第6話 苛烈
「スキル 性と生?
あんた頭大丈夫?」
俺の説明を受けた茜の第一声だった。
「俺もそう思う。精神科にも通っている」
「あんた、自分が精神異常だから人を殺しても罪にならないと思ってないでしょうね。だったら私がこの場で・・・」
「まっまままままって、俺はまだそこまで異常じゃない。ちゃんと自分が何をしたかも自覚している。
俺は誓って君のお姉さんを殺していない。アリバイを調べれば分かることだ」
「アリバイなんか調べた、確かにあんたにはアリバイがあるようだ。でもトリックだろ。どうしてもそのトリックが解けないからこうして実力行使に来たんだ」
茜は俺を憎々しげに睨み付けながら言う。
「だいたい君が俺を疑うのは変な目で女性を見ただけなんだろ」
「あんな目で女性を見るお前は絶対に異常者だ」
そんなに端から見ると異常に映っているのかな?
自分で自分が少し信じられなくなる。
「違うって。本当に神様から授かったスキルなんだ」
そんなもの自分も信じていないが、もう信じるしか助かる道は無い。
もう言っていることがむちゃくちゃだが、この娘はお姉さんを失った哀しみを誰かにぶつけないと気が狂うほど追い詰められているんだろう。
俺は生け贄なんかになりたくない。
「んーー」
俺の必死の懇願に茜も少し再考する気になってくれたようだ。押すなら今しか無い。
「確たる証拠も無しに俺を犯人にして断罪すると言うことは、真犯人を野放しにすることになるぞ。
そんなことじゃお姉さんも浮かばれないだろうな。
ぐはっ」
茜は俺の腹に蹴りを入れてきた。
「お前ごときがお姉ちゃんことを語るな。
だが確かにお前の言うことも一理あるな」
ごほっごほ、本当にこの娘は苛烈だ。容赦が無い。
「いいだろう。お前もう直ぐ死ぬ女が分かるんだったな」
「正確には俺が抱くことで死を回避できる女だ」
「どっちでもいいよ。
その女を見付けろ」
「えっ」
「それでもしお前の予言通りになったら信じてやるよ」
正直もう直ぐ死ぬ女を見るのは辛い。どうしても気持ちが割り切れない。
だが助かるためにはそうもいっていられない。
「分かった」
「よし」
考して俺は次の週末この娘と一緒に街を歩くことになったのである。