【番外編20】『わたしが心で叫んでも、能力者でないので、当然、先生に届くことは、ありません。』
「起立」「礼」「着席」
クラス委員の号令で、数十人が一斉に動くのは、『共トレ』のNPCが編成する部隊のようです。
ホームルームはいつもより、担任の口数が少なく、静かに始まります。女性の担任、自分の言い方が少し、エロい雰囲気があったのを、気にしているか、いつもより、硬い表情や仕草がぎこちないです。
教師用のタブレット端末を、カタンと音を立てながら、教卓の上に落しそうに置きます。明らかに内心の動揺を隠しています。
「ホームルームで話す内容がないから、掃除をします。他のクラスが一生懸命、何かをしているのに、自分たちのクラスだけ遊んでいたら申し訳ないと思うでしょう?」
面白くない朝は、イヤなことが続くモノです。担任が挨拶と出欠と体調不良の生徒がいないか、確認することしかなったんです。
ホームルームの残り時間は、クラス全員で、教室内を掃除することになりました。
まず、教室の前に全ての机を運ばされます。教壇から、先生が生徒全員を見渡せるよう、高くなっているのです。
テレビニュースで法廷に座る、裁判官の席みたいです。
また、先生は生徒より偉い人ですから、教壇に上がるのは失礼です。教壇の上に、生徒は先生の許可なく、物を置かない規則になっています。
「はい、そこの男子、教壇の上に机を置かない」
校長先生も、体育館での入学式で、来賓の皆さまや保護者がいたので、最後はわざわざ、壇上から下に降りてお辞儀をしていました。壁に背中を預けながら、担任の先生が手を鳴らす、そそっかしい男子は、浪前でした。
ソイツは名指しで、クラスみんなの前で叱ってやってください。わたしは、心の声で叫びましたが、超能力者でないので、先生に、当然届きません。
「男子は教壇や壁の掃除。女子は教室の後ろを掃除してください。女子はスカートなので、男子は振り返らないように。分かった?」
女子も男子も体操服に着替えてないのです。担任の先生、深く考えず、掃除を指示したようです。
床は特に汚れていないようですが、わたしは、掃除用具入れから、一番人気のほうきと呼ばれるモノを、取り損ねてしまいました。
床の雑巾掛け担当になっています。です。水バケツで雑巾を絞り、机と机の間を、クラウチングスタートの姿勢を保ちつつ、入ったり来たりします。
他の女子生徒は、スカートの裾を気にして、わたしみたいな、マネはしません。
何十人もいる生徒で、担任の先生に、ガンバッてるわたしの顔を覚えてもらうために目立つ必要があるのです。




