番外編⑭『洗うの大変ですから、内側はデリケートなのに、硬いのでは困ります。炊飯器の釜は傷つきやすいのです。』
暇つぶしの姫がツッコンで聞いてきます。ブルーチェと商品名を口にしなかったのは、天国の祖母がわたしのメンツを守ってくれたのでしょう。
「うん、ブルーベリー、イチゴ、リンゴ、ミカン、色んなのを作ったな」
ブルーチェは種類が豊富なのです。ブルーチェを作ってくれている、ハイム食品さま。ありがとうございます。
祖父、祖母、わたし、弟の四人分の容器にボウルから、ガラスのカップに目分量で付け分けるとき、最後の一つだけ、量が少なくなったりしました。
そんなときは、祖母が「おばあちゃんが、少ないのを食べておくね」と言ってくれました。
「おばあさまや、おじいさまに料理はどんなのを振舞ったのかしら?」
しつこい。暇つぶしの姫は料理を聞いてきます。インスタントラーメン、インスタントカレー、インスタントラーメンと答えれない。わたしは、炊飯器でお米を炊けます。話の方向を、炊飯器に切り替えました。
「炊飯器でお米炊くのは、簡単だけで、釜を洗うのが大変だよね?」
「うんうん」
暇つぶしの姫は、さぞ、自分が食器洗いに慣れてそうな顔をしています。ボロを出さないよう、わたしは気をつけます。
「釜洗いの前に、釜にお水を入れてしばらく置く。こびりついたお米の破片みたいなのが、取りやすくなる。だけど、釜って、テフロン加工? かなんかで、ゴシゴシ硬いスポンジで擦れないから、柔らかいスポンジで洗っても、ご飯粒の残りが取れなかったりするんだよね」
頷きながらも、暇つぶしの姫は視線が泳いだ気がします。
「スポンジやたわしの硬いので、うっかり、釜を洗って、内側に金属色の傷がついたり、するよねー」
しまった! 暇つぶしの姫は、首を縦にも横にも振りません。自分からミスを自慢する必要など、しないのです。
「ははははっ、僕もある!」
助け舟を出したのは、浪前でしたが、そそっかしい仲間と思われたくなく、感謝する気持ちには、なれません。
浪前には、『共トレ』で攻撃する直前のような、射抜く視線で言葉を遮ります。
「浪前、黙ってて」
わたしは脈拍が高まりながらも、動揺を隠します。焦ってないぞを、アピールするには、わたしが話を続けるべきと判断しました。
炊飯器の釜洗いの話を続けます。
「やっと釜を洗い終わって、洗剤、濯いだら、米粒の残りかすみたいなのが、多く付いてたりしてさ」
「あるある。ゴメン……」
相槌を打ったのは、またもや、浪前です。彼の方向を見ないよう、聞こえてないようにします。わたしは視線を暇つぶしの姫、あごの下あたりに固定します。背の高い友人と横を歩きながら話しているようで、首が疲れてしまいますが、顎を開いてわたしは彼女に語りかけます。
「ホントは洗いなおした方が良いだろうけど、布巾で拭くとき、布巾を折り畳んで、面を変えながら、何度か拭いて、ご飯粒の残り、拭き取ったりして誤魔化すよね」
口の端にわたしは、自分の髪の毛が触れ、しかも抜け毛が、ノド絡んでしまいました。
暇つぶしの姫が、ピンク色の唇の形を、すぼめるように丸くしています。可愛いです。
バレないよう、一本の絡みつく髪の毛を、唇を閉じ、必死に飲み込んでゴックンしているわたしとは対照的でしょう。




