妖精とサンタクロース
今思うとあの教師は新任で、経験も少なく、俺のことは簡単に解決すると思ったのだろう。
周囲に助言を求めなかったか、スルーしたのか、はたまた自分で考えろと一蹴されたか。彼女は我流で問題解決に取り組もうとした。
家庭訪問では俺の親に詳しく質問し、放課後はよく面談が組まれた。
俺の空想の基準がイマイチつかめないのか、彼女はさまざまなアプローチをしてきた。
ある日、学校の取り組みで、道徳の時間に担任が自分が好きな本を読み聞かせ、その内容について話し合うという授業があった。
彼女が選んだサンタのプレゼント工場の話ーーーー幼いころ大好きだった絵本らしいが。それはサンタの正体をほとんどが知っていて、生意気盛りな小学六年生にするには不向きなおとぎ話だった。
妖精さんがプレゼントの組み立てを手伝い、トナカイに乗ってプレゼントを配りに行くというありがちな内容の絵本で、異世界主義者の俺からするとどうでもいい内容だった。
ただ、この日の授業は本について話し合うという授業で、あろうことか彼女の決めた議題はサンタや妖精は「いる・いない」という、新任が六年生にするにはレベルの高いものだった。
そのため彼女は妖精やサンタが「いる」か「いない」かについて踏まえながら生徒に尋ねた。どこまでの空想を信じるかの、データ収集を兼ねてか最初に俺を指名した。
「サンタや妖精さんについてどう思う?」
いくら「彼ら」を信じていないからといって、「そんなものは存在しません。」などというのはためらわれ、「子供達のために頑張る優しい人達だと思いました。」とだけ答えた。
「いる・いない」と明言するのを避けたが、生意気盛りの数人の男子は「いる」だと解釈し、
「おまえサンタまだ信じてるのかよ〜」「小学生かよw」「小学生だろw」と、口々に騒ぎ立てた。
どう返そうか悩んでいると、
「えみちゃんどうしたの?」
俺の近くにいたクラスメイトが小さな声で少し慌てながらすぐ隣のえみに話しかける。
えみは顔をうつむかせながら小さく震えている。
えみ。たしか昔クラスだった時はよく「妖精の絵」を描いていたはずだ。
・・・・もしかして。
しかし異変に気がつかない担任は、
「はいはい、落ち着いてー。それじゃあ今度はまさと君に聞いてみようか。」
と、否定派のクラスメイトに話を聞き始めた。
「そんなのいるわけないじゃん!だってサンタの正体なんて親だろ。今時こんなの信じてる・・・・
彼の言葉が決定打になったか。その後えみが泣き出したことで討論は中断し、グダグダな状態で授業は終了した。
その後、担任は「サンタさんが『いる』という考えも『いない』という考えも人それぞれだからね〜」とカバーしたがクラスのまとめは「いない」となり、「いる」派えみ&「いる」派にされた俺は、やんちゃな級友のいじりのターゲットとなった。
学級のリーダー格や担任が止めても禁止されるとやりたくなるアレでたとえその場は収まっても、放課後や休み時間など目のつかないところでたびたび彼らのからかいは続いた。
俺もいさめようとしたが、「カップルのこと守ってやがるぜ!」と面倒なことになるだけだった。
人の噂は七十五日とは少し違うが、二ヶ月も経つ頃にはそのブームは過ぎ去り、今度は俺の異世界の方へ標的が移っていった。
※サンタの正体、「いる」or「いない」は彼ら個人の感想です。
「人の噂は49日」と勘違いしてました。49だと噂ちゃんタヒんで成仏じゃってるじゃん。




