【番外編】③『女子生徒にとって、男子生徒の友人作りは早い方が勝ちです。』
褒めれば伸びる子、やればできる子みたいです。逆に言えば、褒められなければ、ダルく感じる。勉強をやらなければ、伸びない人、つまり、天才でなければ、タフガイでもない、ありきたりな人です。
やればできる子。モテなくても、高三になり、医学部に合格した途端、周囲に女子が、集まりそうな男子です。
約一か月の校内観察では、三年の先輩で、医学部受験をする男子は、モテる人率高いです。
浪前は、希望大学に不合格なら、慰める女子は、お母さん以外いなさそうです。
「学食でね、列が空いてて、厨房の奥、のぞいたら、ポスターが用意してあったんだ。ポスターは料理教室のポスター。あの有名なテレビに良く出てる人。ほら、加登さん、料理人の加登さんだったんだ。フレンチの。お菓子でも有名な。うちの高校で特別に料理教室を開いてくれるんだって。中学生と高校生に限るぞ。受けれるのは」
主語述語がヘンな浪前語を、わたしは並び替えました。つまり、わが赤沢二高にテレビで、わたしも見たことがある、高名なフレンチシェフの加登さんが、料理教室をしてくれるのでしょう。学校の施設を借りて? 違和感があります。
浪前語では、料理教室に参加するのは、一般人相手なのか、生徒相手なのか分かりません。
俺木がしかめっ面をしながら、チッと舌打ちしています。わたしも、心では、あのなって思っても、はっきり舌打ちするなんて、ヤナ感じです。
「オマエ、何言ってるか分かんねーよ。フレンチの加登がオレらの学校で、本校他校を問わず、高校生限定の料理教室を開催するんだ」
「俺木、説明してくれてありがとう」
「中学が一緒でよ。独特の語りをするから、浪前節と呼ばれてたんだ」
この二人の男子は、思ったことをオープンに相手にぶつけるようです。
暇つぶしの姫は、首を縦にも横にも振らず、無言で頬をやや緩めているだけです。つまり、男子二人の話を肯定も否定もしません。
年長者で高名な加登さんを、呼び捨てにした俺木に注意することが、はばかられる性格の集まりみたいです。
わたしは、違うことを、主張します。
「加登さんだよ。年上には“さん”をつけろ」
「はいはい、じゃあ、年上は様で呼べば満足なんだろう? 加登様だな」
俺木とわたしが言い合いになりそうです。どちらかが、引き下がるか、両方とも引き下がるべきでしょう。
でも、正しいのはわたしです。にこやかに、そして微笑みを意識して俺木を諭します。
「うん! 俺木はこれから、赤沢二高の先生や、先輩も、全員に対して、様付けで呼ぶってことね」
柔らかい音程で注意してやったのに、俺木の目には、怒りの炎が宿ってます。逆ギレしています。歯軋りするわたしの奥歯が、ギリギリ音を立てそうです。
「僕の話し方って、そんなに分かりにくいか?」
一触即発の緊張を破ったのは、浪前の間の抜けた質問です。
「私は、浪前の話、分かりにくって思ったことないよ」
暇つぶしの姫が、視線を上下左右に泳がせながら、何かを取り繕うような、強張った笑顔で応じてます。
グループのイニシアチブを、暇つぶしの姫が取りたいだけなのかな。より、確かめてみたくなります。
暇つぶしの姫は、暑がりなのか、顔の輪郭にうっすら汗が滲んでいます。わたしは、姫に顔を向けて、話を振ることにしました。




