表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
48/92

引っ越したせいで、保育園はバス通園になりました。わたしは、親から口止めされたことを、話したりしません。

 保育園時代の友人を、今は覚えていません。むしろ、中学生の頃、保育園の卒業アルバムを見て、え、同じクラスの女子生徒が、わたしと同じ保育園で組も一緒だったんだ! と驚いたくらいです。

 その子も、しっかり、保育園時代のわたしの存在を忘れてました。わたしは少しだけ、気に触りました。保育園のアルバムで名前見た、とか、言うんじゃなかったです。

 そもそも、保育園時代のこと、記憶の奥深くにあるらしく、複数の幼稚園、保育所を選べる場所に住む高校生は、思い出せる人が少数派みたいです。


 保育所から高校まで通学範囲に、それぞれ一か所しかなった地域の人とも、『共トレ』で知り合いました。そういう方は、保育所時代も覚えてるみたいです。

 一番近い自販機まで、自転車で十五分とか、笑ってました。うっかり、わたしが、大変ですね、と言ったら、住めば都さ! と明るかったです。


 話を保育所時代に戻します。母が弟に質問攻めをします。


「バスで通うことになるけど、良い?」

「バス乗りたい!」


 弟がぱっと笑顔になりました。当時、あれなに、と弟から質問されて困っていた母の顔は覚えています。自動車のバスを見てです。母が、バスをどう説明したのか、忘れました。


 今の自宅に引っ越してから、保育園の送迎バスで通園することになりました。両親は、送迎バスのルート近くに自宅を立てたんです。

 引っ越して、初めて、朝、保育園の送迎バスに乗り込みました。送迎バスには、大人は運転手さんと先生が一人乗ってただけです。弟と隣の席に座ります。

 わたしが両手を窓に当てながら、歩道を見下ろしました。窓から外を見たい、ワガママな弟がわたしの膝の上半身を乗せ、身を寄せ合います。思い出せば、悪寒おかんが走ります。今なら、ぶん殴ってるでしょう。

 窓から歩道では母と近所のおばさんが、手を振ってます。高校生の今となっては推論ですが、近所で同じ保育園の子がそこからバスに乗ってたのでしょう。


 バスが途中で何度か止まり、その度に保育園の子たちが乗ってきました。保育園に到着して、一日が終わります。送迎バスが数台あったのですが、バスは順番に乗り込みです。ルートの関係でしょう。待ち時間は、バスを乗り込むのを待つ子たちと、同じ部屋でした。

 帰りのバスに乗ります。バスが停車する度、段々、保育園の子が降りて、バスの中は、人が少なくなって行きました。


「せんせい、あっちのりたい」


 先生に手を上げました。空いている、反対側の窓辺に座ってみたかったのです。先生がバス停車したとき、席が空き、わたしの位置を変えてくれました。

 しかし、弟まで一緒にです。うっとうしい。

 弟が窓辺の良い座席を占拠して、ムッとしました。バスがまた止まりました。弟がわたしに振り返ります。


「おねえちゃん、おねえちゃん。おかあささんいないよ」

「ここでおりるんだよ。せんせいおりまーす!」


 わたしが片腕を耳に当て垂直に上げました。先生がわたしと、弟をバスから、歩道まで誘導してくれます。歩道に降りれば、大人と子どもが沢山います。わたしはバスのドアに向って、ペコンと頭を下げます。


「せんせい、うんてんしゅさん、ありがとうございました。おねえちゃんのマネして」


 きょろきょろ、落ち着きのない弟に、姉としてお手本を行動で見せてあげたのです。


「せんせー、うてんしゅさん、ありがとうございました」


 やっと弟もわたしのマネをして、あいさつができました。バスのステップに立つ先生も、周囲の大人たちも、わたしを偉い子! 弟思いとか、声で褒められ。照れくさかったです。


 バスが走り去りました。大人たちの集団から、母を探したら、透明人間のように、どこにも存在しません。わたしは、怖さで泣だしました。


「おかあさんがいないよー」

 多分ですが、弟が先に叫んでいたんです。泣いているので、つられそうて、涙が出たのでしょう。

 偉い子なので声出して泣くのはガマンです。知らない子と一緒の、知らないおばさんが、両膝に手を置きながら、わたしと目線を合わせます。


「おばさんが、一緒にお母さんを待ってあげるね、心配ないよ」

「うん」


 わたしは経験したことがない事態だったのに、しっかり言葉で応じれました。

 涙でグジュグジュになった弟に、わたしがハンカチを差し出しました。

 だって、よそのおばさんから、ハンカチ借りたら、ゼッタイ、母は洗ってアイロンをしっかりかけて、長いお礼を言って返すからです。

 子連れのおばさんたちが、笑いながら会話をしています。脇道から、安堵のような、申し訳ないような、表情をした母が登場しました。


「おかあさんだー」


 弟が指差してます。わたしと弟の手を握ってくれてた方々は、唇を閉じて、真顔になります。

 今度は、母対ほかの大人たちの会話が始まりました。母は感謝を伝えています。「いえいえ」とか「お互い様ですから」と言う、短いやり取りが終わりました。

 わたしと弟が、母の手を引っ張るように握っていたのは、覚えています。

 母と一緒に、保育園児のわたしと弟が、当時は知らなかった狭い抜け道を、三人で歩いていました。


「お母さん、どうしていなかったの?」


 わたしがバス亭で待つ約束を破った母に、イラ立ちながら、質問しました。


「だって、バスを待ってたら、二人が降りてこないの。バスを見ても、乗ってなかったから、先生に聞いたら『一つ前で降りました。バス戻りましょうか?』って言ってたから、慌てて歩いてきた」


 自宅より、一つ前の停留場所で降りちゃったんです。推論に過ぎませんが、母もバスに一緒に乗ってUターンする方法も、先生から勧められたはずです。

 しかし、母がバスから降りたら目立ちます。つまり、母は自分のミスをほかの保護者に、印象づけなかったのです。引っ越したばかりの、大人としては、賢い判断だったのです。


 走ってこなかったのは、大人からすれば、距離が短いからでしょうか? 

 それとも、前のバス降り場まで、走って、曲がり角で立ち止まり、余裕然としたかったのでしょうか。

 いかにも私は器量が大きいのを誇示しました。

 ママ友たちの人間関係は、中学の部活動のようなものでしょう。

 自身の弱みを、わざわざひけらかさない、強さを母から学びました。

 わたしと弟が、降ろされたのは、自宅直近の保育園バス乗り場から、おおよそ、二百メートル程度の距離です。今、わたしが母の立場なら、抜け道を早歩きして、広い道に出る直前で、堂々と歩きます。


「先生が、バス戻るって、言ってくれたんだけど、沢山、保護者の方ががいたっていうから、どうせ、ほかのお母さんが、二人の面倒見ててくれるって思ったの。外で言っちゃダメだよ」

 子供への口止めは、母のメンツを守るために適切な措置です。

 弟は思慮が足らず、考えずに話してしまう、保育園児だったからです。


「お母さん、どうして、保育園のバス止まる場所にあれ立ってないの」


 わたしは歩きながら、歩道に立っている路線バスの停留所の看板を指差しました。道には、許可がないとモノを置けないのは、知ってました。

 反省を促すため、少し、らしめてやりました。

 母がどう答えたかは、記憶にありません。もしかしたら、その際、母の答えが、公道に設置するには、許可が必要、だったのかもしれません。

 わたしも含めて、人間の記憶など、曖昧あいまいなのです。

 翌日からも、保育園の行き帰りは、バスで送迎です。送迎バスは数台あったのですが、送迎ルートの関係で、帰りに大きな部屋に多くの子が集められ、自分たちが乗るバスが戻って来るまで、待ち時間がありました。

 でも、待ち時間で退屈したことはありません。だって、先生が楽しい紙芝居をしてくれるんです。別の先生は、身振り手振りを交えた一人芝居を、演じてくれました。手品を見えてくれた先生もいました。

 わたしは送迎バスの待ち時間も、バスに乗ってる最中も大好きでした!

 

 保育園児の頃、家は25年ローンで建てて、頭金の一部は、父方の祖父母が出してくれたのを知りました。

 父と母が自宅で、夫婦喧嘩をしてて、「アタマキン」「ニジュウゴネンローン」と、聞こえてしまったのです。

 保育園の教室で同級生に話したら、母から、絶対、言わないよう、誓わされました。鋭い目つきをした母が恐ろしかったので、二度と、頭金やローンのことは、口にすることはありませんでした。


***


 山小屋の前で、カサカーのギルド長が立っています。わたしの通う、赤沢学園あかさわがくえん第二高校だいにこうこう、撃ち合い部顧問新美先生です『共トレ』内の名前は、ニーミです。タミヤ自動車、撃ち合いの植田監督は“ウェーダ”と頭上の虚空に表示されています。

 プレイヤーが動いても、文字が一緒に動く仕様です。

 わたしに、母が片腕を上げながら、笑顔で手を振ってます。母の周りは対戦ギルドのプレイヤーさんです。笑顔には、やや自然さを欠いています。わたしも歩きながら、微笑み返します。

「どうも」

 対戦相手のギルドは、負けた責任を、互いに押しつけののしり合っている様子はありません。現実知り合い同士で固めたのか。ギルド長や副ギルド長が、ギルドメンバーを、まとめるのが優れているギルドでしょう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
cont_access.php?citi_cont_id=843323166&s
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ