【番外編17】『救いを求め、仲良し女子に目が合ったはずなのに、視線をそらさたようです。』
いきなり、背後から、男子生徒の鼓膜を痛めそうなくらいな、声がします。肩越しには、浪前が立っていました。わざわざ自身の席を引き出して、座りかけの俺木を追いかけ、肩に手を置いています。
「ん? 浪前俺がか?」
俺木が通路で、棒立ちになってます。
わたしまで、うっかり、立ち尽くしてしまいました。
注意したのが、イケメン男子なら、ヤッター、と頭の中では、“小さなわたし”がジャンプしていることでしょう。
でも、浪前なので、特別な感情は全くありません。さっき、ぶつかりそうになり、仲良しの女子は近くの席に座っています。
救いを求めるように、首を巡らせました。
目が合ったはずなのに、視線をそらさたようです。仲良し女子、学校指定のタブレット端末を取り出して、授業の準備をしています。指で液晶画面を操作して、逃げの体勢に入っています。
教室に先生がおらず、自分ひとりが犠牲者で解決を迫られる立場なのを、悟りました。
「おい浪前。俺、誰かとぶつかったのか?」
「女子とぶつかっただろう。見てたぞ。俺木、謝れ」
浪前が、俺木わたしと体が触れたあと、俺木に注意するまで、かなり間がありました。
相手が友達の俺木だから、注意できたのが明白です。
もし、相手が強そうな男子生徒や、男女問わず、強く出たら、ヤバそうな人なら、気がつかない振りを、決め込むつもりだったのでしょう。
睨む合う男子の二人の視線は、俺木はやや目が三角形になっていて、浪前は、目玉がキョロキョロ左右に動いています。
例えるなら、わたしが自宅のリビングで、静かに参考書を読んでいるのに、無神経で、遠慮ができない弟が、テレビをつけるようなモノです。
自分がなじり合いの当事者になるのは、イラッとしますが、カンケーない男子同士でなら、面白い状況です。
興味と悪意の入り交じった感情。野次馬根性、いえ、野球観戦で言うなら、対戦チームの選手同士のが、乱闘を始めたときのような気分です。
本音はおくびにも出さず、わたしは、自分の椅子に手をかけながら、静かに座ります。机の上に両肘を突いて、重ねた手にあごを載せます。ポーカーフェイスで、先生が入ってくる教室前部の扉に、視線を固定しました。
「お、おい。俺木、アイツに謝れよ」
アイツ呼ばわりされたのは、しゃくですが、クラス全員が耳を済ませている状況下で、カノジョと呼ばれるより、よっぽどマシです。
浪前の腕が、『共トレ』で物陰に隠れている敵の位置を、味方に知らせるように、わたしに向いてます。




