【番外編】⑦『法律を作るときは、未来の受験生が、暗記しやすいよう配慮して欲しいそうです。』
それとなくでなく、うっかり、後半は直球表現に、なってしまいました。浪前のスマホを指先だけで摘み、しかも、落さないよう、気を使っていたせいです。
暇つぶしの姫は、男子の視線を気にしてか、唇の端を少し上げています。顔半分に手をマスク代わりにするようにしてから、わたしに無言で頷きます。言葉で肯定しないので、「私は、言ってない」と、逃げれる安全なポジションです。
「うん、僕も同じ意見」
浪前は、言葉で賛成してくれました。
それより、暇つぶしの姫は、両手で机で体を保持して欲しいです。うちの高校に有利ジャンの部分では、表情を消していました。不同意だったのでしょうか。それか、椅子に座ってる、こんな女子生徒と違って、私は思ったこと口にする子じゃないを、アピールしているかのようです。
浪前は、通販番組で、商品紹介する人の近くのアシスタントさんみたいな熱心さで同意しています。
味方に、会話を振って、その人からも、意見を言わせるべきでしょう。
わたしの意見を否定する人への、クッションに利用します。
「浪前の意見は?」
「うん、そうだな、ヘンだよなー。裏があるな」
「浪前、カネにきたな、じゃなくて……、健全な学校経営をしてくれてる、うちの高校がどうして、フランチの加登さんが、安く料理教室をするのか気になる。だって、参加費が、やけにリーズナブルでしょう。それに、加登さんが場所を貸りるなら、こんな学校の家庭科教室なんかじゃなくて、もっと、別の所があるはず。少しスマホで調べて良い?」
「あ!」
わたしは、浪前の許可を取る前に、うっかり、彼のスマホでネット検索をしていました。片手の指で挟んで持ち上げていたから、視界内に思いきり、スマホがあったからです。
腕を伸ばしながら、顔から数十センチ離れた位置で、垂直になったスマホは、わたしの人差し指の先が液晶の上で動く度、浪前の脂が線を描きます。
俺木が後頭部を掻きながら、わたしに上目遣をしています。
「だから、人のを使うなら許可取れよ。それから、俺の通う高校を、“こんな学校”って言うなよ」
「僕は構わないよ? 自分の学校を謙遜するのはフツーだろ」
浪前は、俺木と対照的でした。しかし、俺木のとっては、赤沢二高より、このわたしへの評価が低いのが歴然です。
言いのめしてやります。
「俺木、わたしは、俺木が通う赤沢二高の生徒なの。在校生である、わたしを悪く言うことは、赤沢二高を悪くいうのと同じ。学校内では構わないけど、外で言うのは好ましくないよ」
優しい高校生のお姉さんが、小学生の坊やを諭してあげるようなモノ。善行をしたあとは、心が充実して爽やかです。
スマホでは、まず、フレンチの加登さんの公式ホームページで、“講演依頼はこちらから”で、所属を調べてみます。
「浪前。加登さんは、来年度開設予定の、えー、大学準備ナントカ所属」
「大学内で、お店出すのかな? おいしい学食になるな。二○○五年に、食育基本法が制定って、赤沢二高、入試の過去門にあったから、覚えちゃったよ。二○○五年、食育基本法。法律の内容は知らなくても、合格したいなら丸暗記だよ。墾田永年私財法みたいに、法律名で大体の内容が想像できるよう、未来の受験生を考えて、しっかり書いてくれって言いたいよね」
浪前が、一部受験生の本音を漏らしているのです。わたしは中立を貫きます。頷いたら、同意と受け取られ、顔を横に振ったら、反対意見表明になりるので、スマホの操作に集中します。




