伯爵夫人も大変なんです。
屋敷に迎えられて初めて違和感をもったのは、女の使用人たちの暗い雰囲気だった。
「彼女がわたしの妻になる女性。未来の伯爵夫人だ。今日からここで暮らすから、皆、よく仕えるように。」
明朗な主人と対照的に、まるで葬式のような雰囲気ではないか。
顔色が青かったり、今にも泣きそうな顔をしていたり。
そして、男の使用人たちは、それをごまかすように不自然な笑顔。
ピンときた。
夫は、この女の使用人たちに手を付けている。
しかも、一人や二人ではない。
女の使用人たちは、わたしの言うことをなかなか聞かなかった。
なにかを言いつけても、必ず一度は渋る。
いっそ女たちを解雇しようかとも思ったが、
女の使用人を一斉に入れ替えるのが早いか、それとも自分の結婚相手を取り替えるのが早いか、迷った。
しかし迷っているうちに時間は過ぎ、そのまま伯爵と結婚してしまった。
あるとき、庭の片隅で泣いてうずくまる少女がいた。
わたしが屋敷に来た頃からいる、ブロンド美少女の使用人だ。
その背をさすり慰めているのは、最近入ったばかりのブルネットの使用人。
こちらも美少女。
数日後、背をさすっていたほうのブルネットの美少女が、決然とした表情で夫の部屋をノックしていた。
それを廊下で見かけたわたしは、夫の部屋とL字になっている部屋に入り、窓から室内の様子をうかがった。
夫はなだめるように少女の背に手を添え、なにごとか憤然と言い募る少女を、そのまま続き部屋へ誘導した。
続き部屋は、寝室になっている。
そして2時間後、入室前にあったトゲが嘘のようにとれ、ぽーっと頬を染めた美少女と、したり顔の夫がいた。
アルファポリス様のほうで連載しているお話です。
思いがけず続いたので、こちらにも1日1話くらいで投稿していこうと思います。
※わたしの貴族のイメージですが、映画では、ジェーン・オースティン原作の「プライドと偏見」、シェークスピア原作の「十二夜」、小説では、S&A ゴロンの「アンジェリク」になります。読み込んだわけではないので、あくまでイメージで‥‥。色々と不自然な点があるかと思いますがご容赦くださいませ。