早過ぎた判断(ミア視点)
「もう、見物は終わりましたか?」
お姉様の声は静かだった。
怒鳴らない。
震えない。
ただ、冷たい。
会場がぴたりと止まる。
笑っていた貴族たちが息を呑む。
「怖がっている子を囲んで」
白いハンカチで血を拭きながら言う。
「十分楽しめましたよね?」
視線が、ゆっくりと横に流れる。
一人。
また一人。
誰も目を合わせない。
お姉様は私もゾワとなって少し、恐ろしく想ってしまうほどの圧で一つ一つの行動と言葉に圧がのしかかった。
まるで別人みたいに…
(少し玲、視点↓)
そのとき。
目が、一瞬だけ止まった。
二階席の奥。
暗がり。
誰もいないはずの場所。
ほんの一瞬。
違和感。
何か。
“視線”の残り香みたいなもの。
けれど次の瞬間には消える。
気のせい?
分からない。
私は何も言わない。
ただ、視線を戻し。
「助けなかったことは罪じゃない」
言葉を静かに続ける。
「でも、笑ったことは忘れない」
会場が凍る。
(ミア視点に戻る↓)
その直後。
扉が開き、兵がなだれ込む。
兵の一人が、状況を見て顔色を変える。
血。
割れた瓶。
赤い床。
玲の傷。
そして王太子。
判断が、早すぎた。
「何をした!」
怒鳴り声。
兵士が剣の柄に手がかかる。
「貴様らが殿下を!」
空気が一瞬で張り詰める。
私の中で、何かがぐらりと揺れる。
は?
今、なんと?
「違います」
お姉様が言おうとする。
静かに。
けれど兵は聞かない。
「この女が庇ったふりをして――」
その瞬間。
理性と怒りが、天秤に乗る。
揺れる。
揺れて。
――落ちた。
「黙れ!!」
会場が震える。
自分でも驚くほど大きな声。
兵が一瞬止まる。
私は前に出る。
幼いとか。
可愛いとか。
そんなの全部どうでもいい。
「状況も見ずに怒鳴り散らしてんじゃねぇ!」
息が荒い。
胸が痛い。
でも止まらない。
「この人は、お姉様は!」
お姉様を指さす。
「殿下を庇ったんだよ!」
兵が戸惑う。
「血を流してるのはこっちだろうが!」
涙が滲む。
怒りなのか。
悔しさなのか。
自分でも分からない。
さっきもそうだ貴族達が勝手に決めつけた
今もそうだ‥何で、何で‥…何も
「何も知らないくせに決めつけんな!」
幼い。
感情のまま。
綺麗じゃない。
でも本音。
兵が揺らぐ。
そのとき。
さらに重い足音。
息を切らした声。
「‥どこなの!」
「我が息子は!」
人垣が割れる。
豪奢な装い。
隣国の王と王妃。
恐らく、国会会議を抜け出したのだろう。
顔色が青い。
王太子を見つける。
無事を確認し泣きそうになりながら
「良かった」と安堵した顔をしている。
そして。
視線が、お姉様へと落ちる。
血。
傷。
濡れたドレス。
王妃の顔が、歪む。
王が一歩前へ出る。
(多分察したんだろう)
場が、凍る。
誰も息をしない。
次の瞬間。
文章の表現は一部 AI を補助として利用しています。アイデア・プロット・設定は全て私のオリジナルによるものです。




