霊歪学園読み切り版 掃除部は社会のゴミも掃除します。
霊歪学園。
ありとあらゆる全国の、ちょっとアレな生徒たちが集う学園に、俺たちの部室はある。
日本海に繋がっている超巨大プール。その隅に浮かんでいる、全長が一キロ以上はありそうな大型の戦艦。
『紅蓮大和』
日本の海に沈んだ戦艦大和。
それを改修し、さらにありとあらゆる武装を積み込んだのが、この戦艦『紅蓮大和』だ。
そして、俺たち掃除部の部室であり、寮であり、掃除部『紅蓮艦隊』の旗艦でもある。
「ふわぁあ、眠い」
俺は、点検中の紅蓮艦隊弐番艦『武蔵』から降りると、校舎に向かうバスに向かい歩く。
霊歪学園。
それ自体が一つの超巨大の母艦であり、処女航海時点で東京ドーム2000個ほどの大きさがあったらしい。
現在はさらに増設されており、もはや、一個の街になっている。
山もあれば川もある。
小さいが遊園地もある。
そして、争いもある。
ビーッ、ビーッ!
アラート音が俺の携帯から鳴り始めた。
『霊歪学園F12区画で暴動発生。掃除部は至急暴徒を鎮圧してください』
ガイドの声を聞きながら、俺は大和に向けて走る。
「おーけー」
大和に乗り込むと、すでにヘリが準備されていた。
「夕艦長。ヘリの準備できました」
部員の一人が準備が出来たことを知らせる。
「ああ。今回は俺にも通知が来た。おそらく暴動の主犯はヤツだ。俺も出る。仮眠しているやつを叩き起こせ!」
「はい!」
「装備はBクラス。いいか? Bクラスだ」
俺のセリフに部員たちが唖然とした。
「Bクラスですか? あれは対テロ用の……」
なぜヤツが暴動を起こしているのに危機感がないんだ?
あ。
そうか。
「サナ副艦長たち上級生徒は期末テストか……」
今居るのは新入部員だけか。
仕方ない。
「装備はCクラスに変更。非番のやつも叩き起こせ。あと大和を動かす。艦砲射撃用意」
「はい!」
部員たちはまだ何か言いたそうだが、視線で黙らせる。
「大和、出航します!」
大和が。
地面が動く。
灰色の表面プレートに対ミサイル用ADCM装甲が擬似展開され、大和が漆黒に変わる。
下部はフロートユニットの力場形成システムの影響により赤く変わった。
「さて、行こうか」
大和が海に出る。
各部センサーは正常。
全火器管制システムオールグリーン。
「F12区画まで十分!」
さて、そろそろ俺も準備するか。
十分後。
俺はヘリでF12区画の上空に居た。
下では風紀委員対一人で小競り合いをしている。
たった一人対風紀委員数十人。
圧倒的な差を、ヤツは簡単に超えてしまう。
俺は拡声器を持ち、叫んだ。
「アリサ生徒会長。暴動をやめなさい! じゃないと俺はあなたを暴徒として、半殺しにします!」
たった一人の暴徒。
アリサはニヤッと笑う。
「出来るものならやってみな。掃除部部長」
俺は拡声器で風紀委員たちに告げた。
「三分後。大和から艦砲射撃を行ないます。逃げてください」
「はい?」
「艦砲射撃?」
「いや。え?」
風紀委員たちは怪訝な顔をした。
だが、遅れてきたであろう風紀委員の一人が、俺の声を聞いて、顔を真っ青にした。
「なにしてる。逃げろ! ヤツは悪逆無道の神無ユウだぞ! あの月を破壊した張本人だ」
全員が硬直する。
そして。
「逃げろー!」
「わたしまだ死にたくないー!」
「いやー!」
………うん。
「え、いや。確かに俺は月を破壊した張本人なんですが。そこまで怯えなくても……」
「「「逃げろー!」」」
風紀委員たちは先を争って逃げ出した。
「さて」
俺はF12区画に降り立った。
「アリサ生徒会長。掃除部部長として説得します。暴動をやめてください」
アリサ生徒会長はしばらく考えこみ、言った。
「えー? だって暴動起きてないよ? 争う相手の風紀委員も居ないし?」
まあ。そうなんだけど。
「アリサ生徒会長。暴動が起きてなんか解決。このパターン。今月で何回目でしたっけ?」
「29回くらいかな?」
「毎日じゃねぇか!?」
持っていた拡声器が粉々になる。
「ちょっと。器物破損だよ? 予算あげないよ?」
「アリサ生徒会長。これからあなたを……」
「?」
「半殺しにさせていただきます」