合唱練習でミスれば、担任から叱られても、同級生からは同情されます。
声を出し切り、肺に残っていた僅かな空気が、クラクラし、脳貧血気味のわたしを生かしています。うな垂れながら、テーブルの匂いがする空気を吸い込みます。
わたしが、お嬢さま育ちで、お金持ち、世間知らず、苦労を知らない、などと、ネエネエ先輩に勘違いされては困ります。
父方の祖父母は、わたしに優しく、父は消防署員。母は、元eスポーツ撃ち合いの選手で、今はコーチをしています。
子供の頃から母は口癖のように、「お金がないのよ」と言っていたので、家はフツーの市民です。
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脱衣所前のアコーディオンカーテンが、母によって閉められます。母は洗濯を開始して、すぐ出てきました。
「ごゆっくりどうぞ」
「ありがとうございます」
タイル張りの浴室のタイルが、ネエネエ先輩の声を響かせて、浴室特有の声がします。ネエネエ先輩をおもてなしした、疲れが一気に出て、テーブルに突っ伏します。
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息苦しさで、中学の合唱コンクールを思い出しました。担任が音楽教師だった学年の話です。担任が本気で、校内のクラス対抗合唱コンクールで、優勝を目指したのです。
放課後、教室に生徒全員が居残りで練習をします。音域ごとに分けられ、ハモるように歌いました。歌い出しが音域ごとに違うのです。楽譜も何重奏とやらで、難解でした。音楽が得意な子に、聞いて、ペンで書き込みました。
わたしも並んで立ち、出だしでトチりました。一拍遅れて、口を開いて、歌い出しました。一曲終わって、担任が、睨みながら、わたしを名指し、しました。
「歌い出し間違えた!」
「すみません」
両隣の生徒は、担任の目を盗み、わたしに同情的な視線を送ってました。
練習後、担任から、浴室で練習するよう指示されました。自分の声が聞き取りやすい場所だからです。
わたしは帰宅してすぐ、楽譜を手にして、浴室で歌を歌います。同級生に迷惑かけたくなかったからです。母は、「お風呂場で何してるのとか、不思議がっていました。
翌日も練習でしたが、歌い出しで別の子がミスりました。担任が、昨日はわたしがミスして、と声に出し、イラつきながら、注意してます。わたしまで、怒られてるみたいです。その翌日も、また、出だしミスがある都度、昨日は、一昨日は、とミスした生徒の名前を出されます。
結局、クラスは中学校の校内合唱コンクールで優勝しました。審査員は先生方、お客さんは全校生徒です。全然、嬉しくありませんでした。
別のクラスでは、保健体育の教師が担任でした。学校内の運動関係のイベントで優勝を目指すそうです。
保健体育に比べて、音楽は教師の数が少ないです。保健体育が担任のクラスより、学校行事関係の練習は、楽だったと思います。
でも、国語、理科、数学、英語、社会の先生が担任のクラスを、羨ましかったです。社会人になったら、上司は選べないのです。多人数参加のオンラインゲームで社会人プレイヤーさんから習いました。生徒が先生を選べないようなモノでしょう……多分。
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「ありがとうございました」
ネエネエ先輩の澄んだ声で、中学の思い出から解放されました。しかし、シャワーが短時間過ぎます。制服をしっかり着込んでいます。
ドライヤーを軽くかけ、少し髪は湿り気があり、首からタオルを下げています。まるで、中学で修学旅行先の大浴場で、洗い場で後ろに数人ならんでいて、慌てて体を洗った生徒みたいです。
リビングで席に着くネエネエ先輩の髪を見ながら、母が浴室の方を指差します。
「じゃあ、入ってきて」
「え?」
お母さんは、修学旅行の引率女性教師か。本音は、喉から出ることがありませんでした。
急いでアコーディオンカーテンを閉めて、服を洗濯機に放り込みます。特殊洗濯スイッチをオンにします。背後で行列があるつもりで、シャワーを浴びました。
リンスインシャプーとボディーソープを少量にするのがコツです。浴室からマットに上がれば、急いで頭から下に向って、タオルで拭きます。
体の皮膚に水滴がところどころ残って、少し寒い気もしますが、下着で服を着れば、軽く汗ばんだような感じです。
ドライヤーは省略するか、一分以内にするのが、ベストです。
洗面台に映る私の髪は、くるんとなっていますが、ブラッシングで押さえ込みます。登校途中に雨が降ったようなもの。日常生活でしょっちゅうある、アクシデントを想像すれば、心にゆとりが戻りました。
シャワーと着替え完了です。




