いざ新日本テレビ駐車場へ
意気込んだ三人を乗せた車の前を、一本のバーが遮った。
「あんたら用件は、ADか」
「いやっ僕たちは、今日四時からの『素人お笑い全国各地から集まって芸を見せ合いみんなで笑い合おう』に出演するために来たものですが」
田中が予想通り、というような笑みを浮かべながら答えた。
「おうそうか、ご苦労ご苦労五っ九四十五なんちって。で、あんたらなんちゅうコンビや」
「いや僕たち三人なんでトリオです」
「おうそうかそうか草加煎餅なんちって、すまんすまんスマトラ島なんちって、で名前は」
「三人で『アンテナ』って言う名前でやらせてもらってます。のっぽの僕が『バリ3』、そこのがたいの良い中くらいの背の奴が『なんだか少し不安』、こっちのちっこいのが『ほぼ圏外』です」
「あぁん、誰がちっこいのじゃボケ。あぁん誰が圏外じゃボケっ。んな話聞いてねえぞ」
「御坊君おさえて」
御坊の華奢なからだを山崎の筋骨隆々な腕がおさえると、御坊はしゅんと小さくなった。
「おーうまいね、いい名前だ、いいねいいね胃粘液なんちって。じゃあがんばってよ」
「はい」
田中は満足そうな顔をしながら、あいたバーの下を車でくぐり抜けて行った。
「おいっ田中」
「どうした御坊」
「なんなんだ、そこのちっこいのってのは、『ほぼ圏外』ってのは。馬鹿にしとんのかっ。特にひどいのが『ほぼ圏外』じゃ、なんじゃ『ほぼ』って、わしゃ保母さんか、『ほぼ』つけられるくらいなら『圏外』だけでいいわボケっ」
「いいじゃん御坊君。僕なんか『なんだか少し不安』なんだから。僕のほうが四文字も多いんだから、ね、ね、だから我慢して」
御坊は山崎に止められ、また口をごもごもさせ黙った。
その間にも田中は順調にタイヤをころがしており、車は駐車場の端のあまり人目に着かない所に止められた。




