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男はみんな怪物です。




「あら、駄目だったのぉ?使えないわね、この駄犬。」

優雅に紅茶を飲みながら、侯爵夫人が蔑んだ流し目を送る。

泣きぼくろが色っぽいのだが、罵られた若者のほうは、眉尻を下げて口角を上げるという、なんとも気持ち悪い表情だ。

はぁはぁと荒い息遣いまで聞こえてくるし、駄犬と言われて喜んでるようだ。


今日は侯爵夫人がお茶をしにうちの屋敷に来たので、彼女から使用人として預かった若者をその場に立ち合わせることにした。


「ごめんなさいねぇん。それで、お詫びと言ってはなんだけど、もう一人連れてきたのよ。」


きゃぴ、と音のしそうな笑顔で、手袋に包まれた手を背後に控えていた男に向けた。


これまたきれいな顔立ちをした男で、先に預かっていた若者が天真爛漫なのに比べて、この男は沈着冷静といった感じだ。


「三人で楽しんでもいいし、二人でしてるところを見て楽しむこともできるわよ。どうかしらん?」


侯爵夫人が身を乗り出した。

わたしは「ごめんなさい、わたし、そういう趣味はないのよ。」と答えたが、友人は「ご冗談を。」と手袋に包まれた手をヒラヒラと振った。


「あの伯爵と結婚しておいて、そんなことは言わせませんわよ。あら、でもそうねぇ。伯爵みたいなのがタイプなら、確かにこの子たちは違うわねぇ。」


「そういうことではなくって。」


半眼になったわたしに頓着せず、友人は「そうそう、伯爵と言えば」と話題を変えた。


「あの子について、なにも言われなかった?」


唇に人差し指と中指を触れさせて、キラキラと期待の目で見てくる。

悪魔の尻尾が見えるようだ。


「特に、なにも。」


「そんなはずないじゃない。」


言いなさいよぉ、と促され「どんな男なのか聞かれただけよ。」としぶしぶ答えた。


「それで?あなたはなんて言ったのよ?」


背後に当の若者がいるこの場では答えにくい。

侯爵夫人は引く気がないようだし、この際仕方ないだろう。


「天使の顔に、蛇の舌を持つ若者だって。」


くすくす、と友人は笑う。

わたしは肩をすくめて「事実だわ。男なんてみんなそう。」と言い捨てた。




そして夫に「男が怪物に見えるのか。」と言われたのだった。




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