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ギルドNPCに「中二の子」が追加されました。

「中二の子、こっちへきて」

「わたくしのことですか? 美しい響きのお名前を……」

「話長い。中二の子、こっちへきて」

「はい、お姉様」


 近くなのに、はあはあ、と肩で息をしながら、寄ってきます。わたしの前で片膝を突いています。上目遣いでわたしの手を見ています。恐る恐る、手を差し出しました。


「ありがたき幸せ、お姉様」


 ピンク色の舌が、ペロッとわたしの指を舐めました。背中が凍り、わたしは咄嗟に後ろに跳ね飛びます。

 どこが淑女しゅくじょだ! いえ、人の性的嗜好せいてきしこうを、どうこう言ってるんじゃないんです。

 人差し指を出したら、舐めるという習慣はありません。それを怒っているのです。頭に血が上り過ぎて、立ちくらみを起こしそうです。


「思い込みで行動せず、ちゃんと確認してね。執事のセバスチャンや、メイドのモニカさんから、しっかりお作法を習ってね、離れなさい!」


 中二の子は、地面を蹴り上げてどこかへジャンプしました。見上げれば、高い木の頂点に立ってます。スカートが風でひらついてます。スリップのレースみたいなのまで、見えてます。中二の子は、耳まで赤らめてました。物欲しそうな、つぶらな瞳と合っちゃいました。

 視線はわたしの胸を貫きそうな強さです。顔を彼女から、セバスチャンに巡らせます。


「お姉様、わたくしを愛するも、捨てるも全てを委ねますわ。全ては、名付け親のお姉様に命じられるまま……」


 風に乗って中二の子の声がします。わたしの鼓膜をざらり揺らします。

 また、変なギルドNPCと出会いました。

 もし、セバスチャンやモニカさんを始末しろと、わたしが、中二の子に命令したら、即座にバトルロイヤルが始まりそうです。

 カサカーのギルドNPC同士のバトルロワイヤルなら、少し、見てみたいかな。面倒そうなので、中二の子が話す内容は、聞こえない振りでスルーです。


かしこまりました。中二の子の教育はお任せください。それでは、再現ドラマの特典映像となります」

 モニターでは、わたし役のモニカさんが、脱衣所にいます。ブラウスの襟元から、リボンタイを取っています。どうやら、洗面台の鏡の位置にカメラがあるようです。現実なら、ホラーです。

 後ろ髪を結んでいたヘアゴムを、口に加えながら、両手を頭の後ろにしています。胸がメッチャ強調されています。

 はらり、と背中に髪が流れています。手がブラウスのボタンを上から、外し始めました。インナーは、つけてません。

 胸の谷間の下に、ブラジャーがチラッと見えました。

 その瞬間、天窓でもあったのでしょう。白い光が数本レーザーのように斜線となって、胸の先端を隠しています。


 わたしの頬の皮膚には、猛烈な熱を感じます。声も出ません。


 モニターでは、遠くで横からの撮影になります。わ、わたし役、パ、パンツに手をかけながら、両足を交互に、膝を擦らすように、う、動かしています。

 謎の白い光線が胸なとお尻を隠していますが、ぜ、全裸になったようです。

 カメラの視点は、スーパー銭湯のような広い浴室に切り替わりました。 

 ネエネエ先輩役のNPCメイド、風呂用の低い椅子に座ってました。全面から撮影です。胸に湯気の固まりがあり、見えないです。

 タオルが横に被さり、おへそから下を隠しています。太ももと立てた肘がすべすべです。

 洗面器で体にお湯をかけています。

 髪は全く濡れていません。湿気の影響さえ受けてません。現実との違いでしょう。

 その隣に、隣の洗い場に、全裸のわたしが座りました。前からのツーショットになります。湯気が見られたくない場所を、隠してくれてます。

 スポンジを使って洗っています。片腕を上げています。でも、全身が泡立ってないんです。胸や太ももの間にやけに、泡が集中して大切な部分を隠しています。


 空気を読める光線、湯気、泡に感謝……、できねーよ。あれだけピンク色の展開はあれだけ拒否したのに、21歳以上サーバーAIは許さない!

 二人は湯船に入ります。タオル持ち込み禁止なのでしょう。メッチャクッチャ湯気が多い湯船です。加湿器でもあるかのようです。

 わたし役のモニカさん、さっきヘアゴム外したのに、髪はセットされているようです。頭にタオルも巻いていませんが、髪が湯船に浮くことはありません。


***

 

「ねえねえ、恥ずかしいから止めて!」

 わたしの横では、ネエネエ先輩が頬を真っ赤にしながら、叫んでます。わたしは、地面埋め込み式モニターを、水を打ったように、だんまりです。真顔なセバスチャンは、言葉を受け取るのに、数秒かかったみたいな表情です。エロジジイだったのか!


「いかがなされいましたか?」

「わ、私役のお色気はヤダって伝えてあるでしょう」

「畏れ多いことながら、お色気ではありません。ケレンをつけて、シャワールームも再現しました。全年齢対象の範囲で御座ございます」


 そもそも、まだギルド戦後、わたしたちはシャワーを浴びてないです。また、うっとうしそうなやり取りになりました。とりあえずは、ネエネエ先輩に丸投げです。

 ネエネエ先輩は、椅子から空へ飛ぶんじゃないか心配になりそうな、勢いで立ち上がります。セバスチャンに猛烈に抗議し始めました。ギルドNPCにムキになって見っともない気もします。


「どうして、シャワーシーンが必要なの?」

GM神しん天上界てんじょうかいのお言葉をお伝えします。国際競技連盟のルールに則り、試合後のシャワーは必要とのことです」


 うーん、正式な撃ち合いでは、試合後のシャワーはルールで必須です。ここは、再現ドラマで、シャワーシーンに時間をかける必要性を議論したいです。


「ねえねえ」


 肩越しに、ネエネエ先輩がわたしに助け舟を求めているようです。部活動で後輩の知恵を借りるのは、先輩としてのプライドを捨てた瞬間でしょう。

 ここは、しおらしくするのが、部活後輩として、賢明な判断です。先輩を立てる。自分の意見をほのめかしながら、先輩が決断をする雰囲気を作るのです。

 わたしは、首をすくませながら、立ち上がります。ネエネエ先輩の横で、立ちます。表情や仕草が、うかがえるからです。ネエネエ先輩が賛成そうなら意見を述べて、反対そうなら、意見を引っ込めるのです。


「セバスチャン、わたしも先輩の言うことに賛成です」

 踵を返すわたしの肩をツンツン、先輩が突いています。振り返りながら。


「ねえねえ、それだけ?」

「先輩」


 困るんです。先輩、わたしは体の前で指をもじもじさせていました。困惑してますよ、アピールです。先輩に軽く一礼します。


「再現ドラマで見てしまったのは仕方がないので、このあとの展開は、服を着て、脱衣所を出たあとでとかにして欲しいです」

「ねえねえ、セバスチャンそうしようよ」

「お言葉を返すようですが、GM神しんに寄れば、AIが再現ドラマのことあとを、即座に作った場合、プレイヤーさまの動作が遅くなる事象じしょうが、発生することもあるそうです」

 再現ドラマのせいで、21歳以上サーバーに負担がかかる可能性も考えないと。撃ち合い中に、カクカクした動きになったら、ほかのプレイヤーさんに、ストレスが溜まります。

 全然知らないプレイヤーに知られ、わたしたちのせいにされて、攻略掲示板に悪口書かれたりとか、嫌です。でも、今はギルド戦のマップにいるので、部外者は入れません。バレないです。


「セバスチャン、ねえねえ、サーバーが重くなるのは、運営さん側の都合でしょう」

わたくしめの個人的な見解ですが、拝見していて、おっしゃるとおり、お色気ではないのかと、困惑しておりました」

「ねえねえ、それならどうして、再現ドラマ停止しなかったの?」

GM神しんが作成したので、信頼していました」


 さっき、セバスチャンがモニターを注視していたのは、悩んでたんです。わたしにとっては、21歳以上サーバーのAIについては、信頼性が低いんです。

 ネエネエ先輩とセバスチャンについては、優しい保健室の先生と、厳しい担任の先生が、話し合っているかのようです。無論、ネエネエ先輩が担任の先生です。

 わたしとしては、早く結論出して欲しいんです。どうせ先輩に振り回されるには、後輩です。


 面倒ですが、意識しながら、難しい表情を作ります。話を振られないよう、視線はセバスチャン、ネエネエ先輩、どちらとも、合わせません。


「ねえねえ、セバスチャン、話が違うんじゃない?」

「…………」


 この話合いに、わたしが居る必要性は低い気がしますが、ネエネエ先輩の許可がない限りは、後輩としては移動不可能です。精神的に疲れました。話が途切れた隙間時間を狙って、わたしは、挙手します。


「先輩、発言してもいいですか?」

「もちろん、自由に発言して」

 自由に発言、部活動では、信じてはならない先輩の言葉です。

 本音を出するか、ネエネエ先輩を援護射撃をするか、を心の天秤てんびんにかけます。部活顧問の新美先生や、撃ち合いで有名なコーチの母がわたしのバックにいる立場も考慮します。

 重りは自由に発言へ傾きました。


「先輩は、はったり、ごまかしを肯定しました。それを覆すのは、ギルドの信用問題になります」

「え?」


 わたしは、手で口元を押さえるネエネエ先輩の仕草を見逃しません。演技ですが、両手を握り、自分のブーツを見ながら、いかにも、迷った末での発言を装います。一歩づつかみ締めるように地面を踏みながら、先輩の前に立ちました。頭はやや下を向け申し訳なさを醸し出しながらも、先輩の顔色は見える角度を維持します。


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