表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/54

夫の機嫌が悪いです。




夫の機嫌が悪い。


「きみは男という生き物が、怪物かなにかに見えるのかね。」


部屋の真ん中に立つわたしと、その周囲をゆっくりと歩く夫。


「得体がしれないという点では当たっていますわ。」


夫の靴音が、わたしの右斜め後ろで止まった。

気のせいかもしれないが、右耳の裏に、男の熱を感じる。


「男ほど単純なものはない。ほら、きみみたいな綺麗な女性がほほえみ一つ寄越すだけで、すぐ言いなりになってしまう。」


くい、と手で顎を持ち上げられ、首を反らせて夫を見上げた。

添えられた指が、すす、と顎のラインを辿って離れた。


わたしはのどを晒したまま、夫の瞳をのぞきこんだ。


「そのほほえみ、男の浮気に効果はないのかしら。」


「浮気?あぁ、もしかして、あれのことを言っているのか。」


大げさに目を見張る男。わざとらしい。この男の半分は演技だと思っていい。


「僕が医師の真似事をしているのは知っているね?」


首が疲れてきたので顔を正面に戻し、小さく頷いた。

実際は、夫のは真似事というレベルではなく、かなり本格的な治療も行っている。

今回もその関係で王宮に呼ばれていたので、これはしばらくぶりの再会なのだ。


「あれは治療のようなものだ。女性というのは、ここに‥‥。」

男の右手が、わたしの下腹部をそっと指を当てた。

「熱がたまると、感情が爆発し、心が散りぢりになってしまう。だから熱を放出させるための、いわば治療だ。‥‥なにより、手っ取り早く大人しくさせられるしね。」


ポツリとこぼした最後の一言こそ彼の本音だろう。声が真に迫っていた。


下腹部に当てられた指が、するすると上へのぼっていく。

胸の膨らみまで辿りつくと、わざと頂を避け、優しくその周りを一周する。


右耳に、夫がささやく。

「きみも、胸にたまったものがあるみたいだね。僕がみてあげるよ。このままだと、段々と胸が苦しくなるよ。」


夫の左腕が、背後からわたしの身体に回された。


「なんでも言ってごらん。きみのすべてを、僕に見せて。」


大きな右手が、襟の隙間から服の下に忍び込んで、胸の膨らみをじかに包む。女よりも硬い皮膚の感触を、敏感な肌で感じる。


「僕のことは、医者だと思って。先生って呼んでごらん。」


「っせ‥‥ん、せい‥‥。」

不埒な右手がうごめいているせいで、時折息を詰まらせながら「先生」と呼んだ。


「はは、きみに先生と呼ばれるのは気分がいいな。」


くりくり、と頂がこねくり回される。

じっとしていられない衝動に、芋虫のように身体をよじらせる。


「ほら、患者さん。力を抜いて、身を任せて。どんな感じがするか、言って。」




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ