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 今日最後です。

 原初。

 

 終わりなき永遠、世界を零に還す無であり、究極。

 そして全てを始めたために全てを知る者。

 

 もしくは()

 

 そんな原初が生み出した、時がくれば大樹となり、神意を示すといわれた世界樹の種。手に入れればあらゆる全てを支配できるとまでいわれた伝説上の創造物。神話にだって登場する辺りに、眉唾物だともう何百年も言われている。

 しかしそれは眉唾などではない。世界樹の種は実在する。

 原初は世界樹の種を間違いなく作り出した。その数十個。それは間違いなくこの世界に蒔かれた。しかし()()()()()()()()()

 人類のほとんどが滅びかけたとさえいわれるこれまた神話上の悲劇。

 悪しき神オウルに対抗した原初が起こした二柱の神による大戦争。そんなものが、神だけの話に収まるはずもなく、それは溢れ出た。それこそが大災害。

 結果は原初の勝利、でも原初ですらオウルを殺しきれなくて、地上に封印したらしい。それがこの森。

 

 まぁその大災害の結果として世界樹の種は発芽の機会を失った。しかしその使命を全うせんとした種は、()()()()()宿()()()。当人達も気づかない程に人体に溶け込んだ世界樹の種は、当人らの血に紛れ、子々孫々に受け継がれている。

 突如として現れる異様な何かを持つ者達、それは才能であり、美貌であり、頭脳であったりと、様々な形で受け継がれてきたのだ。

 彼らは継承の使徒と呼ばれ、途絶える事ない血脈に世界樹の種を宿すのだそうだ。

 

 私の役目はその世界樹の種の回収、本当はもっと適任の精霊達が沢山いたんだけど……私達()()()は、大災害に巻き込まれた結果、私を除いて全滅した。


 え? 私が本当に精霊かどうか? ……まぁ疑う気持ちも分かるわ。ほら、これで分かる?

 

 私は原初から与えられた人間としての姿を保つのを止め、本来の精霊としての姿である()()の姿に戻った。

 

 これでいい? そう、ならいいの。精霊なんて今の時代私以外に居ないから疑うのもしょうがないし。

 

 まぁそんな訳で、本当にギリギリ原初に保護された私は、つい最近まで原初の中に居たのよ。

 ……私はたくさんの精霊に守ってもらったおかげで生きているの。原初は大災害の影響で記憶はなくなっているって言ってたわ。実際昔のことはほとんど思い出せない……だから私は何としても役目を果たさないといけないの。私を守ってくれた精霊達のために、そんな私を守ってくれた原初の為に。

 

 いい? あなたは原初に選ばれた世界樹の種を回収する担い手、種の器、私はそのサポート役。そういう風にお互い生み出されたの。あなたが器なのは偶然だって原初は言ってたけどね。

 私はそんなあなたを探す為にあなたを探すのに必要なこの宝石を授かった。

 

 まぁこの森に居るのは原初から教えて貰ってたけど、正確な位置が分からなくなってみたいだし、森の中には邪神オウルの使いっパシリが歩いてるし……あぁ私が川に流されてたのは使いっパシリに襲われて川に飛び込んだのよ。ギリギリだったわ。

 ……オウルの使いっパシリがあんなに活発になってるのは、間違いなくこの森に封印されたオウルが起き出している証拠、もう時間が無いの。

 

 「そういう訳だから……お願い! 協力して!」

 

 私は頭を下げる。唐突すぎる上に眉唾が過ぎる内容がこれでもかと並んだ勧誘に混乱している青年に、全てを理解して協力してくれというのは難しい。しかしここは頷いてもらわないと困る。

 いざとなれば無理矢理でも協力してもらう。

 仄暗い覚悟を決めて、青年からの返事を待つ。長い事待った気もするけど、実際はそんなに経っていないはず。心臓がうるさい。あまり手荒な事はしたくない。自分勝手でごめんなさい。それでも私は……

 

 「……分かった」

 

 「…………ふぇ? いいの?」

 

 意外だった。てっきり意味が分からないと拒絶されるのがオチだと思っていた。

 青年を見上げれば、その顔は眩しい程の決意に満ちていた。

 

 「昔から声が聞こえたんだ。物心着いた時から、この森に居た。昔は誰か居た気もするけど、今はもう一人だ。そんな俺に、ずっと誰かが話しかけて来るんだ。『使命を果たせ』って、もう長い事……今じゃ、この森の廃村に置いてある本を読みながら狩りをして、外の世界に憧れて生きる日々……行ってみたいんだ。この森から出てみたいんだ。

 ……まぁそんな訳だから、お前みたいに大層な目的がある訳じゃないけど、できることなら力になるよ」

 

 「……信じてくれるの?」

 

 「お前は嘘を言ってないよ。俺の勘を信じろ」

 

 「き、危険な旅になるのよ?」

 

 「精霊と一緒ならなんとかなるさ、それに俺だってそれなりに鍛えてるんだぜ?」

 

 そう言って力こぶを作ってみせる青年は、何だか少しだけ頼もしく見えた。

 

 「俺はアインだ! よろしくソフ」

 

 二カリと太陽みたいに笑う彼に、私は眩しくなって目を細めた。

 浅ましい私が心底情けなく思えてくる。

 何だか涙が……

 

 「ちょ、泣いてるのか!? 何で?」

 

 それを見て慌てる彼が、少し可愛く見えて、今度は笑ってしまった。

 彼とならきっと上手くいく。そんな予感があった。

 

 「よろしくアイン! これから頑張っていくわよ!」

 

 「お、おう!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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