第5話 冤罪
高校生くらいだろうか? いわゆるJK。
ああ、憧れのJK。
灰色どころか真っ暗な高校生時代を過ごした俺にとっては眩しすぎる。
でも手を出したことはないですよ。2次元で留まって3次元には行ってないです。
だからこんな風にされる覚えはない。覚えは・・・、このJKに何か見覚えがあるような。でも痴漢なんかしたことないし。
JKとの接点なんて無いはず、なのに・・・。
「あなたがお姉ちゃんに付き纏っていたストーカー」
少女は俺を睨み付けながら問い糾してきた。
ストーカー?
毎日必至に働いてくたくたになっている俺にそんな気力は無い。
冤罪だ。
っと訴えたところで、この少女にとっては俺はストーカーなのであろう。
ここは感情的にならないで理知的に論理的に諭していくしかない。
「ストーカーなんかした覚えはない。そもそも君は誰なんだい?」
出来るだけ刺激しないように穏やかに問う。
「西条 綾音の妹の西条 茜よ」
「えっ」
あの西条 綾音の妹道理で見覚えがあるはず、姉妹なら似ていても不思議じゃない。ここで西条 綾音の名前が出てくるとは思わなかった俺のポーカーフェイスの仮面はあっさりと剥がれ落ちた。
「ボロが出たわね。その顔色の変わりよう。あなたがやっぱりお姉ちゃんを殺したストーカーなのね」
確かに俺は綾音さんを見殺しにしたかも知れないがストーカーをした覚えはない。
「いやいやいや、誤解だ。
そもそも俺がストーカーをした証拠があるのか?」
俺と綾音さんとの接点はあの時の一回だけ、そもそもどうやって俺に辿り着いた?
「私お姉ちゃんと仲がいいんだ。
お姉ちゃんが話してくれたの、今日電車の中で、気持ち悪い男がまるで死神のような目で此方を見ていたって、それ以来お姉ちゃん少しナーバスになって何かに怯えるようになった。物音とかに凄く敏感になってビクビクしていた」
「それは悪いことをした。
あっ」
しまったつい言ってしまった。
「やっぱりあなたがお姉ちゃんを殺したストーカーね」
茜は椅子に縛られた俺の胸倉をぐいぐいねじり上げてきた。
くっくるしい。
「まってくれ確かに電車で会ったのは俺かも知れないが、その後は見たことも無い。どこに住んでいるか知らないし名前だってニュースで知ったくらいだ」
「確かに、朝の電車を変えてから会うことは無くなったって言っていたけど、どうせその日のうちに後を付けて家を突きとめたんだろ」
かつて女に侮蔑に塗れた目を向けられたことはあるが、こんな憎しみが籠もった目で睨まれたのは初めてだ。
怖い怖い嫌だ。
こんな目を向けられるくらいなら俺は一生女と縁が無くてもいい。
「そんなの憶測に過ぎないし、そもそも警察は何て言っているんだ?」
ストーカー殺人なら当然警察だって犯人を捜しているはず。こんな女子高生が警察を出し抜けるとは思えない。
「警察なんか当てになるか。お姉ちゃんがストーカーの相談に行っても殺されてから来て下さいとけんもほろろに追い返した奴らだぞ」
俺のことは警察に言ってないようだ。
警察を信じらず姉を殺した犯人を許せず、自力で俺を探しだしたというのか?
だがどうやって?
「まっまて、君はどうやって俺を探し出したんだ。誓って俺は綾音さんには一回しか会っていないし近くを彷徨いたこともないんだぞ」
それで話に聞いただけで顔写真もないの俺をどうやって探し出したんだ? いくら執念が会っても不可能だ。
「お姉ちゃんがお前に会ったという電車に毎日乗ったんだよ。
でも毎日何万と人が乗る電車からお前を探し出すなんて不可能かと思った時もあったさ。でもお姉ちゃんの導きかなお姉ちゃんが言ったように、女の人を死神のような顔で見るお前を見付けたんだ。お前お姉ちゃんだけじゃ飽き足らず他の女の人も殺すつもりだなっ」
「はふゅーはふゅ~」
くっくるしい本当にもう息が出来ない。
興奮しすぎたのか茜は遠慮無く力の限り俺の首を締め上げてくる、俺の脳に酸素が行かなくなり思考が白くなっていく。
「簡単には殺さないよ。お前には罪を償って貰うからな」
「がはっはあはあはは」
解放され俺は力の限り酸素を吸い込む。
生きているだけで人生は幸せだ。
この娘は本気で俺を犯人だと信じている。
もうこうなったらどんな目で見られてもいいから正直に全部話そう。
「まっ待ってくれ、話す全てを話すから」