表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/54

親元へ返します。



「この卵、半熟だわ。わたしのゆで卵はちゃんと火を通してって、いつも言ってるじゃない。作り直して。」

「でも‥‥」

使用人の少女の顔に、めんどくさいという感情がよぎった。


わたしもめんどくさい。

作り直して再び持って来るまで、待たなければならないのだから。

それでも、ここで折れてしまえば、きっと次回も半熟の卵がでてくることになるだろう。


少女は助け舟を求めて、わたしと同じテーブルにいる夫に目を向けた。


「あぁ、僕のはこれでいいよ。」


その視線の意味に気付いていながら、夫はにっこりと笑顔で返すのだから、いい性格をしている。


あぁ、どうせ夜に慰めるのだから、別に今ここではそれでいいのか。


使用人の少女がそそくさとキッチンへ下がるのを白けた気持ちで見ていたが、他の使用人の目もあるので姿勢を正した。



朝食を終えると、食卓にひじをついた夫が、なにやらこちらを見つめていた。


結婚前は、まるで同士のように、共犯者めいた視線を交わしたものだ。

彼の視線の意味が、今はもう分からない。


わたしは静かに夫を見つめ返した。


「あまりキツくあたるなよ。働きにくいという声があちこちから出ている。」


キツくあたる?

そう‥‥そう思われているのね。


「あちこちって、それはミナやナナやサビーナのことかしら?」


「そう言うな。皆、長く仕えてくれているものばかりだ。あれらの親にもよくよく頼まれている。」


つまり、わたしは新参者だから、ここのルールに従えということか。



そのうち、ナナが身ごもった。

ナナは親元に返されることになり、屋敷の裏口からひっそりと去っていった。


その後、女の使用人たちの夫への熱は、しばらく下火になった。

しかし少しすると、また元の状態に戻ったのだった。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ