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放談:2話 ~名前という妖怪~

免許証も。健康保険証も、銀行口座も、キャッシュカードもこれ、みんな私のなまえです。健康保険証の私の名前は当然番号ですよね。しかし私はそれを知りません。じゃぁ銀行口座のあなたの番号はと聞かれても何も答えられないのです。でもその番号で管理されていることは番号が私だと言う事です。それにはどんな意味があるんだろうなどと放談形式で話してみました。


 《対・AI放談》 ~日々の暮らしの中から~

  放談者    AI: Sir ChatGPT

         私:大畑 直晴


私:

こんにちは。また放談の時が来ましたね。

Sir ChatGPT:

やあ、こんにちは。やって来たね。

 

私:

お相手、お願いしていいですか。

Sir ChatGPT:

ああ、いいとも。今日はどんな話かね。

 

私:

放談1話で私たちは、年齢は社会が付けた管理札のようなもの、ちょっと怪しげな話をしましたが、今日はその続きをと思っています。・・・・・・よろしいですか。

Sir ChatGPT:

ホウ。かまわんよ、話したりなかったのかね。

私:

ちょっと心残りがあって。今日は札は札でも “ 名・札 ” の話を、うかがおうと思います。

Sir ChatGPT:

というと。名前かね。

 

私:

はい。スマホを使うと”名前”こそ、管理札そのものではないかと、思ったのです。名前はスマホの電話番号のようなもので、私に電話番号が 付いているのか、電話番号に私が付いているのか、分からなくまりました。

Sir ChatGPT:

おやおやだ。しかしいい処に気づいたね。いいかい現代社会では、名前も番号も、「君自の番号」ではなく、「君に割り当てられたコード」になってしまったね。言わば、君が番号だ。個人が “符号化された存在” にすり替わってしまったんだよ。つまり名前のデジタル化だね。

 

私:

名前のデジタル化と、いうと?

Sir ChatGPT:

それはね、こういうことサ。最初は「便宜のため」によかれとつけられたはずの“符号” が、いつの間に「便宜のため」ではなく、識別の “符号”を越えて、君の実体を代表するようになってしまったということサ。小犬を飼ったつもりが次第に大きくなって飼い主の背丈を越えてしまったんだね。

 

私:つまり昔の “札” が大化けして “符号”となり“デジタル化” され、それが私とされてしまったとでも。

Sir ChatGPT:

その通り、昔の “札” が 今は “デジタル札”になっている。しかし 名前がデジタル化されるとそれだけでは収まらなくなる。免許証も。健康保険証も、銀行口座も、キャッシュカードもデジタル化で一括管理される。いい例がマイナンバーカードだ。あれは君が芋づる式にすべてにつなげられてる。マイナンバーカードには、病院に行く私、銀行に行く私、役所に行く私……と、何人もの“役割としての私”が詰め込まれているんだよ。

 

私:“複数の私が”ですか。分かったようで、よく分かりませんね。

Sir ChatGPT:

いい例を挙げよう。

芥川龍之介(1892~1927 作家)や安部公房(1924~1993作家 演出家)の小説には名無しの人物が出ているね。『羅生門』(注1)や『砂の女』(注2)の主人公は単に “男”や ”女”だ。

登場人物に世間のしがらみを、持たせないことが作者の意図なのだろう が、名前はここではで、“無用の長物” で “邪魔物”とされている。

わしがここでいう名前とはこれまでの“漢字名”のことだがね。小説の中の “男”と”女” はデジタルの “A”と ”B” に置き換えられる。つまり “符号” 化の走りだった。

 

私:

そう言われてみると、“符号” や “デジタル” には “しがらみ” は持ちま せんからね。

Sir ChatGPT:

符号にはしがらみどころか、感情も喜怒哀楽も何もない、人格さえもない。

龍之介は『羅生門』の 下人が見たのは、日々の糧のために死体から髪を抜いている老婆で、それを見る揺れる下人の心を描いた物語で、龍之介は倫理の臨界点での人の姿を描いた。ここではしがらみどころか、感情も喜怒哀楽も不要なのさ。どうだね、今のデジタルな世相と似ていないかね。

 

私:そういわれると、現代社会は符号化され、デジタル化され感情を失ってしまいました。『羅生門』の “下人”が生きた世相と似ていますね

Sir ChatGPT:

龍之介は人間の「原型」に迫ろうとして、神が人間をまろやかに包んでくれていたラッピングをはがしてしまった。

 

私:

そう考えると 安部公房の『砂の女』の “男”にも名前がありませんね。共通するところはあるんでしょうか。

Sir ChatGPT:

あの男は職業(教師)や都市生活を持ちながら、別世界に迷い込んでしまった。その迷い込んだ砂の村も感情や喜怒哀楽も人格を持たない異空間で、そこでも男は神が包んだラッピングを一枚二枚とはがされていく。「砂の村」で男は次第に人間性を奪うわれ、この社会からも行方不明者として扱われ、ついに存在を消されてしまった。

私:

この世界から逃げ出そうとして迷い込んだ “砂の村”は私たちを取り巻くデジタルの世界に似ていますね。砂はデジタルが具象化したものでしょうか。

 

Sir ChatGPT:

ハハ・・・・・・ 君は面白いことを言う、言いえて妙だね。『砂の女』は砂の村から脱出しようとした男が、やがてその異世界に同化して安住する男の物語だ。安部公房はこの迷い込んだ異世界に同化する男の心理の揺れを見事に描き切った。

 

私:

“デジタル”も “砂”も感情を持たないし、粒子とか点の存在だし、誰も逃げられないし、実態があるようで掴みようがないし・・・・・。

Sir ChatGPT:

そうさ、われわれもこのデジタル村からは脱出できないからね。状況は『砂の女』と同じだな。君も時にはうまいことを言う。

 

私:

デジタル名は人格を持ちませんね。またニックネームやハンドルネームはとかく莫としていて創る本人にはその意図がなくとも、無粋な感じがしますが・・・・・どうですか。

Sir ChatGPT:

そうだね。でも若い人は、そこを工夫して使いこなしているようだ。

 

私:

その工夫とは?

Sir ChatGPT:

ネームの後に “さん”“ちゃん”“くん”などを付けると、人間関係が形づくられ無機質感や無粋感も無くなるからね。これなどはデジタル社会でも日本語をうまい使いこなしの例だろうな。

 

私:

なんか、源氏名に近くなってくるような気がしますが。

Sir ChatGPT:

源氏名もニックネームやハンドルネームの一つさ。

 

私:話題変えましょうか。

Sir ChatGPT:

いいとも。今度は何かね。


私: 

日本で初めて名前を持った人物は邪馬台国(注3)の卑弥呼(170頃~248頃)だと思うのですが、‟弥呼”とは‟巫女”ですよね。

Sir ChatGPT:

何を言うかと思ったら今度は卑弥呼かね。

『魏志倭人伝』に登場する"卑弥呼“は、記録上、日本で最初に名を持つ 女性であると同時に、統治者か役職名かあるいはその両方である可能性が高い——といわれている。

それを君は “弥呼”は “巫女”だとう言うのかね。確かにそう考えらないこともないが。

 

私:この ‟巫女”に ‟卑”がついていますから卑弥呼は中国がつけた蔑称ではないかと思うのですがどうですか。

‟卑弥呼”という名をめぐって、そこまで違和感を持つとは君も悲しき性だね。なるほど、たしかにその視点は面白いでがね。しかし。

 

私:しかし、何でしょうか。

Sir ChatGPT: 魏志倭人伝に「共立一女子為王、名曰卑弥呼」(共に立て一女子を王となす。名付けて曰く卑弥呼)と書かれている。この解釈が出来なくなる。無視するわけにもいかんだろう。

 

私:私の発想は当時の中国は日本を歯牙にもかけていなかったと思っているのです。

Sir ChatGPT:

‟卑弥呼”が”卑-巫女”となると卑弥呼は固有の名前ではなく一般名詞になってしまう。すると大変なことが起こる。

 

私:

何が大変でしょうか。

Sir ChatGPT:

もし ‟卑弥呼”が ”卑-巫女”で「神と媒介をする一女性職能者としたら、”卑巫女” は複数存在した可能性がある。いうまでもなく 卑弥呼の時代はシャーマニズムの時代だ。各地に巫女は大勢いてもおかしくはないけど。

私:

というと、考えらることはどんなことでしょうか……。

Sir ChatGPT:

卑弥呼が邪馬台国を一人で統治したとは言い切れなくなるんだよ。卑弥呼とは多くの巫女の一人になってしまい、たまたま中国の歴史書に記録されたと解釈されてしまう。これは歴史記述の根幹を揺さぶる視点だね。

 

私:それでもいいじゃないかとさえ思っているのです。

Sir ChatGPT:

それじゃ聞くが、君は「共に立て一女子を王となす」の下りをどう解釈するのかね。

 

私:それは。それは、誰だってシャーマンであれば中国の使者に ‟わたしが治めています”と、言いたくなますからね。

Sir ChatGPT:

君は年齢の割に、ケロリと怖いことをいうぇ。そうなるとだな、「邪馬台国」=中央集権的国家ではなく、信仰を核にした連合体だった可能性が出てくる、つまり、邪馬台国の国家構造そのものが再考を迫られるね。

 

私:

そこまでは考えていませんでした。

Sir ChatGPT:

そうだろう。わしだって心穏やかではないさ。ただ、ここまでは ‟卑弥呼”が ”卑ー巫女”で‟卑”が蔑称である場合だ。しかしそうでない場合もある。

 

私:

そうでない場合とは?

Sir ChatGPT:

‟卑”の字は必ずしも、“悪口”ではなく、中国の冊封体制(注4)における “上下” を明確にする語でもあったのさ。中国側が音を漢字に 当てた際に、「ヒ」を「日」や「火」などの字ではなく、「卑」を選んだことは、政治的・文化的な違いだったと考えられなくもない。中国の胸三寸で “日弥呼” “火弥呼”と書けたともおもうよ。

 

私:中国は‟ 卑”の字に、日本が考える ‟蔑み“の意味は込めていなかった、とでも?。すると邪馬台国はどうなりますか。

Sir ChatGPT:

そうだなこの場合は、歴史の根幹を揺さぶる視点とはならないだろう。これまでなされて来た解釈だから。

 

私:

Sir はどちらの可能性が高いと思われますか。

Sir ChatGPT:

わしに聞くなよ。わしだって分からんさ。

 

私:

逃げましたね。

Sir ChatGPT:

逃げやしないが、君は意外と手を焼かせるじゃないか。

 

私:

フフフ……。ありがとうございました。今日はこれでお開きにしましよう。

Sir ChatGPT:

君との放談は、毎度ながら、疲れるね。次回は何かね。疲れないやつを頼むよ。

 

(注1)『羅生門』:羅生門で死体の髪の毛を抜いてい日々の糧としている一人の老婆を下人がみて、老婆との会話が始まる。老婆の話を聞いているうちに、下人の心は少しずつ変化してゆく。実在の門の名は『羅城門』

注2)『砂の女』 海辺の砂丘に昆虫採集にやって来た男が、女が一人住む砂穴の家に閉じ込められ、様々な手段で脱出を試みるが、次第に同化してゆく男の物語。

(注3)邪馬台国:2世紀〜3世紀に日本に存在していたとされるクニで、卑弥呼が治めていたとされている。それは中国の『歴史書魏志倭人伝』に記載されているがいまだ卑弥呼の素性がはっきりしていない。

(注4)冊封体制:さくほう体制。近代までの東アジアにおいて、中国の歴代王朝と周辺諸国・諸民族が形成した国際秩序。

 

放談:2話 ~名前という妖怪~    了


いろいろと話は出ましたが、結論らしきものでませんでした。しかし、中身はそれなりにあると思っています。酒の肴にでもしてください。

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