偽りの立方体Sheet4:エクセルダイス
「イカサマとは穏やかじゃないね」
アキラはそう言いながら、ここに居るのは全員チームである事、口外しないのが鉄則である事を伝えた。
三人組の一人が続ける。
「毎回、会の最初にちょっとしたすごろくをするんです。
夜食に宅配ピザとかデリバリーするんですけど、そのすごろくでビリとブービーになった二人が代金を支払うルールになってます。
でも、そいつは未だかつて支払う側になった事がありません。
すごろくは運ゲーです。全戦負け無しには何かカラクリがあるんじゃないかと疑ってます」
「なるほど、利害関係が発生するのならイカサマをする動機にはなりますね」
薔薇筆が話す横で育美はエルに解説を加える。"イカサマ"とか"ブービー"とかだ。
「でも、すごろくでイカサマって、サイコロかなんかにギミックでも仕掛けてるの?」
アキラが言う。
「いえ、ゲーム全般サイコロの代わりにエクセルを使ってます。コピーしてきたので見てもらえますか」
そういうと男は鞄からタブレット端末を取り出した。
「こちらのお店のサイトで出題されたクイズがエクセルで出来てたので、もしかしたらこの"エクセルダイス"のイカサマを見抜いてくれるんじゃないかと…」
そう言いながら男はそのファイルを開く。
「このボタンを押すとサイコロの目に対応した画像が表示されます。」
何回か試したが、ランダムで規則性は無いように思われた。
「このファイルを作ったのは、そのイカサマの彼?」
アキラが尋ねる。
「いえ、別の者です。といってもすでに退職してますが…」
「そいつ"森脇"っていう名前じゃなかったか?」
川口が独りのボックス席から声を掛ける。
「いえ、違うと思いますが…何でですか?」
「あ、いや、いい。続けてくれ」
「ボタンを押す場所とか、押すタイミングで決められるとか?たとえば時刻の秒と連動してる、秒の十の位が三の時は三、〇の時は六だとちょうどいい」
薔薇筆が可能性を述べる。
「なるほど…あ、でもボタンを押すのは各プレーヤーそれぞれなんで、その方法だと他人の出目まで操作出来ませんね。ヤツが加わるとトップだった者が何故か悪いマス目に当たり出すなんて事がよくある気がするんです」
"エクセルダイス"をいじってたエルだったが、諦めたように言う。
「マクロで何かやってるハズだけど、ロックかかって見えないなぁ」
「何かこう、そのファイルに外から変化を与える事は出来ない?」
育美が言う。
「変化を与えるとは違うけど、外の変化を取り込む事は出来るよ。例えばここの[データ]から[外部データの取り込み]選択してテキストファイルを指定するとか。」
「それだ、エルさん!」
薔薇筆が糸口を掴んだ様だ。