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とある商品

作者: 堤 伸一

お久しぶりです。リハビリ作品です。

 中堅どころの玩具会社があった。歴史はあるけど大ヒットには恵まれず、それでも何とか頑張ってきた。

 ある日「少子高齢化が進んでいる」と社長が方向性を打ち出し、子供だけでなく、ペットや高齢者をターゲットにした商品を考えていくように命令が下された。


 高齢者向けにはボケ防止になるようなパズルが良いのではないか、いや、孤独化が進んでいるのだから他の人との交流が出来るようなものはどうだろうか、いやいや・・・

 会議は長引くがこれと言った決定打が出ない。高齢者向けとペット向けを別にして会議を進めていたが、一度合同でやってみてはと誰かが言い、長引く会議に嫌気がさしていた皆が賛同した。


 案の定、ペット向けの皆も同じような状態で、また長引く会議の繰り返しかと皆がうんざりし始めた頃、ある社員が「猫ジャラシってあるじゃないですか、なぜヒトジャラシは無いんでしょうね」と冗談半分で発言したとき、室内がしんと静まりかえった。発言者は怒られるかと身構えたが、皆の反応はまるで意表を突かれたときのそれだった。


 ペットでもなく、高齢者でもなく、子供でもなく、ヒトをターゲットにした商品。根本的すぎて誰も考えなかったのだ。かくしてヒトジャラシを作るために様々な研究が始まった。人類史、心理学、様々な学問から音楽、書籍や絵画といった文化的な要素も含んだ広範囲を大胆に切り刻み、組み合わせる。


 そして、とうとう完成した。ヒトジャラシである。最終的にクトゥルフ神話からヒントを得たというそれは、まさに「名状しがたいもの」という表現がピタリと当てはまる商品となった。商品は会社始まって以来の大ヒット商品となり、海外からの引き合いも次々と舞い込んだ。しかし、商品の出荷がばったりと止まってしまった。会社に人がいなくなったのだ。皆、自社製品のヒトジャラシに夢中になり仕事どころではなくなったのだ。


 こういうときにはコピー商品が出回るのだがあまりに特殊なものだったため、コピーのしようがなかったのだ。人々は流通している商品を奪い合うように購入していくが、需要と供給のバランスは破綻していた。商品を得るために殺人も行われるようになり、日本の人口が目に見えて減っていき、社会構造が崩壊するまでに数ヶ月もかからなかった。日本は国際的競争力を失い、地球上から消滅したも同然だった。


 だがしかし、海外に出回った少数の商品があった。そして日本に残された商品を回収するために盗賊たちが上陸していった。世界の崩壊のカウントダウンが始まった。

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