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「ざまぁ」された王子に仕えるので、自給自足に励みます 中

趣味は創作小説投稿、さんっちです。ジャンルには広く浅く触れることが多いです。


農作はなんとなくネットで見て書きました。実際と違うかもですが、温かい目で見て下さい。



ようやく太陽が顔を出した、肌寒い朝。リブラは1人、屋敷裏の耕作放棄地を訪れていた。土作業のため汚れてもいい格好で、帽子やらタオルやら準備万端で。


確かに、しばらくは生きていける食料も金銭もある。しかし、このままでは野垂れ死んでしまう可能性が高い。リブラは先日この土地を見て、「実家での経験を活かして、食べるものは自分で作ろう!」と奮起したのだ。


それに「ここで農作をする!」と牛車の男に宣言したところ「じゃあこれを使ってみぃ」と、芽出しが終わって加工もされた種芋、さらには肥料をもらった。有り難く頂戴し、早速作業に取りかかる。芋の栽培は、子爵家でもやっていた。記憶頼りなところもあるが、やれるだけやろう!


種芋の量から見て、必要な土地の広さは大体把握した。おそらく、1人でも今日中には終わるはず。


「確か・・・芋は土作りが大切って、お爺ちゃんが言ってたもんね。よぉし」


倉庫から枯れ草を取り払えば、まだまだ頑丈な(くわ)が顔を出す。肥料を混ぜて、ひたすらに土を耕していくリブラ。体力をかなり持って行かれるが、集中すれば疲れを通り越して楽しくなる。こんな朝から広大な土地を1人、ザクザクザクザクと耕していると・・・・・・ふと、視線を感じた。


誰か見てるのかな、と顔を上げると・・・そこには、まだ眠っていると思っていたジータの姿が。


「ふぇえ!?じ、ジータ様・・・!?」


「・・・なんか外が騒がしいなと思って、窓を見たら・・・お前が何か、やってるのが見えて」


こんな早朝に起こすなんて、自分はどれだけ音を出して作業してたんだ!恥ずかしくなりつつも、種芋を貰ったので育ててみようと説明した。初めて見る種芋を、物珍しそうに見るジータ。こんなに土地もありますし、作物を育てましょう!僕は結構農業は得意なんですよ!と、慌てて明るく説明すると・・・ジータは意外な反応を見せる。


「・・・俺も、やってみて良いか?」


「えっ」


「・・・何だか、やってみたくなってさ」


汚れてもいい格好に着替えさせ、農具を持たせる。おそらく王族は、こういった作業と無縁のはず。急に重い農具を持って大丈夫だろうか・・・と不安になったリブラだったが、それは杞憂だった。元々しっかり鍛えていたようで、ジータは鉄製で重い鍬も軽々と持ち上げる。


「わぁ、凄いですジータ様!僕、最初は結構持ち上げるだけでも大変だったのに」


「・・・剣術やってたから、重いモノ持つのは慣れてるのかもな」


リブラは農具の扱い方やら作業やらをジータに教えつつ、2人で土を耕して、種芋を植え付けて、水をやって・・・・・・1日掛かると思っていた作業は、午前中には終わった。近くの木陰に腰掛け、軽い食事を取る。


「手伝っていただきありがとうございます、ジータ様!お陰様で早く終わりました」


「・・・久しぶりに、何かに集中できた」


数時間の作業を経て、ジータの綺麗な顔が汗や砂まみれになっている。それでも数日前と比べて、表情は明るい。会話もしやすくなった気がする。


「今後もまだまだ世話が必要ですし、頑張りましょうね!それにしても、お芋だけだと味気ないですね。作物を育てるのに丁度良い時期ですし、まだまだ土地もありますし、もっと育てましょう!ジータ様、好きなお野菜ってありますか?」


「野菜・・・よりかは、果物。林檎とか」


「林檎ですか~、ジャムにすると美味しいですもんね。そうだ!僕の母方の実家が農家なんです。ここからですと近いですし、今度連絡して、種とか苗木がないか聞いてみますよ!」


達成感に微笑みながら、色々話しかけるリブラ。その様子にジータも微笑み、久しぶりの会話に花を咲かせるのだった。



それからというもの、2人は「なるべく自給自足で頑張るぞ!計画(とリブラが1人呼んでいる)」のため、色々行動していく。


リブラの言ったように、彼の母方の実家から援助として、種や苗木、さらには肥料を送ってもらうようになった。勿論もらってばかりは不公平なので、農作できる土地を渡して共に管理している。唯一存命しているリブラの母方の祖父が時おり屋敷に来ては、世話の仕方を教えてもらいつつ、一緒に作業するようになった。「結構良い土地だなぁ」と、富んだ土壌を羨ましがっていたので、どうせなら移住すれば良いのでは?と提案したところ、前向きに検討しているらしい。


他にも耕作放棄地と共に与えられた森で、使えそうなモノを探したりした。野生化した林檎の樹木も見つけた時、林檎好きなジータはとても喜んでいた。自然のまま実を付けるのを待つ一方で、雑草を抜くなど少しだけ手入れをしている。ちなみに森林内の水辺で川魚を捕り、それを養殖させようとも計画している。


さらには、様々な書物から作物の育て方を学んだりした。農作関連の本を買ったり譲ってもらったりして、ガラガラだった本棚は今やミッチリだ。中には外国語で書かれたモノもあるが、ジータは培った知識で読み込んでいく。外国語が読めないリブラには、頼りになるばかりだ。その様子を見てたジータは「出来ることは増やした方が良い」と、時おり外国語を教えてもらうことになった。


自分たちでやろうと思ったことなら、何でもやっていく。それをモットーに、毎日過ごしている。


ジータはリブラと作業していくごとに、次第に親しみやすくなっていた。最初は途切れていたばかりの会話も、少しずつ弾むようになっている。表情も明るくなり、微笑みが増えているような気がする。


作業も増えてきたので新たに人を雇うと思っていたが、金銭がないからか、仕えているのはいまだリブラだけ。だが、それを不満に思うことはない。むしろジータから強く信頼されているようで、ただただ幸せだった。


(僕、ようやくジータ様のお役に立ててるんだ!ここで上手くやれてて良かった・・・このままずっと、ここに居たいな。これからもずっと、僕だけを見ててほしい・・・なんて、変なこと思っちゃうけど。


だってジータ様、笑っている顔が素敵だもん。それにこんな僕でも、毛嫌いせず認めて受け入れてくれる・・・それだけで嬉しいから)


いやいや、彼はそんな感情を向けられることを望んでいない。あくまで自分は下働き、彼を支えていくのが仕事であるだけ。日に日に強くなっていく思いに、リブラはグッと蓋をするのに精一杯だった。


そんな風に過ごして、あっという間に半年が経った頃。いよいよ最初に植えた作物を収穫する時が来た。リブラの祖父の他にも牛車の男も駆けつけてくれて、かなり騒がしい作業となった。


「ふむ、初めてにしちゃあ上出来だな。あんちゃんに種芋渡して良かったよ」


「本当ですか?ありがとうございます!」


「こんなに立派なモン、幾つか持ってって良いのかい?」


「勿論です、元々牛車さんから貰えた種芋ですし」


そうして話す2人を見ているジータに、リブラの祖父が声をかける。


「いやぁ、リブラが元気そうで良かった。色々ありがとうございます、サジタリアス・ブライティア様」


「や、やめてください。俺はジータ・ライトです」


「・・・実を申しますと、私は不安だったんです。あの子は()()こき使われているのかと思って、最初は身構えていました」


「・・・また、とは?」


リブラの祖父の暗い顔と物言いに、ジータは思わず反応してしまった。


「私は遠い昔、今より栄えていたスヴェン子爵家に借金しまして。その対価で娘が妾になったのです。それ故・・・」


昔話をしようとしていた祖父に、リブラが待ったをかけた。


「こ、ここで辛気くさい話はやめて!今は作業しないと」


「おぉ、スマンな」


そう言って無理矢理話を切り上げたリブラだったが・・・ジータが、不思議そうな表情をしていたのを見逃さなかった。リブラが急に慌てた様子に、戸惑っているのだろうか。隠し事をされたことに、少し傷付いてしまったのだろうか。その後の作業は、そんなことばかり考えてしまった。




作業も無事終えて、祖父や牛車の男が帰った、その日の夜。あとは寝るだけの時間だが、リブラはジータの部屋の前にいた。


やはり、昼間のことがずっと気がかりだった。話を遮り、好きな人に隠し事をしたことが、ずっと後ろめたかった。無闇に部屋に入るなとは言われているが・・・この日、初めて自分から、ジータの部屋の扉を開ける。


今までの過去も、隠し事も、この思いも全て明かすと決心して。

読んでいただきありがとうございます!

楽しんでいただければ幸いです。

「下」は明日夜に投稿する予定です。

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