【番外編19】『ホームルーム開始のチャイム音だけ、焦って演奏してるように聞こえたんです。』
わたしは、暇つぶしの姫から、目が合ったと言いがかりをつける可能性がある人扱いされたようで、気分が錘で沈み、その分、心で占める恥ずかしさが軽くなりました。
「俺木が、わざとじゃないって分かってたから、謝らないで」
騒ぎをでかくした張本人の浪前が、アメリカの方みたいなジェスチャーをしています。
肩を竦めながら、両手の透明なお皿を載せてるかのように、上へ向けてます。こちらとしては、早く二人とも消えて欲しいのです。
わたし、この男子生徒二人たちと関係ないのです。特に、浪前は迷惑でしかありません。もう、喋るのも疲れました。
わたしはだるそうに机に突っ伏し、クラス全員に、“わたしは迷惑してます”を、浪前に負けないくらいな、オーバーなジャスチャーで伝えます。
「おい、俺木。僕はどんなときでも、女の味方なんだ」
教室に浪前の、大変に迷惑なセリフが響き渡ってます。びっくりして、頭を上げてしまいました。はっきり言って、浪前オマエ、もう喋るな、喚きたいです。
発言を止めたりしたら、誰が最初に言ったとなるのでしょう。
わたしは『共トレ』で敵に捕まったかのように、口を開かないことにしました。
暇つぶしの姫は、まるで、音楽を目に見えないイヤホンで聴いてるかのようです。教室全面の時間割を読みふけってます。暇つぶし会の男子二人を、透明人間か、全然知らない人のようにスルーしています。
俺木と浪前については、わたしも、今は相手にしないことを、決め込み続けます。
わたしは隣の席に顔だけ巡らせながら、隣で座る女子生徒に、白い歯を目一杯見せつけていました。
「ホームルーム開始のチャイム音だけ、焦って演奏してるように聞こえたりするよねー」
「あ、え? 同じ音にしか聞こえな……、う、うん。思う思う。思うよー」
ナニ言ってるのわたし! 不用意な発言をしてしまいました。わたしはやり場のない怒りと、恥ずかしさを抱えていました。
扉が開きました。担任が教室に、遅刻でなく、職員室でお仕事でもあったのでしょう、やっと、やっと入ってきてくれたのです。
これほど、担任の先生が到着するまで、長く感じたことは、ないでしょう。
「立ってる男子、早く座ってー!」
浪前と俺木は、自分の席にあっさり、戻りました。
『共トレ』で例えるなら、ミッションで一人では倒せない、ラスボスに遭遇したのに、もう一人が、いきなり、ログアウトして、居なくなり、諦めたかのようです。
彼らにとって、自分の席は、ゲームで言うなら、ラスボスの攻撃を確実に受けて、すぐにわざと倒される場所のような空間なのでしょう。
担任の先生が、教壇に立ちました。見た目は、おっとりした女性です。




