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殺人鬼異世界転生!?  作者: 多勢翔太
異世界ファンタジー
6/13

第5殺人『特別依頼』

すいません……訂正です…レナ・エルニーニとロナ・エルニーニは幹部ではなく普通のギルドメンバーにしました…




アリス・エヴァンジェリン 種族:?? 性別:女 冒険者階級 Lv1。

好きな物:甘いもの、楽しい事、可愛い物、みんな。

嫌いな物:苦い物、野菜(特にピーマン)、虫、怖いもの、人を傷つけること。


世界権力者エヴァンジェリン一族の末っ子。元気一杯、天真爛漫な可愛らしい少女。

白く綺麗な髪と、透き通るような白い肌に加えて、血を溢したような真っ赤な瞳が特徴的、神秘的である。

その目立つ容姿からか、周囲からは素っ気ない態度を取られるが、それ以外にも大きな問題を抱えている。

そのため、自分に自信がなく、前に一歩踏み出す勇気が無い模様。

人のためのことを考えているときの行動力は大胆そのものであり、その結果は少女にいつも不幸をもたらすらしい。そして、14才ほどの容姿だが、実年齢とはかなり違う。

    

アレックス・アニー 種族:人間 性別:男 冒険者階級Lv●

好きな物:本、一人の時間、仕事、団長。嫌いな物:甘いもの、運動、自分を馬鹿にする輩。

『太陽の獅子』結成メンバーの一人で、若いながらも副団長を勤める若きホープ。

白髪オールバックに眼鏡。顔は二枚目で目立つ容姿ではあるが、本人は至って真面目で実直。

一癖も二癖もある団員達の起こす問題を後処理するため、山積みの書類整理に追われている。副団長としての威厳を保つために普段から言葉づかいを厳しくしているが、本人は至って神経質、内気な性格。いつも本を持ち歩いているが、それは彼にとって大事な物らしい。他の冒険者とは違う特異体質を持つ。


レナ・エルニーニ

種族:白狐(ビャッコ)性別:女 冒険者階級 Lv●

好きな物:食べ物(特に肉)、甘いもの、遊ぶ、闘い、撫でて貰うこと(気を許した相手だけ)。

嫌いな物:お風呂、可愛いお洋服、じっとしていること。

いつも元気な12才ぐらいの女の子、見た目は色白で髪も白くとても神秘的な印象。

戦闘能力は高く、才能、潜在能力だけで言えば『太陽の獅子』で随一。

いつもロナと一緒に街の子供達と遊んでいる。

     

ロナ・エルニーニ

種族:白狐(ビャッコ)性別:女 Lv? 

好きな物:甘いもの、本、お風呂、可愛い洋服

嫌いな物:汚い場所、うるさい場所

いつも大人しく、臆病な性格の女の子。本人は短いスカートを気にしているらしい。

魔力は人間が持つ平均の5倍近くあるらしいが、魔法を使うのが怖くてあまり仕様しない。

いつも姉のレナに振り回される苦労人。

   

ガーナー・ガルビー

種族:獣人 性別:男 Lv?

好きな物:酒、喧嘩、近所の子供との遊び、宴会

嫌いな物:気難しいこと、甘いもの、フルーツ。

強靭な肉体を体毛で覆う獣人。接近戦闘のエキスパートであり、武器や魔法を使わない体術だけなら、レグリス王国最強と呼ばれている。『太陽の獅子』結成メンバーの一人で、アレックスとディヴィットとは古い付き合い。

何かにつけては喧嘩をしようとするが。 


ベロニカ

種族:不明 性別:女? Lv?

好きな物:食べ物、食べ物くれる人、心地の良いクッション、寝ること

嫌いな物:うるさい場所、寝れない事、食べ物くれない人

なぜかいつもクッションの上に乗りながら空を浮いている。

いつも眠そうにしている褐色黒髪黒ワンピースの少女。

職業や家名、年齢など一切不明のミステリアスな少女。







「よい"仲間"と出会えましたね、お客様。」


黒帽子の紳士は仮面越しで言葉を放った。


黒い部屋、すべてを黒で塗り潰されたこの空間に青年は見覚えがある。

不気味………とはまた違う、不思議な雰囲気が漂うこの部屋は不思議と嫌いになれない。この感覚は、例えるなら故郷に帰った旅人のような気分だ。

心が落ち着き、頬が自然と緩んでしまう。その青年の『落ち着き』を感じ取ったのか、目の前に座っている男は、それを引き金に会話を始めた。


「運命の部屋、ご利用感謝しております」


目の前にいる黒い帽子を被った男『オルガナ』は青年の部屋の訪れを歓喜するような口振りで青年に語りかけた。


「ーーーーーいや、一度顔会わせただけで"仲間"と言えるかどうかは微妙なところなんだけど……あ、オルガナさんで合ってますよね?」

「はい、お久しぶりでございます」


ーーーーーーはぁ、よかった。名前間違ってなかった。

人の顔や名前を覚えるのは極端に苦手な青年。記憶していた名前に誤りがなかったことに、青年は密かに安堵する。彼は得体が知れないため、極力無礼は控えておく必要がある。彼からしてみれぱこっちは " お客様 " らしいので、ある程度の無礼は許容してくれるとは思うが、念には念を。用心に越したことはない。

             

「で、で、で、また部屋に呼ばれたみたいっすけど、なんでぇ僕を呼んだんですかぁ?」


青年はさっきから引っ掛かっていた疑問を目の前に人物に問いかける。

まずそこから話して貰わないと何も始まらないのが現状だ。



 青年が今把握している彼の役目はこうだ。

オルガナは【人間界】で死んだ幾千もの人間の中から、特別な力、素質を見抜き、【お客様】としてこの《運命の部屋》に導き、招き入れる。



 そして記憶があやふやな【お客様】を上手い具合に丸め込み、強引な詐欺紛いな方法で契約を結ばせる。

 そして契約を結んだ者だけを生き返らせ、あの【異世界】に魂と肉体を一緒に送る。なんでもその【お客様】は天命を全うしなければならないとか。【運命】を変えるために《運命の部屋》のサポートを受けながらこの世界に形ある実績を遺すーーーーーーーーそういうことのはずだ。



 だが言ってみれば、それしかわかっていない。

 根本的な方針は理解出来ても、今後の生活はどうしたらいいのか。

 自分で決めていいのか、彼の指示を受けて行動せねばならないのかまだ具体的なことは聞かされていない。



 座りながらも落ち着きのない青年は、急かすようにオルガナの顔を見つめていた。

 それに困ったように顔を背けたオルガナも、暫く無言が続いてから言葉を発した。



「ミズキ様、貴方様は今後、どういった事を成し得たいのですか?」

「ん~、そんなこと言われてもねぇ~~」


肘を抱えるようにして考える姿勢をとってみたが、格好だけ取り繕っても自分が何をしたいのかなんてわからない。

今まで好きなことはやってきたし今さらこんな【異世界】でやれることなんてたかが知れている。

……だが少し本音を言うと、前の世界より今のほうが楽しいことのほうが多い。

見るもの全てが新鮮で、世界中を旅するのも一興かもしれない。


『やめてッ。お願い!殺さないでっ、死にたく、ないっ!』


ーーーーー脳と耳に残る雑音。

耳を澄ませば、自然と聴こえてくる人間たちの断末魔と醜い怒号。

そして瞼を閉じれば、自然と脳裏に流れ込んでくる人間たちの泣き叫ぶ歪んだ顔。

全てが不愉快で、全てが愛おしい。青年の心に遺る数少ない《大事なモノ》。

青年にとって大事な思い出の一部だ。



だが、その記憶が在るからこそ。沸き立つ感情が必ずある。


ーーーーーー最近、人を殺してない。


青年は手袋を外し、自分の手の甲に鼻を優しく擦りつける。


そうすると白く綺麗な手からは、強い刺激臭ーーーーーー血の臭いが鼻の奥を満たす。

欲求不満とはこのことだろうか。

肉を削ぎ落とす感触、血が飛び散る音、死体の冷たい体温、全てが懐かしくもう手の届かないモノになってしまった。異世界で殺人がどんな印象を持たれてるのかは知らないが、少なくともどの世界でも良い印象は持たれていないだろう。


ーーーーーこの世界で人を殺したら………処刑かな?


それはそれで楽しみでもある。


「……僕は、楽しいことをしてみたいな♪」



青年は求めていた。


今まで味わったこのない刺激を。


感じたことのない高揚を。


血が沸騰するような興奮を。


命と命を懸けた死のやり取りを。


この世界で失った分、青年は心に空いてしまった穴を埋めたい。そう願っていた。





「もうじき、試練が来ます」





オルガナは、そう一言だけ青年に告げた。

      

その『試練』というものが何を意味するのか、彼が自分に何を伝えたいのか全くもってわからない。

なんの意図があっての言動なのか、彼に聞こうと言葉を投げ掛けようとしたが、いつの間にか場の空気が変わり、青年は

オルガナがこれ以上何も教えてくれないと察した。


「…………試練?」


「はい、試練です。退屈はしないかと」



「ふぅーん………まぁ、わかったよ♪じゃあ質問変えるけどこの《運命の部屋》。オルガナさんは僕にいったい何をしてくれるのかな?」

「様々なことでございます」


様々な事ってなんぞや。

心の中で文句を垂れるも、青年はオルガナの話しを最後まで聞こうと耳を傾ける。


「あなた様が困難に遭遇したとき、些細なこと。悩み。様々です。他にも、色々な手助けとして《輸入システム》などもあります」

「?」


聞き慣れない単語に青年は顔を強張らせ、困惑の表情を浮かべる。

輸入とは世間一般的に言うと、外国から資源やサービスなどの財を購入することを言う。

だが彼の口振りから察するに、普通の輸入とは思えない。

    

「輸入システムって、どーゆーやつなんですか…?」

「輸入システムとは、【異世界】の現金を引き換えに貴方が前にいた世界…【人間界】の商品、武器、衣服、資源、様々な物を、【異世界】にコンバートすることが出来るシステムになっております」

「は?」


ーーーーーだめだ、理解が追いつかない。コンバート?変換、変形、交換、輸入。


「つまり、水樹様が欲しいと思った物、たとえば人間界に販売されている缶コーヒーを銅貨1枚と鉄貨3枚…130円分でご購入すると、この世界に送ることができます」      

「なにそれ便利」


予想外の超便利システムに青年は喜びと興奮を隠せない。

輸入システムなんて言うからもっと小難しい下らないものかと思いきやとんだおもしろサプライズだ。



「鉄貨は日本円で百円、銅貨は千円、銀貨は1万円、金貨は10万円、純金貨は100万円です。その上にも様々な種類のお金があります。」


「今、試しに何かご購入なされますか?」


「……ん」



 突然言われても、お金などこの世界に来てまだ集めていない。だが一応。念のため。ごそごそと、青年は自分のポケットを漁ってみた。この世界に来て、お金関係にまったく関わっていない青年。これはいわゆる無一文というーーーーん?



「ーーーーーーーー」



 ポケットの中に丸い円上の物体が指に触れる感覚。

 取り出し、見てみると………錆び付いたコインのようなものだった。


「これ……銅貨?」


どういう経緯でこの銅貨を所持しているのか、朧気な記憶を漁る青年。

………たしか、入団試験の日、闘技場に向かう途中で道端で拾ったのを思い出した。

汚かったので捨てようとしたが、痺れを切らしたアリスに腕を引っ張られ、そのまま闘技場に行ってしまった。


つまり………これが明智水樹の全財産ということになる。

                   

「…………………」 


何か言えよ。

黙りこくったまま、無言で頷くオルガナ。


「ぷふっ」  

    

ピアノを弾く女性が一旦手を止め、口元を押さえながら盛大に吹き出す。


「………何かご購入なされますか?」

「………………」


この金で何が買えるというのか。

少ないお小遣いで買うお菓子を迷う幼き子供になった気分だ。

……子供。お菓子。お菓子。お菓子。お菓子。



「ーーーーー10円ガムって買えますか?」



アケチミズキは10個の10円ガムを購入した。




◆    ◆     ◆   ◆   ◆    ◆




早朝、小鳥の鳴き声する五月蝿く思えてしまう時間。

身体が常に安息の睡眠と休息を求めてしまう安らぎの時間。

青年は早起きなどしない。大事な用事があろうと、学校があろうと、青年は朝10時以降でなければ活動を開始しない。学校がある日は午前は無断で遅刻し、午後からだが一応授業には参加していた。


「ミズキーー!朝だよー!起きてぇ!」

「ミズキ様、朝ですよ起きてください」


カーテンが開けられ、青年の顔に陽射しが当たり瞼をピクピクさせる。

この声質、扉を開けた時の力加減、足音の音量からするとアリス&カトリナのコンビであることは明白であろう。


「ミズキーー!朝だよー!!起きろー!」

「ミズキ様、朝ですよ起きてください」 


ーーーーーうるさいなぁ。

ーーーーーあぁ、たしか今日はギルドで初めての依頼を受けるんだっけな。



入団試験が終えてから、エヴァンジェリン家が明智水樹の試験合格を祝ってくれた。

正直嬉しい祝杯だったため、苦手だった酒類のワイン酒をたらふく飲んだ。

なので、酒の副作用とも呼ぶべき二日酔いが、青年の脳と目頭を歪める。

ちなみに昨日の記憶はほとんど無い。


ーーーーーあぁ、めんどくさいなぁ。     

  

「ミズキーーー!ミズキミズキミズキミーーズーーーキーー!!」


うるせぇなコイツ。


「ミズキ様、朝ですよ起きてください」


この人もブレねぇな。

眩しい朝日が青年を蝕み、苦しめる。朝が弱い人間にとって、これほど辛いことはない。

頼むからもう一度寝かせてくれ。と願う青年の思いは束の間、アリスの専属メイドにして、エヴァンジェリン家の全メイドを束ねるカトリナの次の発言によって、ぶち壊される。


         

「ミズキ様」



重くのしかかるような声。正直言って寝起きには辛い。

青年は彼女の刺さるような声と視線から逃れるために、被っていた毛布をさらに深く被る。

窓から射し込む日射しすらも遮断するこの防御方法に一切の隙なし。

青年は誇らしげに目を閉じた。


「……………」


無言のカトリナにも臆することなく、青年は殻に閉じ籠るヤドカリのように毛布を固く閉ざす。

その頑固な姿の青年を見て、カトリナは深く重い吐息を落とす。


「アリス様、少し外に出ていてください。起きてくれないミズキ様には、カ・ラ・ダ………でわからせる必要がありますので………」

「……カラダ?」


アリスはカトリナの指示に従い、素直に部屋の外に出ていった。

意味深なカトリナの言い回しに疑問を抱かなかったと言えば嘘になるが、アリスがカトリナに対する信頼は家族以上だった。彼女に任せておけば上手くいく、そう信じてならない。


彼女達の会話を聞いていた青年は気になり毛布の隙間からメイドの様子を静かに覗く。

ーーーー信じられない光景が、そこにはあった。


 


◆   ◆   ◆   ◆   ◆   ◆   ◆   ◆   

                




「ふぁぁぁ~」


午前8時、爽やかな朝、ラネリア大通りで青年は眠そうに大口を開け無邪気にあくびをする。

彼の隣では幼い容姿の少女が一緒の歩幅で歩いている。


「ミズキ、ちゃんと起きてエライね!いいこいいこ~♪」

「あざーっす……」


こんな幼くてお馬鹿な少女に頭を撫でられ、少し屈辱的だ。

だが、朝からそれを恥じる気力もなく。青年は適当な返事を返す。


「そーいえば、カトリナと部屋で何してたの?ちょっと騒がしかったけど」

「子供は知らなくてもいいんだよ」


 真顔で意味深なことを言う青年に、アリスは少し不思議そうに顔を覗き込んできたが、馬鹿なアリスに勘づかれるはずもないのでスルーだ。


 

 しかし気にするべきはこの人通りの少なさだ。

 前の世界では国民は朝から働くのが大半、それが普通だったのだか、対象的にこの世界は朝の方が人気がない。店はほぼ全てが閉まっているし、元気なのは無邪気に追いかけっこをしている子供ぐらいだ。



「………ここ、人通り少ないね♪入団試験の時、ここ通ったけどけっこう賑わってたよ?お祭りわっしょいってカンジ」

「朝は大体こんなもんだよ。王都の人は朝はあまり強くないみたい」

「こうして朝っぱらから働いてるのは僕たち『冒険者』だけなのね」

「うん……でも朝働くほうが気持ちがいいよ?」


朝が弱い国民など、青年が住んでいた日本ではやっていけそうにないな。

言われてみれば先ほどからすれ違う者たちは皆、覇気が無さそう、というか腑抜けたような面を並べていた。

青年からしてみれば気持ちはわからないでもない。どちらかと言うと青年もあちら側だ。

歩く度に頭に響くため、青年は少し顔色が悪そうにふらついてしまうが、アリスはそれを気遣い青年の細身を支える。



「ありがとありがと……お、ついたね♪」

 


青年と少女は足を止め、目の前にはでかい建築物が聳え立つのを確認する。


「ここが『太陽の獅子』(サンシャインウルフ)のギルドホーム……だね?」

「数日前に一回来たよね」


数日前、青年は目が覚めた後、アリスの父親に呼び出され、このギルドホームに連れてこられた。


なのでそのときに一度見ていた。なので物凄い台無し感を味わいつつ青年は大きい扉をその細い腕で押す。

扉は開き、向こうの景色を徐々に写し出す。



「ーーーーーー酒だぁ!酒持ってこい!」


豪快に酒を口に流し込む屈強な冒険者達。

テーブルを囲み、酒を囲み、楽しそうに会話を弾ませる者も居れば、舞台の上で盛代に殴り合いをする者も。喧嘩か、と少しわくわくしながら遠巻きに見ていたのだが、どうやら試合のようだ。この場を盛り上げるためのイベントだろう。


正面奥には巨大なボードが設置されており、ギルドボードとは依頼の紙が貼られているボードらしい。

ゲームでよくある仕様だ。

 


「ギルドっていうから、もっと静かな銀行みたいなところかと思ったよ」

「ぎんこー…?」


聞き慣れない単語に眉にシワを寄せるアリス。青年は自分の失言に気付きなんとなく誤魔化す。

彼女が馬鹿で良かった。こんな簡単に誤魔化されるなんて本当に馬鹿だね。うん。 

クエストボードまで歩き、無数に貼られている紙を眺めるが、いまいちピンと来るものはない。                

「クエストどうしようか……感情的に言えば危険なクエストに行きたい。でも初めてのクエストで無茶は禁物、軽いクエストが理想的」

「………つまりどっち?」


 

この世界に訪れて、初めての【依頼】(クエスト)

この世界に来てから直ぐに未知の怪物と一戦交え、僅かだが実戦経験を得た。

だがRPGの冒険には災難が付き物。何があるかわからない。

悔いのない選択肢を選べる人間こそが、この世の勝ち組……それがアケチミズキの持論だ。

  

「ね、ね、ね、アリスちゃん。僕と一緒に依頼受けてくれないかな?」                

「……え!?」


この世界について詳しくない青年にとって、初めての仕事を一人で行うのは些か不安が浮かぶ。

今、必要なのはこの世界について精通、経験豊富、実力を兼ね備えたうえで信頼の出来る人物。

しかし残念なことに現実は甘いものではない、そこまで都合の良い人間など簡単に見つかるはずもない。


だが最低限まで妥協して、その条件に僅かに引っかかる人物といえば、目の前にいるアリスだ。


ゴブリンから襲われているところを青年から命を救われ、かなりの信頼を得たはず。


青年のその言葉に驚いたかのようにアリスは全身を震わせる。

ビックリした顔でその可愛い瞳をこちらに向けてくる。


「い……いいの!?」

「僕が頼んでるんだよ♪」


アリスは綺麗な目を輝かせ、喜んでいる……だがどこか迷った様子を見せる。


「で…でも……私が任務にいくと……」

「だいじょーぶだいじょーぶ♪さ、クエストボードで依頼探そ♪」


「お待ちしておりました、アケチ様」 

突如、綺麗な音色の声が耳に入り込んできた。

声の主は綺麗な白い髪を揺らし、金色に輝く目をしている。

絶世の美女とはこの人のことを……ん?…


「二人……?」

「えぇ、二人ですが」 

「何か?」


交互に声を出してくる美女二人…アニメで見た白いオペレーターのような服装……。

神秘的な印象…全体的に白い………青年はこの姿に見覚えがある。 

 

「エリナとセレナー!!おはよー!!」

「おはようございます」

「アリス様」 


またも交互に声を出す二人の美女。

青年はその姿が面白くて笑みを溢した。


「ミズキ!!前に言ったレナとロナのお姉さんだよ!!」 

「オペレーターのエリナ・エルニーニです」  

「同じくオペレーターのセレナ・エルニーニです」   


二人は軽くお辞儀をした。

オペレーターという職業がどういうものなのか、

僕にはまったくわからない。今度聞いてみようかな………?


「へぇ…ロナレナ・シスターズの……」 

              

レナ・エルニーニ。

ロナ・エルニーニ。


二人とも、『太陽の獅子』のギルドメンバーである。

二人とも将来が楽しみな美少女っだが、やはり姉達も凄い 

下手したらアリスと同等かもしれない……。


「アケチ様、アリス様、団長がお呼びです」  

「え?」


団長、とは恐らくディヴィット・エヴァンジェリンのことだろう。              

「今、クエスト選ぶとこだったのにぃ…」

明智水樹とアリスは、愚痴りながらも団長室に向った。





ーー団長室ーー 




「おはよございまーす♪団長♪」

「……………」


『太陽の獅子』団長室で陽気な声で包まれた。

ニコニコと笑顔を絶やさない青年とは対照的に、威厳ある風格とその場にいるもの全てを威圧する圧倒的迫力と存在感を放つ男。目の前に座っている『太陽の獅子』(サンシャイン・ウルフ)団長 ディヴィット・エヴァンジェリンである。百獣の王ライオンのような威厳と威圧感…普通ならヒビってしまうだろうが……アケチミズキにはそんなの何ともなかった。


「いやぁ………相変わらずそのお髭可愛いですね♪」

「…………」


へらへらと笑いながら団長の机に手を置き、青年は挑発するような態度で一方で獅子顔と顔を近づける。

一方的に不躾けな行動をとる青年とは対照的に『獅子王』は無言を貫く。

青年は何の反応を見せない団長にがっかりしたように背中を見せ、再びアリスの横に並ぶ。



「アケチ。無礼が過ぎるぞ」

「すみましぇん♪」


青年の嘗めた行動に釘を刺すように言いつける品の良い男。

団長の隣に立つ男の名は『太陽の獅子』副団長 アレックス・アニー。

異例の若さでNo.2にまで上り詰めた優秀な指揮官。魔法系統に精通し多種多様な魔法を扱い、情報処理能力に長けている。陰で『太陽の獅子』を支える若手のホープとして団員からの信頼はかなり厚い。

これが、数日間で青年が手に入れた情報、もとい副団長の印象だ。


「あのパ……団長、今回はどういったご用件で?」

「そのことだが、数日前から進行中の依頼案件にトラブルが起きた。魔獣に襲われたか……いや、その線も薄いだろうな。何かしらの事情により通信手段が途切れてしまったらしい。連絡が一切出来ないが、この仕事は非常に重要視されている。故に現状の彼らの状態の確認、物資の輸送をーーーーー、」


ーーーーー青年は我慢の限界を超え、自らの欲に忠実に、大胆に、そして突然に行動を開始した。

突如青年の姿が消えたと思いきや、団長の目の前まで接近していた。

副団長は持っていた本を開き、何か詠唱を唱えようとしたが、青年の刹那の一瞬には遠く及ばない。

アリスも目で追うことも叶わず、ただ青年が団長の首もとを掴もうとしている風にしか見えなかった。


ーーーーーーだが、青手が届く前に青年の身体は回転し、宙を舞ったと思いきや、直ぐさま元居た位置の扉まで叩きつけられた。背中を打ち付けられ凄い音が鳴ると、青年は苦しそうにむせ、身体から異様な量の蒸気を発していた。


「ーーーーーアケチミズキ!貴様、今のはいったいどういうつもりだ!?」

「いたたた…………今ならヤれると思ったんだけどね~♪」

「え、ちょ、え?なんでミズキが…………」


副団長の血走った目つきにアリスは怯え、隣に座ったまま動かない団長は深いため息をつく。

青年は痛そうに立ち上がると自分の現在の状態を確認し、ある異変が起きていることに気がつく。


全身に纏わりつく蒸気、服は焦げて丸見えになった燃えるように熱く腫れた腕。

気づかない間に、まるで火傷をしたような怪我を負っていることに青年は不思議そうに首を傾けるが、団長の顔を見ればすぐに理解できた。


ーーーーーー団長に攻撃をされた。


「いや、どっちかっつーと僕の方から攻撃したからこれは反撃?oh正当防衛?」

「何をぶつぶつ言っているんだ!!」

「…………駄目だ、今なにが起こってるのかよくわからない」




「君たちをここに呼んだのは、特別依頼を頼むためだ…」

「!」

「特別依頼って……僕、今日が初めてのクエストなんですけど」

「安心しろ……簡単な依頼だ……」

「よし、入ってこい………」

『獅子王』が言葉を放った瞬間ドアが開き、長身の男が団長室に入ってきた。

つり目で派手な赤色の髪、荒々しいヘアースタイル…………

服装も野性味溢れるファッションで、腰には小刀2本…………


「あ!!マルコ・バンビーナちゃん♪」

「うるせぇぇぇぇ!!!!!バンビーナって呼ぶな!!!!!」


そう、この男。

明智水樹に入団試験で試合をして負けた男。

マルコ・バンビーナである。


「で?僕に大負けして泣きべそかいてたマルコちゃんが何でここに?」

青年はニコニコ笑いながら、マルコを挑発する。

「泣いてねぇよ!!!殺すぞ!!!」

マルコは額に血管を浮かせ、青年に怒りをぶつける

「うむ……アリスとミズキだけに行かせるのは…危険だ……」

「何せ、特別依頼はオークの真珠の輸送だからな……」

「!!!!!!!!!!」

オークの真珠

 聞き慣れない単語に、青年は首を傾げる

「オークの真珠って……!!!!…団長…マジすか…!!!」

マルコの顔色がおかしい………。

汗を大量に流し、顔も真っ青だ。アリスも…同じ反応の模様。

「オークの真珠って何ですか?」               

青年の質問にマルコは震える唇を動かし…答えた。


「オ…オークの真珠ってのは…オークの国宝とも呼ばれてるアイテムだ…」

「オークの真珠は…売れば莫大な金が手に入る………」

「オークの真珠を武器製作に使えば…強力な装備が手に入る……

 普段はオークの巣の総本山……オーク神殿に大切に奉られているらしい………

 だけどついこないだ……『太陽の獅子』の幹部達がオークの神殿から

 強奪してきたって聞いてたが…」


「輸送なんて俺達には無理ッスよ!!!」

「あのオークの真珠は…オーク達にとって命より大事なもの…」

「レグリス王国の中は魔物避けの魔法が張られているから大丈夫でも………」

「森に入った瞬間、真珠の魔力を嗅ぎ付けて…50体近くのオークの群れが

 取り返しにくるっすよ!!!!」 


「どうせ……真珠を加工するために……アララギの里に行くんだろ………

 レグリスから遠すぎる…」

         

「……まぁな……」

「俺たちじゃ数時間ももたねぇよ」

「俺はついこないだLv2になったばかりだし………」

「アケチの実力は…まぁ…認める…」


「だがこの女は反対だ!!」

    

「この女といたら、命がいくつあっても足らねぇ!」

そう言って、マルコは少女……アリスを指差す。

「俺は嫌だからな!こんなまーーーー」

「マルコ」

「……君の言いたい事はわかる……」

  

「だが……アリスのサポート能力は必ず役に立つ…」

「………………チッ……」

アリスは申し訳なさそうにしている……

「それに……君たちだけで行かせるとは…言っていない…」


団長は大きな指を引き出しの取っ手に引っ掛け、腕を後ろに引く。

開けられた引き出しから数枚の資料が収納されていた。

その紙を手に取り、前に居る3人に見せるように机の上に提示する。

その薄っぺらい紙には四名の男女が写されていた。

 

「アーノルド・ボートン 職業:盗賊 Lv1」

「トニー・ディーン 職業:魔法剣士 Lv2」

「ビビアナ・ブランコ 職業:魔法使い Lv1」

「アデリーナ・フランク 職業:守護戦士 Lv1 」

「こいつらを同伴させる」


『獅子王』は小さな笑みをこぼした。

その笑みから感じ取れるのは、期待、信頼、重圧、様々なものだった。

十分すぎる……いや必要以上の戦力を与えられ、アリスとマルコの表情は

さっきよりも軟らかなものになっていた。



「じゅっ……十分すよ…!!」

「それに、輸送は近くのクグラ村まででいい…」

「え!!いいんすか!!?」


「レグリス王国でも最短距離のクグラ村まで運んで」

「あぁ……クグラ村からは…うちの幹部達に任せる…」


「なにか………不満はあるか…?」

               

「いや……ねぇっす……!」

「この依頼……このマルコ様が行き受けてやりますよ!!」


「…二人も異論はないな?」

「僕もいいですよー♪」

「うん、パパ。じゃなくて団長!」

「あぁ、今、ラネリア街の正門前に馬車を手配している。準備は十分。

 他のメンバーは既に正門前で集合している。早急に向かえ……」

              

               

               

                 

                  

                   

                       

             

                            

感想お待ちしております!!!

次回は…私も自信があります!!

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