐怖してしまうのは仕方のないことだ。

ちなみに、マルコとアデリーナも同様に恐怖した。



ーーーーー焦りを感じたトニーは、この場をどう乗り越えるか。尊敬する団長に急遽任された任務を中断する最悪の事態だけは避けなければならない。班長という役割りを任された以上、班員を全員無事に帰還させる義務がある。



「アァァァァァッッ!!」

「き来たよッ!?」


迫り来る【屍】の群れ。

急ぎ武器を持ち直そうと手を腰に手を伸ばすが、先程の急停止の衝撃で剣、杖などが馬車から落としてしまった。

焦り魔法詠唱を唱えるビビアナだが、目の前まで来た【屍】の手によって喉元を捕まれ、詠唱が途切れる。


「ぐぁ………!」

「ーーービビアナっ!!」


圧倒的な数により一瞬にして拘束された冒険者たち。

首を絞められるビビアナを助けることも出来ず、トニーは黙って睨み付けた。



「ぐ…………アリスとマルコはどうした!?」

「二人ともさっきので気絶してる!」

「あのアンポンタン2匹ッ!!」


先程の急停止でどこか打ち付けたのか、馬車の奥で仲良く伸びているアリスとマルコ。ビビアナを救出できるとしたら、マルコが適任だと思ったのだが、あの状態では役に立ちそうにもない。


「………………がはっ」

「放せ!このっ…………」

「痛ぇ!やめろ腐れ野郎が!」


必死に抵抗するアーノルドだが、無力にも地に伏せられる。

振りほどこうにも、何体もの【屍】が重なりあい、トニーの非力な腕力では太刀打ち出来ないほどの重量になっていた。あの巨体のアデリーナを押さえつけられているほどだ。


だが、ビビアナの息の根が止まるかと思いきや、予想外の攻撃が【屍】の行為を妨害した。


ーーーーーそう、青年の存在を忘れてはならない。



【殺人技術】アケチスキル第6番《切断チョップ》♪」

「アッ!?」            


その揚々とした声と共に現れたのは、形のいい『手』。

その形のいい『手』が縦に傾けられ、真っ直ぐ直線的に振り下ろされた。


その瞬間、血しぶきが上がり、怪物の手首が地に落ちた。


「ァァァァア…………」

「かはっ、かはっ…………」


ビビアナの首を絞めていた手は切り落とされたため、ビビアナの首にかけられていた圧力は消え、困難だった呼吸はすぐに再開された。地に崩れ落ち、荒い息を漏らすビビアナを見て安堵するトニー、アデリーナ。


地面に転がる手首に視線が集中されるが、視線の的はすぐに移り変わった。



「やぁやぁ、こんにちわ♪そんな顔色悪くしてどうしたのかな?ボクで良ければ相談にのるぞい?」

「ァァァァァァァアッッ!!」


【屍】の脆い拳は届かず、無意味にも青年の横を素通りした。

背後からも襲いかかる【屍】達だが、攻撃の一切が彼に直撃しない。

軽々と避ける姿からは、まるで遊んでいるようにも思える。

青年は懐からナイフを取り出し、華麗に、静かに怪物達の肉体を切り刻んでいく。


「アァァォァァァァアガァガガァアッッ!?」

「グギィィィァァァア……」

「アィィィアアアア☆◆◎%」

「ーーーーーーすごい。」


ーーーーそんな言葉が自然と漏れていた。

気が付くと、自分達を拘束していた【屍】達の姿はなかった。

青年目掛けて飛び出したのか、恐怖心で逃走したのか、今となってはそのこともわからない。


「……ふぅ。【屍】くんたちって、なんかスナック菓子みたいに脆いんだねぇ♪だってさぁ、ちょっと腕握っただけでポッキリだよ?」


目の前に広がる死骸の数々に唖然と立ち尽くしていたトニー、ビビアナ、アデリーナ、アーノルド。彼らは青年に対して、異常なほどの不信感、恐怖心を抱いていた。












                 「オークが一匹も来ねぇぇぇぇ!!!!!!」

          森中に、アーノルドの心の叫びが響き渡ったが

                   鳥すら騒ぎ出さない…


                       そう


               来るハズのオークが一匹も来なかったのだ


                  「い…いやぁ…おかしいなぁ……」


         「"オークの真珠"はオークという種族にとって家宝のようなもの…」


                「現れないハズが……………」


             「というか……この森おかしいわよ……」

              ビビアナは杖を握りしめながら言った

    

        「この森に入って20分以上経つけど……一匹も魔獣に出会わないわ……」


               この奇妙な森にその場の全員が不安を抱く

    

                  「あ!!」


          鈴の音のような可愛い声が森に響いた


                 「もしかして………」





          「このメンバーが強すぎて魔獣が寄り付かないんじゃない?」


             アリスは自分の考えをみんなに発表した


               「おお!!なるほど!!!!そりゃそうか!!!!!!!」


      アーノルドはアリスの考えに納得したかのように大きく笑いだす

   

              「Lv1が二人にLv2が四人、Lv3が一人だもんな!!!」


            「俺が魔獣だったら絶対近づかねぇぇや!!!!」

             アーノルドの笑いがみんなの不安を打ち消していく


                  気付けばみんなに笑顔が戻っていた


                   班員は武器を仕舞っていた


               「そうよね……アタシたち結構強いもんね…」


                 「ハッ…俺様の強さは罪だぜ……」

 

            「いや………マルコくんは……弱いよ……Lv1と対して変わらないし…」

                「っんだと!!!!このクソボケゴリラ!!!!」


               「そーだぜえ♪マルコォ♪」

                アーノルドはマルコの肩を組んできた

      

        

    「お前…いつも簡単な採取クエクトでクエクト数稼いで、やっとLv2になったんだろぉ」

     

         (な……なんで……それを……!!!!!!!!!!)


     「そりゃ弱いハズだわ!!!お前どーすんだ?Lv2のクエクトはほとんど魔獣関係だぞ?」


              「うっ……うるせぇぇ!!!!わかってるっつーの!!!」


         


              「あはは!みんな一気に緊張感抜けたねぇ♪」

                   「うふふ……そうね」   

       

               

               「あーー……気が抜けたから腹減ったなぁあ」

                アーノルドはだらけた格好で空腹を訴える


                 「あ 10円ガム食べるぅ?」

  

                  「は?ジュウエンガム?なんじゃそら?」


            10円ガム……こないだ『運命の部屋』の輸入システムで

               日本からこっちの世界に取り寄せたのだ

                    全部で丁度7個ある


                   「みんなーーハイ♪」

     

                青年はみんな均等に一つずつ投げて配る

                「わー何これミズキー!!!」

              「あ!?なんだコレ?食えんのか!?」

      「何この包んであるの……銀……?…にしては…薄くて紙みたい…」


            みんなが包んである紙を取っていく……

            


    「モグ」「モス」「パクっ」「モグッ」「モスッ」「パクっ」「モグ」   


                みんなが一斉に口に入れた


           「クチャクチャ……クチャクチャ……うまっ!!!!!」


              「おいしぃぃぃ!!!!クセになるぅぅぅ!!!!」


              みんな大絶賛だった


              「こんなの食ったことないな………クチャクチャ…」

                トニーも気に入ったようだ


        「クチャクチャ………これ…どこで…クチャクチャ……売ってんだ?」



            「あーそれ僕の故郷にしか無いのでー♪」


                「部屋に一杯あるんで、今度あげるー♪」


                今は無いが、『運命の部屋』でまた買えばいい

  

              「あぁ!そいつは頼むよ!!」


                「俺にもくれや!!」


               「私もー!!ミズキー!!私もー!!」


                  「僕も……」


                 「アタシもお願いしようかしら」

                   

              「俺にもよこせ……」


                「うんいーよいーよ♪」


                そんな話しをしている内に……


                「あっ!!!もうクグラ村に着くぞ!!!」


            「え…!!結局一体も魔獣出なかったな……」


               渋々、不満を言いながらも

              アケチ・ミズキと班員はクグラ村に足を踏み入れた

            ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

       

               ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


                 ーーーーーーーーーーーーーーーーー

   

                   ーーーーーーーーーーーーー

      

                     ーーーーーーーーー

     

                       ーーーーー

                      ークグラ村ー

           


「おいおい………どういうことだよ!」


マルコたちは村に足を踏み入れた瞬間から、何かがおかしいと、薄々気づいていた。

経験から得た、冒険者の勘か、はたまた、個人特有の危機管理能力か、危険に敏感な天性のものか。

それぞれ、形は違えど、何かしらの方法でこの村の異常性に感づいていた。



そう、もうすぐ昼時だと言うのに、子供の声一つ聞こえない。

昼食の支度をしているのなら、煙突から煙が漏れるはずだが、どの家も煙など出ていない。

そして、そこらじゅうに飛び散っている血痕の数々。


「……たしか幹部達が次の輸送をしてくれるはずなんだが、いないな」



既にこの村で待機しているはずの幹部達の姿がないことに、トニーは嫌な予感を察知する。

何かの手違いか、それとも何かのトラブルか。

トニーはそれをいち早く確認するため、早速班員に命令を下す。



「一度調べたほうがいいな。みんな、一旦この村を探索する。」



こうして、アケチ・ミズキと愉快な仲間達のクグラ村探索は幕を開けた。


「うーん……いないねー……」


                アケチ・ミズキは家のドアを片っ端から開けてみたが


                やはり村人はひとっこひとりいない


               「アリスちゃーん、村の人いたぁ?」

             一緒に探していたアリスに探索の成果を聞いてみる

「んー……いなーい」

あっちも成果無しらしい……

         

「ところでさぁ……アリスちゃん…」

「なに?ミズキ」


アリスは

「魔獣について教えてほしいんだけど」

「魔獣?………んー、いいよ!」


アリスは周辺の調査を行いながら、青年の質問に応える。

            

「魔獣にはLv1からLv6まであって、これは冒険者と同じだね」


少女は説明を始める。口を動かしながら調査の手を休めないその姿勢に

青年は少し意外に感じてしまう。彼女はもう少し怠け者のイメージが強かったためか

仕事のときはちゃんとやるというギャップに感心と親近感を覚える。


「Lv1はゴブリン、オークとか弱い魔獣が大半。Lv2は……はっきり言って強い。

 変な特殊能力とか有るのもたまにいるし、迫力が凄い。Lv3は……めちゃ化け物!!」

「………ばけもの?」


彼女のなげやりな物言いに、青年はくるっと後ろを振り向く。

なにが化け物なの?と、聞いてみると、少女は何か脅えた様子で説明を再開させる。


「れ…Lv3の…魔獣はっ……本当に、化け物で……ほんと…恐いんだ!!」

「ほー……」


彼女からはこれ以上情報を得られないと判断した青年は、直ぐに調査に戻る。

だが、その後にアリスは

「うん…Lv1の魔獣はLv1冒険者でも余裕だよ……」

「Lv2は……一人で戦うのはオススメしないなぁ……」

「Lv2にると魔獣も強いし、Lv2の魔獣はLv1の冒険者5人は必要かなぁ」

「Lv2冒険者だと2人はいるね」


「Lv3は………ちょっと別格かなぁ……」

「別格?」


「うん……Lv3ともなると一気にレベルが上がるよ」

「魔獣も本当の化け物みたいな強さになっていくんだ…」




「……へぇ♪」



魔獣の強さの基準はなんとなくわかった。


「ねーーー!!なんか変な教会みつけたんだけど!!」


突然の声に反応するように後ろを振り返ると、そこには手を振っているビビアナの

姿があった。彼女の呼びかけに応え、青年とアリス、班員全員は調査を一旦中断し

ビビアナが言う教会の前まで集合することになった。




◆     ◆     ◆     ◆     ◆     ◆

   




ーーーーーーーーーークグラ村教会前。   


 

「ここかぁ……たしかに変だなぁ…」


マルコは仏頂面で教会を見渡した。



「教会の鍵穴が壊されていやがんな………」


マルコは教会の古びた扉に付けてある鍵錠を慎重に指で触れていく。

鍵錠の模様をなぞっていくと、『何か』の爪で引っ掻いたような傷が刻まれていた。

鍵穴は粗く壊され、無理矢理抉じ開けたような状態だ。

         

「しかも内側から鍵を掛けてあるぞ……」

「閉じ籠ってるみたいね…」

「…………ッッ!!」

           


その時、その場の全員が理解した。



一人も見当たらない村人。



立て込もっていたかのような教会。



無理矢理こじ開けられたドア。


全て合点がいったトニーは目を見開き、剣を強く握る。 

            

   

「ーーーーーーーー急げッ!!」



トニーの掛け声と共に、全員が教会の中へと突入した。







    

『ーーーーーーグチャグチャグチャグチャグチャ』



不愉快な音が薄暗い教会の奥から聴こえてくる。

何かを潰したような、千切るような、噛むような……そう、『咀嚼音』が

教会中央から聴こえてくる。その音を聴いたアリス、マルコ、トニー、ビビアナ

アデリーナはその足を止め青年もゆっくりと、その早い足取りを止めた。 


「すっご……♪」

       

教会中央には巨大な怪物が何かを貪っていた。


強靭な筋肉を携えた巨大な肉体。丸太のように太く分厚い腕。

赤黒く光る双眼。牛の顔に、大きく生やされた鋭利な角。明らかに『人間』とは

かけ離れた姿は、直ぐに怪物だと理解出来た。しかも……その怪物の影は

3つあった。


「ブルルゥゥゥゥ………」

「ブォブォブォッ!」

「ブルォォォォォォォ…」


牛のような、いやどちらかといえば馬のような鳴き声を漏らしながら、必死に床に

散らばる大量の何かを貪り喰らっていく。近づいて行くにつれ、その転がっている

物の正体に気付き、アリスが小さな悲鳴を上げた。


血液の匂いが鼻孔の奥を刺激する。生々臭い悪臭に耐えきれず、アデリーナは

床に軽く嘔吐した。だが、彼らの視線は教会中央に集中していた。なぜなら……



ーーーーーーーーーーーーー大量の死体。

5つや6つの話しではない。数十、20人以上の死体が教会の床に転がっていた。

気色が悪いくらいに血が溜まり、潰れた内臓と混ざり合い、どろどろとした

液体になっている。その血を這いずり啜る怪物の姿。見るに耐えない状態に

青年以外の班員は目を背けざるをえなかった。


「ぁ……ぁ……ぁぁあ……」


死体を食らう怪物の存在。だが、青年にとって死体の数や状態など大したこと

ではなかった。彼が今、興味を持ち始めているのは怪物の容姿についてだ。

………胴体、手足が人間。頭部が牛の顔。その共通点のある怪物を青年は知っている。

ギリシャ神話で登場する牛の頭を持つ巨人、ゲームや物語にも登場する有名な怪物。


震える声を振り絞るように、トニーはその魔獣の名を口にする。


「ーーーーーーーーーーLv3魔獣『ミノタウロス』が……3体!!」




『さぁ…………』


『試練の始まりです』



オルガナの声が脳内を横切ったような気がした。


始まる絶望ーー!!!!

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