第2話 席順。
さて。今日から授業。クラス割は廊下に張り出されていた。
担任の先生が箱を抱えていて、入ってきた生徒に一枚ずつ引かせている。どうも席順らしく、引いた紙を持って、生徒が席に移動している。
アリアンの引いたのは13番。なんか、縁起の悪そうな番号だったが、席を探すと窓際の一番後ろの席だった。
(あら。ラッキー。特等席ね。ド真ん中あたりだったりしたら、周りに気を使って気疲れしそうだもんね。)
教室は2階。窓から朝日が差し込んでいる。中庭の向こうに運動場まで見渡せる、なかなか開放的ないい景色。上級生だろうか、植え込みの陰で逢瀬をしてるのまで見える。春だなあ。風が海風じゃない。なんていうの、緑のにおい。
全員着席、したかに見えたが、アリアンの隣の席だけ空席。
担任の先生はあまり気にしていないようで、授業の進め方についての説明を始めている。
授業が始まって30分ぐらいしてから、ギイッ、と教室のドアが開く。
「先生すみません。お腹が痛くて遅れました。」
「大丈夫か?・・・ああ、ジスラン。空いてる席がお前の席だ。」
お腹が痛くて遅れたらしいジスランちゃんは…私の隣の空席にどかっと座った。
少し襟元がはだけている。
(ん?)
「はい。」
私がこそっとハンカチを差し出すと、思いっきり怪訝そうな顔で睨まれた。
「唇と首元に、口紅がついてるよ。」
こことここよ、と指で指す。
「あ。ありがとう。」
にっこり笑って礼を言ってから、ごしごしと口紅を拭きとっているジスランちゃんをちらりと見る。
お腹が痛かったはずのこの子は…さっき生垣の陰にいた奴か。
(かかわらないようにしよう。うん。)




