その後1
兄は手紙を封筒に戻し、執事へ渡す。
「保管しろ。公式記録とは別だ」
「かしこまりました」
ミアが小声で言う。
「優しいのですね」
「優しくはない」
兄は即答する。
「記録を残さなければ、後で“なかったこと”にされる」
制度で守る。
制度で潰す。
それが兄のやり方だ。
私は何も言わない。
ただ、あの不器用でも大切に書かれていた花の絵が頭から離れない。
同刻・王都
青年は報告を受けていた。
「隣国王太子が玲嬢へ再度接触を」
言葉を聞いた瞬間、胸の奥がざわつく。
――関係ない。
そう思う。
思おうとする。
だが。
喉の奥がひりつく。
頭の奥に、いつもの“重さ”が沈む。
命令が落ちてくる。
遠ざけろ。
拒絶しろ。
壊せ。
彼は静かに目を閉じる。
昔から、この声は絶対だった。
疑問は持たなかった。
だが今は。
(……嫌だ。止めてくれ。)
わずかに、反発が生まれる。
隣国の王太子は幼い。
それでも。
玲が別の誰かと並ぶ可能性。
その未来を想像した瞬間。
胸が締めつけられる。
それは命令ではない。
感情だ。
「玲とは距離を取るべきだ」
口が勝手に動く。
側近が頷く。
「ではそのように動きます」
違う。
言いたかったのはそれではない。
…違うんだ。
だが否定の言葉が出ない。
重さが戻る。
霧が思考を覆う。
それでも。
完全ではない。
霧は、以前より薄い。
屋敷・夜
私は兄の書斎を訪れる。
「返事は、本当に出せませんか」
兄はペンを止める。
「お前が書けば、隣国は“脈あり”と受け取る」
「子供の手紙です」
「子供の背後に王がいる」
正しい。
全部、正しい。
でも私があの子の立場なら悲しい。
それに私はあの子に“ありがとう”と伝えたい。伝えられないのは嫌だ。
私は視線を落とす。
「……では、礼状ではなく」
兄が目を細める。
「何だ」
「贈り物への形式的な謝辞だけを。個人ではなく家として」
一瞬の沈黙。
兄は私を見る。
計算している目。
数秒後。
「文面は私が決める」
許可。
完全拒絶ではない。
私は小さく「ふー」と息を吐く。
窓の外は静かだ。
王城は焦り。
隣国は距離を詰める。
兄は壁を作る。
そして。
遠くで。
婚約者が揺れている。
私には分からない。
あの人の、彼の中で何が起きているのか。
ただ。
あの夜の一言だけが残る。
「助けて…」
あれは、個人の声だった、想いだった。
未来は決まっている。
そう言われてる。
けれど。
今、確実に何かがほころび始めている。
静かに。
誰にも見えないところで。
「…はぁ~。難しいな。」(分からなくなる。)
文章の表現は一部 AI を補助として利用しています。アイデア・プロット・設定は全て私のオリジナルによるものです。




