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仲良しの知り合いで、相性合わない人のことを、どうこう言わない主義です。

 わたしと同じギルドで、不良のような、怖いお姉さんは、手持ち無沙汰に壁にもたれています。独りぼっちです。足をクロスさせ、決っています。多分、わたし、誰とも群れず、格好良いって慕っているのでしょう。

 オンラインゲームでは、孤独を楽しむ人は、現実では多くの人と接する生活をして、疲れているのでしょうか。

 怖いお姉さんの中身を考えてて、うっかりじっと見てしまったのです。つけ睫毛のように長い目が、じろっとわたしを睨みました。慌てておじぎです。ぺこぺこして、相手をヨイショしておきます。


「試合最高でした。あえて飛び出してくださった、おかげで勝てました」

じょうちゃん、勝てばいいってことよ」


 口角を吊り上げながら、頬の辺りで内側に跳ねた毛先を指で弾いています。怖いお姉さんは、ギルド戦直前に、ギルド副長になったのです。本人が言うには、同じギルドのメンバーには、手を出さないそうです。

 こういうタイプ、わたし的には、こっちから関らないのが理想です。しかし、ギルド長やネエネエ先輩とは、ゲーム内で仲良しなんです。仲良しの人と仲良し。こういうプレイヤーさんとの距離の置き方は、現実と同じです。

 怖いお姉さんから、お喋りタイプなので、聞き役に徹するだけです。否定せず、聞き流すのです。

 そして、怖いお姉さん不在時でも、ギルド長やネエネエ先輩の前では、わたしが批判めいたことは、一切言わないだけです。

 どうも、怖いお姉さん、現実でも、部活動の部長か、管理職みたいなポジション慣れしてるみたいです。

 わたしの性格を見抜いている気がします。

 突然、母がわたしの腕を掴みました。強引に引き寄せながら、横に立たされます。


「再現ドラマ楽しかったですか?」

「全然でした」


 敬語な母! わたしは咄嗟とっさに正直に敬語で答えました。不自然な母の言動に、合わせることにしました。否定したのは初歩的なミスです。


「全然楽しかったです」


 セリフを多少無理してもつむいで、賢いぞわたし! 新美先生こと、ニーミギルド長は、遠慮がちに片手を上げながらも、大きな声を発します。


「じゃあ、全員で記念撮影をしましょう。いやぁ、お母さまがeスポーツ教室がギルドを作っていて、生徒さんと、対戦申し込んできたとは、赤沢二高あかさわにこうの撃ち合い部顧問として名誉なことです」


 わたしは”無口ならイケメン先生”とニックネームで心で呼んでいます。多人数参加型ゲームで、ベラベラ個人情報、しゃべるな!

 現実で関係ないヤツだったら、即ブロックです。

 しかし、『共トレ』21歳以上サーバー、ブロックしても、二度とゲーム内で関らずに済むわけじゃ、ないんです。

 相性が合わないプレイヤーをブロックする機能については、運営さんも頭を悩ましています。

 コロコロ、ブロック機能は仕様が変わります。

 過去には、荒しと呼ばれる悪質プレイヤーが、出会ったプレイヤー全員をブロックしたことがあります。

 荒しがいる場所、大きなお店だったんですが、多くの人が出入りできなくなったこともあったんです。

 現時点では、誰かプレイヤーを、ブロックをしたら、同じ試合に参加できない仕組みです。

 また、ブロックした人と同じギルドになれません。それから、一緒に試合やダンジョン攻略のパーティーを組まずに済みます。

 しかし、ギルド戦でも、原則として、試合せずに済むのです。例外はギルド対抗トーナメント戦です。緒戦で対戦することはありません。しかし、優勝や三位決定戦は、ブロックしても試合します。

 これを悪用して、前もって街中などで、強いプレイヤーをブロックして、ギルド対抗トーナメント戦の一回戦だけ、勝ち進むギルドもあります。

 一回戦でほかのギルドに勝てても、二回目の試合で、いきなり大惨敗すれば、ブロック機能を悪用したのは、プレイヤー間ではバレバレです。

 強い相手と戦いたくないためにブロックするのは、チート行為として運営さんは禁止しています。

 

 しかし、端的に言えば、運営さんとしても、ブロック機能の範囲について、困っているです。

 ブロック機能を悪用したプレイヤーが、認めない限り、違反認定しづらいからです。

 また、カサカーのように大量の課金をしたプレイヤーは、大事な顧客です。それまでプレイヤーのゲーム内分身を削除し辛いみたいです。

 運営さんは、ブロック機能が何をブロックするのかを、予告なしに変更しています。ブロック機能の細かい変更についても、eスポーツ選手のプロやセミプロ、ヘビーユーザーは、絶えず情報を収集しています。

「いやー、21歳以上サーバーの強豪ギルドが並んで、記念撮影するって、昨日まで想像もしてませんでしたよ。こういのも『共トレ』の楽しさですね。赤沢二高で書道教えているので、課金アイテムで、大きな紙と筆ペンを用意しますから、待っててください。コンソール」


 わたしは、アカサワニコウって何? と首を傾げながら、母の生徒さんに混ざりました。

 うちの学校の通称ですが、知らない振りです。アバターと呼ばれるゲーム内の姿ですが、わたし、顔を変更してないのです!

 顔バレします。無口ならイケメン先生、新美先生も素顔です。大変危険な行為です。

 母の背後に隠れます。地面にアイテムでも落して、探しているかのように、顔を伏せます。


「あなたもこっちきて」


 顔に課金している、ネエネエ先輩も母に手招きされて、そろりそろり、とわたしの後ろ、に引っついてきます。

 顔に課金しても、やはり赤沢二高という、高校名をバラされて、動揺が隠せず、トイレをガマンしている子どものように、そわそわ足を動かしています。

 ネエネエ先輩は、母の配慮に感謝しているのでしょう。ネエネエ先輩は、面と向かって、部活顧問にクレームを入れないタイプなのは、分かりました。

 撃ち合い部では、顧問の新美先生に関しての相談は、ネエネエ先輩でない方に、お願いすることになりそうです。

 

 新美先生は、長テーブルの上に大きな白い紙を広げています。ギルドNPCたちが、我先にと、紙の四隅を手で押さえています。


「それでは、『強豪ギルド対戦記念、俺たち強いんだぞ! これからも舐めるな』と書きます。弱小ギルドどもが、粋がらないようよう、仲の良さを見せつけてやりましょう。抑止力ですよ。はははっ」


 笑ってるんじゃねーよ。わたし素顔だぞ。プレイヤー二十人は超す、記念撮影で、顔出したら危なーだろうが。

 流出して、21歳以上サーバーに高校生でログインしてる、とか、プレイヤーは大目に見ても、ルール違反だろう。

 つくづぐ、新美先生の口は、風船やシャボン玉のように軽いです。

 こんな先生に、受け持ってもらったら、生徒が困ります。わたしの通う、赤沢二高では、芸術系の選択科目については、書道が一番人気です。

 単位が取りやすいからです。

 もし、わたしが書道の授業を受けたとします。もし、書道の教科担当が、新美先生なら、無口を押し通すことにします。

 まあ、おしゃべりしながら、半紙に毛筆で字を書く人は、高校では、少ないでしょう。中学では、書道の授業は、反抗期の一部生徒同士は、雑談する時間でした。

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