第16話 モンスターペアレンツ。(最終話)
「ほう。王室での閨教育はその程度のレベルなんですね?男女二人きりになると、子ができる、と?」
「考えられませんわ。こんなことでこの国を支えて行けるとお思いなんですの?」
(・・・不敬だぞ?)
「うちの息子はどうしてもどうしてもとせがまれて、義理で踊ったダンスの後、王女の手にキスをしただけだと聞きましたが?しかも、それも王女に強請られて。それで?子ができると?手にキスで??いったい誰の子供なんでしょうね?」
「あらまあ、あなた。王室ではそれでできるのかもしれませんわ。ひょっとしたら、妖精かなんかなんじゃない?」
「おお。そうか。恐ろしい話だな。」
クレール侯爵家は王家の姻戚関係にある。まあ、祖父がいとこ同士?
国内の小麦の主要産地。
今日も謁見室ではなく、ティールームだ。国王陛下に今日の今日でよく約束を取り付けたもんだ。
「詫びを頂けないのであれば、今年の小麦は納められませんなあ。税金はお金で払います。もともと卸値より安く納めておりますから。王家に委託されている備蓄用の小麦も…どうなることか。」
「そうですわね。我がクレール家の嫁にした仕打ちを考えれば、甘くはありませんか?あなた?」
(ふ、不敬、って知ってる?)
「しかも、国の模範となるべき王女が婚約者のいる男に言い寄るなど…。うちの嫁が出て行ってしまったら、本当に小麦の流通を止めますぞ?」
「まあ、あなた。甘いですわ。どうでしょう?移送中の税用の小麦が、たまたま燃えたりしてね…。」
「ああ。たまたまな。」
(ふふふっ。って…。ここで笑って大丈夫ですか?父上!!!)
僕とアリアンは、後ろに控えていて…少し震えた。
・・・結局…第3王女を呼び出して、謝罪させることに成功した僕の両親。
もちろん、妊娠していないことも医師を呼んで証明させた。全くの王女の狂言だったと、本人の口から言わせた。
「だって、普通は断らないでしょう?私は王女よ?」
と、開き直った王女をコテンパンにした。国王に頭を下げさせ、慰謝料までぶんどった。
この後、社交界では、
「嫁を溺愛するあまり、国王に食って掛かった怪物のような親。」
と恐れられた。
そんな《《モンスター》》と称された僕の両親は、今は5人もいる孫にメロメロになっている。
家の中はいつも笑い声でいっぱいだ。
「アリアンがいてくれたおかげで、うちの家族はバラバラにならなくて済んだね。」
父は引退して僕の仕事を手伝ってくれているが、その執務室の机の上には、いつかアリアンがお土産に渡した貝殻がまだ飾ってある。
あの後、父と母の間でどんな会話がなされたのかはわからないが、あの夏がなかったら…確かに、家族と呼べるようなものは形作れなかったかもしれない。
僕も…あのままだったら、壊れていたかもね。
「ジス!!ちょっとちょっと!チビ助見ててくれる?ほら、ダメよ!!こらっ!」
チビ助をほいっと渡される。
お風呂上りにパンツ一丁で走り回る息子たちを追い回す僕の妻。変わらないなあ。
侍女と一緒に片っ端から捕まえて、頭を拭いていく。
「まあ、ジス?あなたも?しょうがないわねえ。」
チビ助を拭いたついでに、僕の頭も拭いてもらう。
ごしごししている妻の手を引き寄せて、キスをする。
「な…。」
怒ろうか照れようか迷っているような妻の顔は真っ赤だ。
うふふっ。6人目は近いね。
アリー?お前は覚えていないかもしれないけど…お前が言った通りの家族になったね。




