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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

今日、私は

作者: 小花

思いつきで書いたものの、書き上げたいがために、走り書きみたいになってしまいました。

そのため、後半は簡潔に書いてしまいました。

申し訳ありません。

それでも大丈夫な方だけ、読んでいただけたら嬉しいです。





薄暗い部屋の中、照らすは窓から差し込む月明かり。


慣れ親しんだこの部屋で、私は何度泣いただろう?


ーーーでも、それも、今日で終わり。












幼き頃のあの日、全ての始まりはそこから。

王妃様主催のお茶会に母に連れられ参加した。

私と同じように親に連れられた子供達が遊んでいるその輪へ、「一緒に遊んでらっしゃい」と母から言われ手を離された。


頑張って自分から遊ぼうと声を掛け、輪の中へ入れてもらったものの、私は人見知りで馴染めず、輪からそっと離れ、お茶会が終わるまでどこかで静かに隠れていようと散策し始めたのだ。




しかし、知りもしない庭園で散策など迷子になるに決まっている。案の定迷子になった。ここがどこかも分からない、来た道を戻ろうにも似たような景色ばかりで、正しいのか分からない。


もう母に会えないのか?という不安から、庭園の大きな木の下で、私はしゃがみこんで泣いてしまったのだ。





そんなに泣く時間は長くはなかったと思う。

「おい、なぜ泣いているのだ。」と声を掛けられたから。




涙をぽろぽろ零しながら、伏せていた顔をあげれば、

はちみつとキラキラ輝く星を混ぜたような瞳と髪を持つ、少し不機嫌そうな顔の同じ歳ぐらいの男の子がいたのだ。




ピタリと、出ていた涙が止まる。

私はこの時、花が咲き乱れる庭園で、風に吹かれひらひらと舞う花びらを背に立つこの男の子のあまりの綺麗さに、目を奪われてしまったのです。



私と彼しかこの世界に居ないかのような錯覚すらも感じてしまうその感覚を、もう少し私が大きかったら、一目見て恋に落ちたのだと分かるのだけれど、幼い私にはそれが何だったのか理解出来ずに居ました。




何も話さない私に困ったのか、彼なりに考え、子供がいるのは王妃様のお茶会だろうと、「私も今からそちらに行くのだ、ついてこい」と、手を引かれ、無事にお茶会に戻り、そして彼が殿下だと知った。



母に心配され叱られながら、私は彼からずっと目が離せずに、その日のお茶会はずっと彼だけを見ていました。





これが私と彼の初めての出会いで、そしてこの恋の始まりでした。







あの日から私は彼のことしか考えられず、どうしたらまた会えるのだろう…?と頭を悩ませ、母に相談をした。



母は私の話をちゃんと聞いてくれ、優しくでもどこか悲しそうに答えてくれたました。



「殿下のお嫁さんになれば会うことも出来るし、大人になったら、ママとパパのようにずっと一緒に暮らせるわ。でもね、お嫁さんになることは、とても大変な事なの。頑張れるかしら?」




お嫁さんになることは、将来王妃としてこの国を支えていかなければいけないこと、その為には今まで以上に勉強もマナーも全てにおいて全力で頑張らないといけないことを、幼いながらに理解していました。





「…あの方のお傍に居られるのなら、私は頑張ってお嫁さんになってみせます」




私の返事を聞いた母はすぐに父に相談してくれ、父は王家に婚約の打診をしに行きました。

間を置かずに陛下からお許しがあり、晴れて私は彼の婚約者になれたのです。




それからの日々は、想像以上に過酷なものでした。

それでも頑張ってこれたのは、彼が居たからです。




婚約者として、彼に会った日。

彼は私の事を覚えていました。それだけで嬉しくて舞い上がってしまった事をよく覚えています。



それからは必ず月に一度、顔を合わせることを約束し、最初はどこかぎこちなかった私たちも、幾度と季節を共にすごし、お互いを励まし合い、時には国の将来について語り、泣いたり笑ったりと…そこには確かに手を取り合い支え合っていた私達がいたのです。




12歳の時、誰にもバレないように初めて彼とキスをしました。嬉しくて泣いてしまいそうになりながら、もうこの時には彼に向ける感情が恋だと自覚していました。

チラリっと彼を見れば、恥ずかしそうに横を向いていました。目が離せずに見つめていれば彼も気付き、私を見つめてくれました。でも私は知っているのです。その目に、私への好意はなく、誰かを重ねていることを。




15歳の時、彼が真面目な顔をして、「本当に俺と結婚して後悔しないか?」と聞いてきたのです。

一緒にこの国を支えて欲しいと、パートナーにするのなら私以外考えられないこと、でも私を人として好いてはいるが、私を愛せるかどうかは分からないとも。それでもよければ俺のそばにいてくれと。



なんて優しく狡い人なのでしょうか。私の気持ちには答えられないけれど、そばにいてほしいだなんて。想い人がいることも隠すのですね。でもいまさら私も彼を手放せないのです。どんな形でもそばにいれるのなら…「私はずっとあなたのそばにいます。愛されなくとも」





彼が本当は誰が好きなのかはもう分かっていたのです。

身分の違いから、結ばれないことも。

将来私が王妃になったら、側妃として彼女を嫁がせたいと彼が願うことも。

その時までに、彼に愛してもらえなければ仕方ないと。

彼が望むままにと、決めていたのに。






あれから3年が経ち、もうすぐ学園の卒業式。

その卒業式の後にするパーティーにて、彼との婚約が発表されるはずでした。




彼との月に一度のお茶会。




彼が似合ってると言ってくれたワンピースを着て、彼が好きだと言ってくれたヘアスタイルを崩れていないか気にしながら、彼が贈ってくれたアクセサリーを身につけて、彼の好きな紅茶とスイーツを用意して待つ。





扉からノックの音がする。出迎えれば人払いをしたようで、申し訳なさそうな辛そうな表情の彼だけが。



部屋に招き入れ、扉を閉めても動かない彼。


嫌な予感がする。

チクリチクリと胸の辺りが騒ぎ出す。

気のせいよね?何も言わないで。






ーーーそれでも彼は話はじめはます。


「申し訳ない、婚約破棄してほしい」



そこから私の返答を待たず、彼の懺悔が始まりました。


幼き頃、私と出逢ったお茶会で、彼もまた身分の違う女の子に恋に落ちていたこと。

会うことも滅多になく、身分の違いから叶わないと諦めていたら、学園の中等部で再会してしまったと。

それでも想いに蓋をして、私だけを愛そうと努力をしていた……のだけれど先日、王家に彼女が聖女としての力が目覚めたとの報告が入り、聖女ならば、身分の差があっても結婚ができる、だから…婚約破棄をして欲しい。


「自分勝手なのも分かってる。でももう諦めきれないんだ、彼女が好きで愛してやまないんだよ…」


辛そうに泣き出しそうに顔を歪めて話す彼、

耐えきれず私はそばにより、抱きしめたのでした。



「…あなたがそう望むなら、婚約破棄致しましょう。」



抱きしめながら、耳元で答えれば、彼はごめん、ごめんと何度も繰り返し言いながら、私を抱き締め返してくれました。


それが初めて彼に抱きしめてもらえた日でした。






それから我が家と王家にて婚約破棄を認め、新たに彼と彼女の婚約が決まり、卒業パーティーにて聖女の誕生と共に皆に伝えられた。



私はあの日から一度も部屋の外に出れないでいる。

あの日から、私の世界から色と音が消えた。

駆け付けた医者に診てもらえば、精神的なものからくるもので、治療法はないと診断された。

ただ傷が癒えるまで待つしかないと言われ、両親は泣いていた。……ごめんなさい。






私は愛してくれなくても、ただそばにいれればよかった。

だから、諦めの悪い私は、待ったのです。

ずっと、壊れた世界で。




彼が私を側妃として、そばにおいてくれないかと毎日願っていたのです。





でも今日彼が彼女と結婚した。

そして神に誓ったのです。

「生涯、彼女以外愛さずそばに誰もおかない」と。





私の壊れた世界が、全て消えた瞬間でした。






薄暗い部屋の中、照らすのは窓から差し込む月明かりだけ。



手に持った毒薬を、私は飲み干す。


思い出も想いも全て持っていく。



薬が効き始めた。

痛い、イタイ、いたい。

苦しい、クルシイ、くるしい。



薄れていく意識の中、最期に私が思うのは。




私は彼を本当に愛していたの。

そばにいれないのなら、

今日、私は死ぬことにしたわ。








最後まで読んで頂き、ありがとうございました。

誤字脱字や、矛盾等ありましたら申し訳ありません。


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― 新着の感想 ―
[一言] 主人公が死んだ後にざまぁ展開だと思ってましたが、、残念です( ;´・ω・`)
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