また逢う日まで
▪️エマ
カレンがゆっくりと落ちていくのを見送る。
徐々に、徐々に、距離が開いていく……
『また、会えるから。きっと会える。だから、元気で……』
私は最後にあの子にまた会うと約束した。またねと言った。
ええ、私は約束は守る主義よ。本当に。
だって、私やりたいことしかやりたくないし。
実際、私の計画が上手く行けばすぐに会えるはず……
『ふぅ……』
息を整えてから、1回だけ指を鳴らす。
すると、勢いよく上がっていた炎の壁が一瞬にして消え去った。
「この、魔導師め……!!」
あっちゃー、少しやりすぎたかな。めっちゃ怒ってる。あっははー……と軽く笑っとこ。
しかし、再度銃撃される事もなく睨み合いが続いた。そして、その傍らの衛兵が無線機で誰かと連絡を取り合ってるように見えた。
「はい、申し訳ありません……被検体の方は取り逃してしまいました。はい、協力者がいたもので……はい、え?本当にいいのですか?
……分かりました。ご命令通りに……では」
「おい、魔導師。私達は、もう一切貴様に危害は加えない」
『あら、急な風の吹き回しね。でも、そう簡単に信じるとでも?』
「……いいだろう。お前達、武装を解除するんだ。身につけている武器も弾薬も全てだ」
衛兵達は身につけていた火器銃器、全てを解除して床に放り投げた。
「我々は魔法が使えん。よって、この一連の動作が貴様に対する我々の誠意の表れである。貴様の力を十分に理解した上での行動だ」
『……なるほど、いいでしょう。あなた達を信じましょう。それで、ご要件は何かしら』
「貴様の身柄の拘束だ。機内で火事を起こした罰だそうだ。それと、今回の逃亡者の件については目を瞑るそうだ」
『へぇ……それはまた寛大な処置ね。いいわ、応じましょう』
その後、言われるがままに拘束され独房に入れられた。部屋の端に置かれていたベッドに寝転ぶ。
「しばらくはそこで大人しくしておくんだ。変な真似をするんじゃないぞ」
衛兵に忠告され素直に頷く。
『ふぅ……やることはやったわ。あとはあの子次第ね……頑張ってね、カレン。待ってるわ』
──こうして、蒼空で起こった一連の事件は幕を閉じた。1人の科学者の助力により、未来へと一歩を踏み出した1人の少女。
その女の子が、自らを取り巻く変わらぬ日常に退屈している1人の平凡な男の子と、運命的な出逢いを果たす事になるのは──少し、先のお話。
to be continued