笑いに包まれる空間(ミア視点)
次の瞬間
王と王妃が頭を下げたと思ったら
全力で土下座をした。
「息子を助けて下さってまことにありがとうございます。」
「そして、大変申し訳ない。すまない。我が国の兵が無礼を働いた場面を見た。本当にすまない。」
(……?)
「それと名を、教えていただけるか」
「私からもお願いします。お礼をさせて下さい」
王と王妃声は低く、真剣だった。
まだ膝をついたまま。
王妃も、深く頭を下げている。
王太子は玲の服を握っている。
会場は完全に凍っている。
私は――
固まっていた。
王が。
土下座。
隣国の王が。
頭が追いつかない。
これは夢?
誰か説明して。
口が開かない。
足も動かない。
怒っていたのに。
叫んでいたのに。
今はただ、ぽかんとして頭が真っ白。
「え……」
小さな声が漏れる。
「え?」
あまりの事で二回言った。
さっきまで啖呵切ってた人間の姿じゃない。
お姉さまが一歩前に出る。
一瞬だけ固まったあと。
慌てて。
本気で慌てて。
「や、やめてください!」
声が少し裏返る。
「頭を上げてください!」
王は上げない。
「そなたが我が子を守った」
「国として礼を尽くす」
お姉様の眉がきゅっと寄る。
困っている顔。
本気で困っている顔。
それにいつものクールな感じが
全部吹っ飛んでる。驚き過ぎて。
そして。
何を思ったのか。
次の瞬間。
――お姉様も、膝をついた。
「え?」
今度は会場全体が言った。
お姉様も、土下座。
え……?
どういう事?
王の前で。
「そ、そ、ん、そんな大それたことはしていません!」
真面目な顔。
「た、ま、たまたま近くにいたので!」
王が固まる。
王妃が顔を上げる。
王太子が目を丸くする。
私は。
まだ固まっている。
思考停止。
何これ。
それに言葉を咬みすぎ。
何の儀式?
玲はさらに続ける。
「む、‥むしろ怪我をさせなくてよかったです!」
「血は少し出ましたけど問題ありません!」
報告口調。
冷静。
でもどこかズレている。
王太子が、くすっと笑った。
小さく。
「へんなひと」
その一言で。
王妃の肩が震える。
王が、こらえきれずに息を漏らす。
「……ふっ」
静まり返っていた会場に。
小さな笑いが落ちる。
張り詰めていた糸が、ぷつんと切れる。
私はやっと正気に戻り動く。
「お姉様、立って!」
慌ててお姉様の腕を引く。
「何であなたまで土下座してるの!?」
素が出る。
完全に。
お姉様がきょとんとする。
「え、だって……」
本気で不思議そう。
「謝られているなら、こちらも謝るべきかと」
「何を!?」
王がとうとう笑う。
はっきりと。
「アハハ……ククク‥アハハ…」
「‥面白い」
さっきまで重かった空気が、柔らかくなる。
王妃が涙を拭きながら言う。
「本当に、ありがとうございます」
王太子が玲を見上げる。
「ぼく、あなたすき」
ど直球。
お姉様が少し困った顔で笑う。
「それは光栄です」
私はやっと息を吐く。
震えが戻る。
怖かった。
本当に。
でも今は。
変な空気。
不思議と笑顔になる。
王と王太子と王妃と。
お姉様と。
……そして、私。
なぜか全員、少し笑っている。
さっきまで戦場みたいだったのに。
玲のハンカチは赤く染まったまま。
でもその顔は、穏やか。
私は思った。
この人は。
本当に。
訳が分からない。
湖から‥
でも。
だからこそ。
守られる。
空気が変わった。
完全に。
そして。
その光景を。
遠くから見ていた者がいたことを。
私達は、まだ知らない。
文章の表現は一部 AI を補助として利用しています。アイデア・プロット・設定は全て私のオリジナルによるものです。




