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第7話 お茶会の招待状。

チーズ練りこみパンの代わりに頂いた昼食を終え、侯爵家の馬車を出すというジスランちゃんのお母様のごり押しを笑顔でかわし、逃げるように侯爵邸を後にする。


いやあ、これで侯爵家の馬車で女子寮に横付けなどされた暁には…きっと恐ろしい結末が待っているはず。回避できてよかった。


週明けの月曜日、珍しくジスランちゃんが遅刻しないで登校した。


火曜日も、水曜日も…どうした?逆に心配になるよね?

なぜ遅刻しない?


【あんたさ、どうしたの?お当番でもないんだけど?何で遅刻しないわけ?どっか具合悪いの?】


やすやすと話しかけるわけにもいかない。クラスの女子のほとんどは背後に目や耳が付いているみたいだから。もう…先生の話に全集中しようよ?

しかたがないので、ノートに書いて渡してみた。


【そろそろ僕も婚約者を決めるので、ちゃんとしようと思いまして。】


と、返事が来た。なるほど。お母様にぎっちり説教されたのかしら?


【がんばれ!】

【はい。頑張ります。ありがとう。】


あらまあ、心を入れ替えたのかしら。


上級生のお姉さま方はさみしがっていらっしゃるでしょうね。

それとも…その中に、お茶会メンバーがいるのかしら。そうね。ありそう。



*****


学院生活も随分と慣れてきた。

ハンカチのお礼にお菓子を貰った誤解は、時間とともに薄れたようで、私には勉強ばっかりする子、っていう定評が付いた。良かった。


「アリアン、隣の席にジスラン様がいらして、ときめきとか?どきどきとかないの?」

「・・・??」


先日のケンカ事件をばらされる不安によるどきどき、はあるが…お返しにこいつは実は腹黒マザコンなんだ!と叫んでも、誰も信じてくれないだろうしね。私は静か―に生き延びたい。

授業料がお高いので、特待生の地位も固守したいし。色恋なんてな…そりゃ年頃だものあこがれるけど、ジスランちゃんだけは無いな。そもそも《《あの》》お母様の気に入る人なんか要るのかしら?


「なんでもね、ジスラン様のお屋敷で、今度お茶会が開かれるらしくてね。」


・・・やっぱりやるんだ。お母様、やる気満々だったもんね。それにしてもドロテ、情報早いね。


「そこで婚約者を決めるんじゃないかって噂なのよ。」

「へえええ。」

「へええ、って…アリアン…。婚約者のいない女子生徒はみんなドキドキしてその招待状が届くのを夢見てるのよ?」


・・・みんな?私は除外していただきたい。そもそも、公爵家と王族限定なんじゃない?




*****


その日の朝、近頃はほとんど遅刻しなくなったジスランちゃんが、ガサゴソと自分のカバンから封筒を取り出していた。

授業中、そっと私の机の上にあげてきた。

(何?)

ちらりとお隣を見たが、肘をついてぼーっと黒板を見ている。


渡された封筒には確かに私の名前が書きこまれている。

ひっくり返すと…クレール侯爵家の蝋印。ん?


【お茶会のお誘い


7月第一日曜日 11時より

クレール侯爵邸の中庭

デイドレスでお越しください。】


?????


ああ…義理と人情の招待状ね?無理なさらなくてもよろしいのに、お母様。

私は引き立て役にすらなれませんよ?


「・・・はああああっ…。」


小さくため息をついて、その封書を教科書に挟み込む。


あのお母様のことだ、招待するお嬢様方の身分はもちろん、家門同士のつながりやら家族構成や親せきや生まれてからの経歴ぐらい調べてそう。大事な歴史ある侯爵家の跡取り息子だもんね。

お任せしとけば、間違いないんじゃない?高位貴族の結婚なんてそんなもんなんだろうし、あのお母様は本当にジスランちゃんのことを大事にしてそうだし…。


・・・なんなら、新婚旅行とかにも付いて行きそうだわね…。ぷぷっ。


まあ、私には何の関係もない。

あとでお断りの返事を出そう。


緑が濃くなってきたなあ。

夏休みはどうしようかな?








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