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太陽と月

作者: いちごみるく

 学校の図書室でいつも”宙”の本を見ている君。

夜の図書室でみかけた君は、まるで夜空に浮かぶ満月のようでとても綺麗だった。

そんな僕には、気がかりなことがある。

どうして君は、いつも生きることを諦めたような悲しそうな表情をしているのだろう。

『あの、本は借りられないんですか?』

いつも読みには来るが、借りたことの無い君。

「あ、あぁ。すみません、借りないです。」

何故だろう。借りるほどの本じゃないのかな。

でも、そうだとしたら、こんなに頻繁には来ないだろう。

 僕は図書委員だから、毎日図書室に居なければならない。だけど、教室よりはマシだ。

静かだし、本が沢山あるし。


 君が、初めて本を借りた。

”宙”の本では無くて、”勉強”の本だった。

 そういえば、もうすぐ期末テストだったな。

 いつも、順位は廊下に大きく貼られる。

僕は普段から10位以内に入っている。君はどうだろう。



 僕は、君の順位を見て見たかった。

名前は知っている、この前借りた時に書いてあった。

普段上位しか見ていなかったから、知らない名前がたくさん連なっていた。

「うわっ、またこんなに下なのかよww」

「”美穂”、ちゃんと勉強してるの?」

”美穂”

確か君は”月乃美穂”だった。

「おっかしーなぁー、勉強したんだけど。」

やっぱり君は人気者だった。

楽しそうに笑っている。僕なんて、特に注目もされない陰の存在。

「あ、図書委員さんだ。」

『え?』

僕の他にも図書委員なんて沢山いるのに、反応してしまった。

「やっぱりー!君はどうせ上の方なんでしょ?笑

私、知ってるんだから。」

『え、?なんで僕のこと。』

あ、やばい。なんか口が勝手に。

「知りたい?じゃあ、私に勉強教えてよ。」

意味がわからない。だけど、

『わ、分かった。』

知りたかった。陰の存在で陽の当たることのない僕のことを知っている理由を。いつも諦めたような表情をしている理由を。

「じゃーねっ。」

君は笑顔で去っていった。



『なんの教科が得意?』

「んー、”そら”かなぁ。」

『え?』

「私は”そら”が得意だよ。驚いた?凄い??」

『い、いや。”宙”は教科じゃないよ。理科っていうの。』

「へー、”宙”の事だったら君よりも知ってるもん。」

『いつも、見てるよね。”宙”の本。』

「え、君。私の事いつも見てるの?変態じゃん。」

『そうかもね。でも、僕は変態じゃない。』

「何言ってるのかよくわかんない。」

話が進まない。これじゃダメだ。

『じゃあ、なんの教科が苦手?』

「”宙”以外全部。あ、体育はいける。」

『なんで体育はできるの?』

「んー、頭を働かせなくていいから?」

『ふふっ笑どうして疑問形なの?』

あー、笑っちゃった。失礼なことしたな。

「君、笑ったら太陽みたいだね。」

『え、太陽?』

「うん、太陽。」

『じゃあ、君は月だね。』

「月かぁ。」

『うん、綺麗だよね。月。』

「ちょっとショックだな。」

『え、どうして?』

「授業で習わなかった?月ってさ、照らされないと輝けないんだよ。」

『あ。』

「月のことをなんにも知らない男どもが私のことを«月のように美しいお嬢さん»っていうの。マジで虫酸が走る。」

『ごめん。』

「いいよ、別に。

私ね、月なんて嫌い。」

『自ら光ることが出来ないから?』

「そうだけどちょっと違う。

月は光れないんじゃなくて、光りたくないんじゃないかな、って思うんだ。」

「地球に隠れてるけど無理やり光らされてるって言うのかな。」

『そうだね。じゃあ僕は太陽が嫌いだ。』

『月を無理やり光らせてしまう太陽なんて、僕は嫌い。』


 そう言って2人で笑いあった。

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