平穏の中の微妙なズレ
第二回パーティーが終わってから、
数日が経った。
何事もなかったように、屋敷は静かだ。
朝は訓練、昼は学習、夜は読書。
湖からの生活としては、むしろ順調すぎる。
(……順調、か)
自分で思って、何となく、少しだけ引っかかる。
けれど、その引っかかりに名前をつけるほど、私は暇じゃなかった。
剣を振る。
呼吸を整える。
筋肉の使い方は、だいぶ体に馴染んできた。
「いい動きです」
執事が言う。
いつも通りの声。
いつも通りの距離。
──でも。
(……やっぱり、同じだ)
何が、とは言えない。
けれど、屋敷の使用人たちの“私を見る目”は、大体同じな感じがする。
その中でも3人?くらいは……。
(…考えすぎだな。)
敵意でも、侮蔑でもない。
もっと無機質なもの。
(観察……?)
て、そんな事は気のせいだな。
そう考えて、私は首を小さく振った。
考えすぎだ。
昼過ぎ。
婚約者が屋敷を訪れた。
丁寧で、穏やかで、非の打ち所がない。
それが、彼の印象だ。
「先日のパーティーでは、お疲れ様でした」
「ええ」
普通の会話。
なのに──
「……本当に、問題な」
彼はそう言って、言葉を止めた。
一瞬。
ほんの一瞬、視線が揺れる。
「……いえ、失礼。
問題なく“終わりました”ね」
(……今、言い直した?)
違和感はあった。
でも、それだけだ。
緊張しているのだろう。
社交界は、誰にとっても疲れる。
「次も、きっと──」
彼は言いかけて、口を閉じた。
眉がわずかに寄る。
まるで、喉につかえた何かを、無理に飲み込んだような。
「……楽しみに、しています」
そう言って、微笑んだ。
(……真面目?な人だな)
私はそう結論づけた。
その帰り際。
ミアがぱたぱたと走ってくる。
「お姉さま! 紅茶、飲みます?」
「…. 今から?」
「今です!」
少し強引だ。
けれど、ミアはすぐに照れたように笑う。
「……その、忙しそうでしたから」
(気遣い、か)
テーブルにつく。
ミアは砂糖を入れすぎて、
「しまった」という顔をした。
「……入れすぎた?」
「…ううん。悪くない」
それを聞いて、ほっとしたように笑う。
(……この子は、本当に)
優しい。
「ミア、最近疲れてない?」
何気なく聞いた。
「え?」
「顔色が、少し」
彼女は一瞬だけ、間を置いた。
「……少し、食べ過ぎただけですわ」
そう言って、お腹をさする。
(成長期だしな)
そう思って、深くは追及しなかった。
まさか──
その“少し”が、積み重なっているなんて。
夜。
部屋に戻って、窓の外を見る。
静かな庭。
整えられた景色。
(まるで別の世界みたい。)
ふと、そんな言葉が頭に浮かぶ。
(……気のせいだ)
自嘲するように、私は息を吐いた。
今は、力をつける時期だ。
考えるのは、それからでいい。
そう思って、灯りを消す。
その頃。
廊下の奥で、2人の誰かが小さく言った。
「……少し、抵抗が強いですね」
「ええ。
ですが、問題ありません」
「次は……」
「三回目です」
その会話を、
私は知らない。
文章の表現は一部 AI を補助として利用しています。 アイデア・プロット・設定は全て私のオリジナルによるものです。




